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28.笑えない話

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「……ふぁぁ…………なんか…だる。」


いつもと同じように清々しい朝が迎えられるとは思っていなかったが、ここまで体がだるいと心まで病んでしまいそうだ。


なおが昨日のように『冗談』をいって励ましてくれなければ。


っていっても、失恋(?)した人間相手に
落ち込んでる原因である恋愛のジョークを
投げつけるだなんて、なんて大胆なやつだ。




当たり前だけれど、ゆうは……いや、
武尊は結局昨日部屋には戻ってこなかった。

いや、戻って来れなかった……が正しいか。


…………俺が、オメガだから。



いや、それを言い訳にしてしまったら、
あいつが……


「おっはよぉ~元気してる?」


反射で体がビクッとしてしまう。


罪悪感を感じるくらいならこんなこと考えるなっての、俺。


「…………まぁまぁかなっ。」



「ふぅ~ん…………でさ」



じりじりとゆっくり近づいてくるなおから、
俺も逃げるように体を反らせる。



「……………………な、なんだよ。」


ま、また変なことするんじゃねぇだろうなっ……。


「ん~……」


なんだなんだ、そんなためるってことは
なんか凄い展開があるのかっ?!


「…………もう大丈夫そうだねっ。」



「えっ……」




「……ん?なんか拍子抜けした顔だねぇっ」




「……え、いや、そんなことは……」


変なことされると思っただなんて言えないっ。


「…………変なことされると思った?」



?!?!?!?!


「なんでわかっ?!……いやっ、そんなこと考えてるわけないだろ!!!」



「………………はぁ……大丈夫っ
昨日のは冗談って事にしといてあげるから」


いや、にこにこ顔怖すぎ。



「…………冗談だって事は分かってるけど。
もう、あんな事すんなよっ?俺デリケートなのっ、な?」



「ひどぉ~い……せっかく慰めてあげたのにっ!」



「…………それは感謝してるっ。」



「そっか。まこがデリケートだなんて冗談言えるくらいには僕のお陰で回復したんだね!」


「は?デリケートだろっ、俺っ」


「………………。」



「ノーコメントやめろっ。」



あぁ、でもなんか。

いつも通り『俺』が出来てる気がする。

ありがとうな、なお。



「……そっか、ここまで鈍感……なのか。」


なおがボソボソと下を向きながら何かを発した。


「……はぁ?なんだよいきなり小さい声になって、何言ってるか全然聞こえなかったぞ?」


「ん~ん?独り言っ」







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








俺は結局、俺がオメガだと言うことを
隠すことにした。

そして、そう決めたことに対してこの世界は何も反抗してこないということは、シナリオ的には正解な選択なのだろう。

告白を受け入れてもらって、付き合って、
ハッピーエンドだと思ってたのに、
まだこんな試練が待ち受けていただなんて。


…………というかそもそも、
こんな重大なことがバレるシーンがあるだなんて…………もしかしてっ

この物語も、ラストスパートに突入しているのか?


結局、武尊とはこのギクシャクした関係のまま……。


シナリオが終わったら俺たちは一体どうなるのだろうか。

まだ描かれていない、真っ白な世界に2人取り残されて…………だなんて、

それこそ感動的なラブストーリーになりそうな展開だ。






ほんと、






まじで笑えない。

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