花散る男女

トリヤマケイ

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第2部 名古屋編

🎵2 ジュネというニンフ

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   それから一年後、レイは水樹を追うようにして上京しバイト先のドルヲタの仲間と地下アイドルの現場で沸きまくる日々を送りはじめる。






   その時には、まさか自分がやがて、ある地下アイドルと秘密の交際をはじめようとは夢にも思わなかった。






   レイにはそんなつもりはまったくなかった、といえば嘘になるが、つまり、アイドルヲタクをやっている限りにおいて、ワンチャンあるのを期待してないヤツなんていないであろうくらいの常識の範囲内での期待は、人並みにあったことは否めない。






   それは、ひょんなことから始まってしまったのだ。きっかけはツイッターだった。






   そのチームは、新進気鋭の若いギタリストが運営しているらしく、かなりメタル寄りのアレンジがレイは気に入っていた。






   対バンで見た際に、カッコいい楽曲にやられてしまい、速攻メンバー全員のツイッターをフォローした。






   むろん、顔面偏差値もかなり高かったのは、いうまでもない。







   中でもいちばんのお気にのメンバーは、ジュネという髪をアッシュにした子で、そのショートヘアが信じられないくらい可愛かった。







   ヲタクの習性で、いいね!   を貰いたくて、ジュネの名を散りばめながらツイートしたり、温度差があるのもまったく意に介さず、まるで恋人のようにリプライを繰り返し、毎日が楽しくて仕方なかった。






   上京して勤め始めたパン屋での仕事にもだいぶ慣れ、毎日が充実していた。







   そんなある日のこと。たまたまだったが、憧れの推しメン、ジュネの裏垢をレイは見つけてしまったのだった。







   だが彼は騒ぎ立てるような事はせずに、推しメンではない別人格として、その裏垢の中の人と接しはじめた。








   もちろん、裏垢なのだからバレないように、気をつけてツイートしているのは当然のことだが、なぜかレイはそのアカウントを見た時にピンときてしまったのだった。







  理由はわからない。






  理屈ではなく、なんとなくわかってしまうということが、たしかに世の中にはある。






   そういう経験のない人は、自分はまちがいなくかなり頭がいいと思っていても、実際にはかなり鈍いと自覚した方がいい。 






   中の人が、十中八九推しメンであると見当をつけたとしても、むろん、〇〇さんですよね?    なんていう質問はアホすぎる。







   裏垢をやっているということは、別人格になって気楽にやりたいというわけなのだから、それに合わせればいいわけだ。







   お互いにアイドル好きだし、話が合わないはずもなく、何回かやり取りしているうちに、DMで話すようになり、実際に会って話すまでになるには、それほど時間はかからないかもしれない、などとレイは甘い考えを抱いたが、そんな風にトントン拍子に話が進んでいくわけもない。       






   DMでやりとりを開始した時点で会うなどということにはなりそうにないことは歴然としていた。







   というか、むしろジュネとしては絶対に顔を知られることはなく会うことはないので、まったく気にせずにDMでのやりとりを許してくれたのだろう。







   アイドルとしてのジュネは、むろんDMを運営に管理されていたが、そもそも別人格としてやっているジュネが性別を男性にするのは、ジュネに限ったことではなくアイドルたちの常套手段だろう。






   その彼のハンドルネームは、ソランといったが、そこでレイは急遽アカウントを作成して、IDは適当にシャルドネにした。










   因みにいきなり騎乗位が好き!   とかエロを全面に押し出しているかに見える垢も、中の人はアイドル本人というケースも多いのではないかとレイは考えていた。








   ジュネの在籍しているチーム『アカシア』のヲタク同士ということだったので、当たり前の如くチームの話で盛り上がった。 








   ジュネは完全在宅主義のメンヘラというか、極度に緊張する対人恐怖があるという設定だったから、決して会わないという暗黙の了解からか、ジュネ本人の話なのか友達の話なのか、真偽の程はよくわからないのだけれど、いろいろ話してくれた。








   たとえば、実家では柴犬を飼っていて、名前はレオンであるとか、小学校の時にイジメにあったとか、お姉さんがいるとか。








   あるいは、仕事から帰ってきて部屋が散らかっていると悲しくなるから、今断捨離を敢行中であるとか、仕事は、コールセンターでオペレーターをしているとか。









   そのコールセンターは、派遣で働いてるが、クライアントが超の付く巨大な組織で、まるでピラミッドの頂点である殿様と最下層である下人ほどのヒエラルキーの格差があり、派遣などいつでも気に食わなければ斬り捨てられて当然の世界だったらしい。










   無論のこと、その巨大な組織のエリートさんが無礼者、そこになおれ、手討ちにしてくれるわ!    とは言わないが、派遣側が見事に忖度して契約期間の延長をそこで取りやめにするという、そういう麗しい現場であるということだった。









   ソランというハンドルネームの由来は、1960年代にやっていたらしいSFアニメの主人公の名前だった。










  お父さんから教えてもらったといっていた。検索してみたらYouTubeにあり、その主題歌がすごく気に入ったらしかった。














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