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続き
しおりを挟むと思いながら、うとうとする自分に鞭を打つ気持ちで、ようやく、じいちゃん家にたどり着いたのだ。
ガラガラ、昔ながらの引戸を開け、じいちゃんを呼ぶ。久しぶりじいちゃんと大声で叫ぶ
おじいちゃん
おお、正かい。おあがり。
不用心すぎる鍵もない、誰でも入れる玄関を僕は、セキュリティー無しで入るか。
正
お邪魔します。
そういえば、女性の靴あったけど誰かいるの?
おじいちゃん
あー、舞じゃよ。親戚にいたじゃろ。
誰だっけ心の中で思う。
スタスタと玄関から、歩く。玄関からリビングまでは10メートルあるかないかだ。
一階建てのオンボロ屋敷。
時々ギシギシと歩く度に、言う。
昭和の匂いが漂ってる。昔ながらのいい家である。昔はよく蟹出してもらったなぁ。
今は年金暮らしでお金もない。庭の畑で野菜を作り、ギリギリの生活をしているらしい。
まあ、そんなこんなでわずか10メートルの間に凄い説明をするのだが。
勿論。リビングと言うよりこたつ置いてある4畳半のその部屋に、玄関先の靴のヌシ、舞が座っていた。
おじいちゃん
おい、舞、正じゃよ。
舞
こんにちは。お久しぶりね。
確か、小学生以来じゃない
正
あーお久しぶりですね。
全く覚えていない。
やばいな、誰だ。
舞
ほら、よく蝉とってまあ、覚えてないよね私のことなんか。
苦笑い、やばいなマジで分からん。
おじいちゃんは、そのまま台所で何かやっている。
俺は気まずい女と二人こたつの中。
久しぶりに来たのになんて不幸なんだろう。
沈黙の中、彼女が口を開く
面白いもの見せようか。
彼女はおもむろに鞄をこたつの上に出す。
すると、鞄の中にフィギュアサイズの顔がチラりと見える。
ん、チラリではなく、フィギュアサイズの人間の顔が上下に動く。
そういう芸なのか。
と思いながら見ていると、違う絶対生きている人間を見ているみたいな感覚になる。
生命を感じる。動きである。
鞄は、上下に動く振動により、倒れる。
匍匐前進をするように、鞄の中の彼女が出てくる。
鞄の中の彼女は、こちらに一礼をしてすぐ鞄の中に戻り隠れてしまう。
俺は、何を見たのかわからない。
現実か夢なのか、実は高速道路で、事故をして病院にいるのではないか。
と思うほど現実とは遠い。
異世界の住民と出くわした未知の領域。
そう、宇宙人が何故か僕の目の前に現れたような感覚
舞
どう、面白かった?
正
面白いというよりも、驚いたかな。
これ何?
舞
私もよくわからないんだけど、妖精かな。
羽はないけどね。
笑いながら答える
僕は、混乱しながら呆然と鞄と睨めっこ。
鞄の中の彼女は、隠れたまま出てこない。
舞
彼女ね、人見知りなの。
ごめんね。
舞は手を合わせ謝罪をする。
正
や、いいんだけど。
妖精だよね、どう言う経緯で現れたの?
舞
知りたい、どんな風にあったのか。
私、昔遊んでた公園で首吊り自殺しようとしてとしてたんだ。
ちょっと鬱でさ。
病みガールか、やばいな心の中で思う。
ロープをかけていたら、木の上から、この子落ちて来て私びっくりしてさ。
自殺するのやめちゃった。
あんまりにも驚いたから大声あげたら、この失神したみたいだったから、家に連れて帰り。
面倒見ているって感じかな。
重い、重すぎる。このねぇーちゃん重いよー助けてじいちゃんと心から叫ぶ。
そうなんだ。来なきゃ良かった、後悔しながら、首を落とす
舞
出ておいで。鞄を揺らす
すると、鞄の妖精が出てくる。
怯えながら、俺を凝視する。
小さい声がかすれながら聞こえてくる。
妖精
食べない?
正
え、何?俺、捕食者みたいな扱いされている。
舞
食べないよ。
鞄で身を隠しながら、妖精はこちらを凝視する。
俺何もしませんよと思いながら、両手を上げアピールをする。
すると何故か、妖精さんも両手を上げアピール
なんなんだ。この状況わ。
舞が笑う。
和む、凄い、これが平和なというラブアンドピースの両手を空高く上げる
って、二人で降参し合う不気味な空間じゃないか!
鞄の妖精さんも笑う。
俺も笑う。
さっきまで警戒が嘘のように皆笑顔で笑う。
さっきまでの、暗い話が無かったかのように、笑う。
笑いって素晴らしい。心底思う場面であった
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