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29.あいつの口から。
しおりを挟む「ひ~らつかっ♪具合はもういいのか?」
上尾……
それは具合が悪かった相手を心配するテンションじゃないぞ。
「……え、あぁ、まぁ??
でも、まだ少しだるいけどな。」
具合ってか……発情期自体はなおからもらった抑制剤で物理的に抑えられてるけど……
この薬に慣れてない俺には正直副作用がきつい。
「そうかそうかぁ…………」
おぉ、あの上尾がいつになく心配そうな顔で落ち着いて頷いている。
こりゃ明日は雪だな。
「じゃあ、夜は花火をするぞ!!!」
え、上尾くん、
俺の話聞いてました???
「わぁ~い花火~!楽しみだなぁ~」
それは本心で楽しみなのかっ、楽しみにしている自分を可愛く見せるのに楽しんでいるのか?…………なお。
「……………………。」
うわ……めちゃ不機嫌って顔だな武尊。
俺だって本当はあんな顔してやりたいけど、
そんなことしたらお前はきっと…………
鬼の形相で文字通り棍棒振り回してきそうだからな。
やめておこう。
というか、花火ってこのストーリー的には
イベントなのでは?!
こんなときにっっ!!!
いったい、昨日のどこまでがこの物語のシナリオなんだ。
俺がΩだってバレたところ?
それとも、武尊が俺を……………………
襲おうとしたことも?
くっそ……考えてもどうにもならないなんてとっくに分かってんだよ!!!
とりあえず、花火がシナリオのイベントなら
いやでも武尊と向き合わなくちゃいけなくなる。
それまでに……もっと、普通の俺に戻らなきゃ。
この物語は俺が主人公なんだから。
…………ちょっと待てよ、
俺の性格は主人公のままだから演じなくてもいいとわれていたけど、今の俺じゃ主人公は演じられないんじゃ……
そもそも、いったい
俺の普通って………………なんだっけ…………
「……こ………………まこ??……」
「……ぅん………………な…おぉ?」
視界がぼやぼやしている。
………………俺、また寝てたのか。
この眠気も抑制剤の副作用なのか?
「…………もぉ~、ほら、早くこれに着替えるっ!ほらほら、着付けはやったげるから!」
まったく、目が覚めたばっかりだって言うのに、うるさいなぁ。
「……ん……?……何を……ってちょっ?!」
なおが俺の服に手をかけ、脱がそうとする。
「はいっ、はやく脱いでっ……と」
「まっ、待てって?!わかったっ!分かったから!自分で脱ぐからっ……」
はぁ…………シナリオ的にはきっと花火は
浴衣でやらせたかったんだろう。
こんな細かいところまで、なんて面倒な世界だ。
てか、こんな細かいところ気にしてるくせに、ゆうと武尊の二重人格はいいのかよっ。
「……よしっ、と!!う~んっ♡」
まこがジロジロと俺の体を上から下までゆっくりと見る。
「…………な、なんだよ。その気持ち悪い体の見方はっ……。」
「気持ち悪いだなんて!失敬だなぁ~?…
でも、すごく似合ってる。」
「………………え……ありがとう。」
……褒めるところだけ真剣に褒めてくるから…なんか妙な気分だな。
…………あいつにも、褒めて欲しいな。
あんなことがあったあとで、俺と口を聞いてくれる確証なんてないけど。
セリフでも、なんでもいいから……
あいつの口から聞きたいな。
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