花散る男女

トリヤマケイ

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第2部 名古屋編

🎵18 羊飼いの与太話

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  でね、別に波羅門を礼賛するわけでも批判するわけでもない。ただ、それだけ真理を知りたい!   少しでも近づきたい!   という凄まじいパワーで真理を求めた求道者がいたということだね。

   とても現代人にマネできることではないしマネしたくはないけど、その真理を求める姿には、頭を下げるざるを得ない。

   どMとも言える波羅門の修行僧みたいな激烈なマネは、一般の人にはとても無理だし、そこで次に現われたのが、いわゆるお経だね。経文を読経することによって波羅門の修行と同じ効果が得られますよ、という実にありがたい救いのアイテムだったわけだよ。

   それでまあ、ここで何がいいたいのかというと、お経を唱えなさいとかじゃなくね、人生において苦しみを味わうことのない人などひとりもいないわけなんだけど、それらの肉体的或いは精神的苦しみのすべては、人類を痛めつけ疲弊させる為にあるのではないということ。むろん病気もその埒外ではない。

   生きる上で感謝の念は、ほんとうに重要だが、すべての苦しみは浄化なのだから、実は苦しみにこそ感謝しなければならない。

   父母の優しさ、温かさに感謝する、誕生日のプレゼントをもらって感謝する。そういった事に誰しもがごく自然に感謝の念を抱くのは当たり前だが、病気や怪我などの身体的なことも、或いは失恋、仲違い、失望など精神的な損失の苦しみなどなど、すべての苦しみは良くなるための浄化なのだから、これもまた実は感謝するほかないのだ。

   そして、ヒトは苦しい時ほど感謝の念を忘れてはならない。苦しい時に、感謝なんかしてられるわけもないのだけれど、まあ、実相はそういうことなんですよ?」


   初めて会った時羊飼いは、そんな風にレイに話をしてくれた。

   とにかくレイは、真偽は定かではないが誰も聞いたことのないような摩訶不思議な彼の話を聞きたかったし、なによりもヒントをくれるのではないかと期待して出会える日を心待ちにしていた。

   無論のこと、彼がスマホとかを持つわけもないし、アポイントメントは取れないのだから、神出鬼没の彼の登場を待つしか術はなかった。

   そして、レイはやっとあの色褪せ擦り切れたアルペン帽の羊飼いに会えたのだが、まるで彼はレイがどんな事を聞きたがっているのか知っているかのようだった。

   レイが東京駅の南口行きのバスに乗りボーっと流れる車窓を眺めていると、あるバス停から見覚えのあるアルペン帽を被った彼が乗り込んできたのだった。嘘みたいな出来事だった。

   そしてレイが、今回のぼた餅で頬っぺたを叩かれるような美味しいけれど訳ありな話をすると、彼は滔々と話しはじめたのだ。

   それは、それこそ口からでまかせのただの与太話なのかもしれないのだが、レイには何らかのヒントを羊飼いが伝えてくれているのではないかと思わずにはいられなかった。

   挨拶もそこそこにいきなり話しだした羊飼いの話は、どうやらレプティリアンのことらしかった。

「ヤツが異星人であることは、うすうす気がついていた。ヒューマンを装ってはいるが不自然なのだ。たぶんアンドロメダのどこかの星の生まれではないかと踏んでいる。

   ほんとうの姿はどんなものなのか知りたくもないが、あのレプティリアンとどっこいどっこいではないか。レプティリアンと英文字で検索すると、トップにはあの元大統領オバマ氏が表示されるという。やってみたことはないので真偽のほどはわからない。

   だが彼は若い頃に、火星にテレポーテーションしたことがあるというのは、つまらないアメリカン・ジョークでもなんでもなく、彼がレプティリアンならば頷くほかはない。

   そしてアメリカ建国以来初めての未曾有の事件を引き起こすまでに至ったドナルド・トランプもアメリカを分断させ、人類を破滅へと向かわせるための言動、その傍若無人な手腕は、見事なものであり、彼もまたレプティリアンと考えるのが妥当だろう。

   このレプティリアンが厄介なのは変身できることだが、擬態する動物はいろいろいるらしいが、爬虫類人間であるレプティリアンの変身は、擬態の進化したものだろう。

   このレプティリアンが人類の祖先であるというアホな仮説を唱えるアホな輩は、即ちレプティリアンに相違ない。

   自分たちよりも美しい人類を醜い爬虫類が創造するわけもない。いや、爬虫類から見たならばその逆かもしれないのだが、勿論、美意識には個人差があるだろうから、人類などよりも爬虫類の方がよっぽど美しいと感じる人もいて当然かもしれない。そう感じる人は、レプティリアンだと思われる。

   言語などなくほら穴に裸同然で暮らす太古の人類からしてみれば空からやってきた爬虫類人間はまさに神に見えただろう。確かに彼等もなんらかの神だった。

   しかし、過ちを冒し遠島の刑に処せられた。即ちどこかの惑星に飛ばされたわけだ。そしてその星で生き延びるべく環境に合わせて自らを爬虫類化させたのではないか。案外あったてるかも知れないよ」   

   そんな風に羊飼いは言っていた。

   そう。たとえぼくがどれほどいけ好かない下衆野郎でもこの羊飼いに接した時には、その優しさに思わず涙したほどだった、とまでレイは言っていた。

「理想は、アドリブのような作曲、そして作曲したかのようなアドリブだね」羊飼いは、口癖みたいにそう言っていたという。

   彼は音楽が趣味だったが、好きな音楽に関して話しだすととめどなく言葉か迸り出てくるわけでもなく、むしろ、寡黙な方らしい。

「それじゃ評論家になった方がまし。音楽や絵画を言葉で説明するほど馬鹿げたこともないだろう」そう言っていた。

 今回の件に対して具体的なアンサーは何ひとつ含まれていなかったし、まったく脈絡のない話だったけれど、レイはそれなりに愉しんだ。

 だが、最後に羊飼いは重要な人物を紹介してくれたのだった。

「実は友人に赤坂卍ジローという人物がいるんだけど、会ってみる? きっと面白い話を聞かせてくれるよ?」
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