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1.モテモテ

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はぁ……真っ暗だ。
何も見えないし、何も聞こえない。

はっ!?……まさ…か、ここが噂の地獄っ!?

いやいやいや、俺はそんな悪いことした事ないし、そんな悪いことができる勇気もないヘタレ野郎だ…って言ってて悲しくなるけど。

おいおい、神様よぉ…
モテモテハーレムは?
可愛い女の子は?
まったく…何だってこんなことに……



「…………と…………ま……と!」


あれっ…なんか、明くなってきた……


「…………んっ……はぁ~れぇむ?」


「誠?何言ってるんだ?」


んんっ!?


だ・れ・だ・? この男はぁっ!

そこには、短い黒髪に目鼻立ちのしっかりした爽やかな雰囲気の男が立っていた。


驚きのあまり、いつもの寝起きの悪さはどこへいったのかと思うほど意識がハッキリする。

勉強机や、クローゼットの配置、
部屋の匂いや、フローリングの色も
何もかもが違う。

いや?違うけど…どこかで見た事がある部屋だ。

…………てか今、この男。

まことって言ったか???


「まこ…と???え?誠って
平塚……誠…とか?あはははっ、なんちゃって!」

チラリと彼の表情を伺う。
なんだか、気の抜けるような表情だ。

「ははっ、何言ってるんだ?
大丈夫か平塚誠っ?まさかっ、今日が入学式だって事忘れた訳じゃないよな?」


「入学式ぃ?…………そういえばっ!?」

まだ慣れていないこの部屋のどこに時計があるのかと、辺りを見回しながら思う。


姉貴の本もこんな始まりだった……ような。


「ん?」

ま  さ  か …


「いぃやぁぁぁぁああああっ……!!!」


やだやだやだっ、信じたくないって神様!

ハーレムは?可愛い女の子は?

男だらけまっしぐらじゃんかよぉぉお!!!


「…………誠?…本当に大丈夫?」

くっ…綺麗な爽やか笑顔を向けるなっ


「…………あぁ、いや平気。」

「……そっか、よかった。
あっ!ほんとに時間やばいよ?誠はやくっ!」

俺は、もう一度さっき見つけた時計を見る。
時間が進んでない!?
って……壊れてるのか。

「え!?あぁ、うん!着替えるからちょっと待ってて!」

とりあえず急がなくては。
こいつに置いていかれたら、今日入学式が
あるという学校に一人で行かなくてはならない。
この世界のことすらまともに知らない俺には
迷わずに学校へ行くなんて事は不可能だ。

パジャマなんて着るんだな。
いつもジャージで寝てた俺とは大違いだ。

ひとつひとつボタンを外していくのは
やはりとても面倒だ。

「了解っ…ってまっ、誠?
ここで…脱ぐのはダメだよ。」


何故顔をあからめる?

「? 別にいいだろ?減るもんでもないし。」

「…………っ、減るんだよ。なんか。」


何故熱っぽい目をする!?


男同士だぞっ、俺は男っ!
ったく………なんなんだよこの世界は……。


「おーけー、じゃあ、出て待ってて。
はぁ……。」


とため息を着いてネクタイを締めようと
鏡を見た。

「…………え?」

これもまた予想外。

「女?……じゃない…けど…え?」


髪はサラサラ。色素が薄く、まつ毛は薄茶色の瞳に影を落とすぐらい長い。
肌は透き通るように白く、唇は薄い。


なんと……


とんでもない美少年だった。



え?


「ちょっと待て…………神様。
モテモテってそういうことじゃないっ!!」








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