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第1部 奈美編
♬ 17 運命論者
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唐突に思いついたわけではないが、たとえば、飛鳥ちゃんにもう一度会って、今度は面と向かってちゃんと話しをして、自分の飛鳥ちゃんへの気持ちを明確にした方がいいのでないか。などと訳の分からない理由づけをして、飛鳥ちゃんと会う算段を立てようとしている自分が、京はおかしかった。
たしかに、奈美と今現在付き合っているというのに、わざわざちょっと気になる別な女の子に会って、自分の気持ちを確認するなんて、ただ飛鳥ちゃんに会うための口実に過ぎないだろう。
しかし、もうひとりの京は、奈美と今現在付き合っているからこそ、自分の気持ちをはっきりさせておかなければならないということなのかもしれない。自分になぜだかわからないが気になる存在がいることを、隠しているのは恋人である奈美に対して失礼ではないか、と思うのだ。
ただ、わざわざ2人の間に波風を立てる必要などないし、気になる人の存在を知って奈美が喜ぶわけもなく、なぜまたそんなことを考えているのかといえば、京は自家撞着による自家中毒をすでに起こしているのかもしれなかった。
もしかして、もしかしたら、もう自分は飛鳥ちゃんに恋をしていて、となるとそれはもう完璧に恋人への背信行為となるわけであり、奈美の信頼を裏切り信用を失うようなまねをしている自分が許せない。
いや、だからこそ自分は飛鳥ちゃんに会わなければならないのだと思う。白黒はっきりさせなければ前に進めない。とにかく飛鳥ちゃんに会いたい。会って話がしたい。ただ、それだけでいい。
そんな二律背反する想いに板挟みになっている京なのだった。しかし、一度会ってしまったならばもう取り返しがつかなくなるのではないか。また会いたくなるに決まってるのだし、俺はいったいどうしたらいいんだ、という京の妄想は、飛鳥ちゃんの気持ちは、まったく考慮せずそっちのけで暴走する。
その妄想は、むろん京と飛鳥ちゃんが恋に落ちてしまうという前提でどんどん勝手に展開していってしまう。奈美もいい面の皮だが、京はいままで経験したことのない何かわけのわからない胸騒ぎを覚えているのは確かなことだった。
なにも京が、奈美という恋人の存在がありながらも、生来の女にだらしないところを発揮して、次から次へと新しい女を作っては捨て作っては捨てするスケコマシのような千人斬りを豪語する節操がない好色家なわけでは全然ない。
飛鳥ちゃんとはじめて会った、あの合コンからかなり時間を経てまったく予想だもしなかった再会を果たした際に、京はいままでにない痺れるような衝撃を受けたのだ。
忘れていたその顔を見た時に、まるで雷にうたれたような電流が身体に走った。確かに街角で出会い頭に有名なアイドルやら推しメンとすれ違ったりしたら、誰しも思わず目を剥いて驚いてしまうだろう。
飛鳥ちゃんもアイドルなみのビジュアルということもあるけれど、突然目の前に現れたならば驚かない方がおかしい。しかし、問題は、さらにその驚きがもたらした京の心の状態の変化だった。
忘れていたはずの飛鳥ちゃんの顔を見て、京の心はまるでグサリと音を立ててあたかもロンギヌスの槍を突き立てられたような衝撃を受けたのだ。
ロンギヌスの槍は、ゴルゴダの丘で磔刑に処されたキリストの生死を確認するために左脇腹に突き刺されたということらしいが、その出会い頭の際に瞬時にそんなことを思い出したのではないけれど、再会を果たした後で茫然と立ち尽くしながら、飛鳥ちゃんを目で追っていた時に、それは去来したのだった。
京は、そんなにも驚愕した自分に凄まじいショックを受けたのだ。つまり、それほど驚いた自分に愕然としたというわけなのだ。
驚いたことに驚いて、そして、それがまるでロンギヌスの槍をグサリと突き刺されたかのように感じた京は、あたかもそれで飛鳥ちゃんへの愛を確認されたかのようではないかと思った。
やはり出会うべくして出会ったふたりであったのかと予期せぬ突然の再会の後、京は長い嘆息をもらして考えこんでしまったのだった。
京にとって尋常じゃない衝撃の再会は、そんな感じだったのだ。奈美との出会いも出会うべくして出会ったと京は考えていたのだから、いい加減なものだけれど恋に落ちるような時には誰もが運命を固く信じている。
それで、結局運命論者の京は、ほんとうに縁があるのならば飛鳥ちゃんとの再会がまたあるだろうと当然考えて、その考えに落ち着いた。縁があるなら必ず巡り会う日がまたやってくるはずなのだ。
それでは奈美とは縁がないのかといえば、そんなわけもなく、つまり縁にもいろいろあるというわけだ。人の出会いとはそんなもので、一生涯付き合う友人もあれば、クラスが一緒の時は友人だった人もいる。期間が決まっている縁もあれば、期限のない縁もある。
そして、それはその時になってみなければ誰にもわからない。世界は未来がわからないようにできている。
たしかに、奈美と今現在付き合っているというのに、わざわざちょっと気になる別な女の子に会って、自分の気持ちを確認するなんて、ただ飛鳥ちゃんに会うための口実に過ぎないだろう。
しかし、もうひとりの京は、奈美と今現在付き合っているからこそ、自分の気持ちをはっきりさせておかなければならないということなのかもしれない。自分になぜだかわからないが気になる存在がいることを、隠しているのは恋人である奈美に対して失礼ではないか、と思うのだ。
ただ、わざわざ2人の間に波風を立てる必要などないし、気になる人の存在を知って奈美が喜ぶわけもなく、なぜまたそんなことを考えているのかといえば、京は自家撞着による自家中毒をすでに起こしているのかもしれなかった。
もしかして、もしかしたら、もう自分は飛鳥ちゃんに恋をしていて、となるとそれはもう完璧に恋人への背信行為となるわけであり、奈美の信頼を裏切り信用を失うようなまねをしている自分が許せない。
いや、だからこそ自分は飛鳥ちゃんに会わなければならないのだと思う。白黒はっきりさせなければ前に進めない。とにかく飛鳥ちゃんに会いたい。会って話がしたい。ただ、それだけでいい。
そんな二律背反する想いに板挟みになっている京なのだった。しかし、一度会ってしまったならばもう取り返しがつかなくなるのではないか。また会いたくなるに決まってるのだし、俺はいったいどうしたらいいんだ、という京の妄想は、飛鳥ちゃんの気持ちは、まったく考慮せずそっちのけで暴走する。
その妄想は、むろん京と飛鳥ちゃんが恋に落ちてしまうという前提でどんどん勝手に展開していってしまう。奈美もいい面の皮だが、京はいままで経験したことのない何かわけのわからない胸騒ぎを覚えているのは確かなことだった。
なにも京が、奈美という恋人の存在がありながらも、生来の女にだらしないところを発揮して、次から次へと新しい女を作っては捨て作っては捨てするスケコマシのような千人斬りを豪語する節操がない好色家なわけでは全然ない。
飛鳥ちゃんとはじめて会った、あの合コンからかなり時間を経てまったく予想だもしなかった再会を果たした際に、京はいままでにない痺れるような衝撃を受けたのだ。
忘れていたその顔を見た時に、まるで雷にうたれたような電流が身体に走った。確かに街角で出会い頭に有名なアイドルやら推しメンとすれ違ったりしたら、誰しも思わず目を剥いて驚いてしまうだろう。
飛鳥ちゃんもアイドルなみのビジュアルということもあるけれど、突然目の前に現れたならば驚かない方がおかしい。しかし、問題は、さらにその驚きがもたらした京の心の状態の変化だった。
忘れていたはずの飛鳥ちゃんの顔を見て、京の心はまるでグサリと音を立ててあたかもロンギヌスの槍を突き立てられたような衝撃を受けたのだ。
ロンギヌスの槍は、ゴルゴダの丘で磔刑に処されたキリストの生死を確認するために左脇腹に突き刺されたということらしいが、その出会い頭の際に瞬時にそんなことを思い出したのではないけれど、再会を果たした後で茫然と立ち尽くしながら、飛鳥ちゃんを目で追っていた時に、それは去来したのだった。
京は、そんなにも驚愕した自分に凄まじいショックを受けたのだ。つまり、それほど驚いた自分に愕然としたというわけなのだ。
驚いたことに驚いて、そして、それがまるでロンギヌスの槍をグサリと突き刺されたかのように感じた京は、あたかもそれで飛鳥ちゃんへの愛を確認されたかのようではないかと思った。
やはり出会うべくして出会ったふたりであったのかと予期せぬ突然の再会の後、京は長い嘆息をもらして考えこんでしまったのだった。
京にとって尋常じゃない衝撃の再会は、そんな感じだったのだ。奈美との出会いも出会うべくして出会ったと京は考えていたのだから、いい加減なものだけれど恋に落ちるような時には誰もが運命を固く信じている。
それで、結局運命論者の京は、ほんとうに縁があるのならば飛鳥ちゃんとの再会がまたあるだろうと当然考えて、その考えに落ち着いた。縁があるなら必ず巡り会う日がまたやってくるはずなのだ。
それでは奈美とは縁がないのかといえば、そんなわけもなく、つまり縁にもいろいろあるというわけだ。人の出会いとはそんなもので、一生涯付き合う友人もあれば、クラスが一緒の時は友人だった人もいる。期間が決まっている縁もあれば、期限のない縁もある。
そして、それはその時になってみなければ誰にもわからない。世界は未来がわからないようにできている。
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