3 / 4
庭での出会い 1
しおりを挟む
ヴェルネルは黒い髪と茶色い目を持つ。栄養が足りていない体は背はそこそこ高いがやせ細っていて、肌は荒れ着ている服も継ぎはぎだらけでボロボロであった。そのせいでまるで枯れた枝のようだと笑われる。
母親は庶民であり、下賤な血が混じった私生児だからと冷遇されていた。家族だと認められず使用人と同じように呼ぶように言われている。
血のつながりのことを知っているのはタズリー家の者と執事、そして侍女長だけだ。他の使用人達からは刺繍の腕を買われた庶民だと思われていて、自分たちよりも扱いが悪いこともあって下に見ているのだ。
部屋は使用人用に建てられた場所にあり日当たりが悪く狭い。
与えられる食事は二回。廃棄寸前の硬いパン、食べ残った具のないスープのみだ。腐ってカビが生えていないだけましではあるが。
庶民は男でも刺繍をするものがいる。金になるからだ。だが貴族は違うようで女がするものだとバカにされた。
それでも、刺繍は母親との楽しい思い出の一つ。ヴェルネルにとって大切なものであるし、自分がこの家で生きる価値はそれしかないのだ。
どんなに辛い目にあっても耐え抜いているのは母との約束があったから。つらくとも生きてほしい、その願いは必ず守りたい。
ヴェルネルに許されるのは部屋で刺繍をする、たまに夜の数分だけ散歩をすること、それだけだ。
今日は庭に出られる。嬉しくてスケッチブックと鉛筆をもっていく。
今の時期だとバラが咲いているだろう。
花を見ながら図案を考えるのだが、夢中になると周りが見えなくなる。だからすぐそばに誰かがいることに気が付けなかった。
「ほう、うまいものだな」
声を掛けられて心臓が飛び出るくらいに驚いた。持っていたスケッチブックと鉛筆が地面に落ちた。
誰かが来た時は隠れるか部屋に戻ること。義母からきつく言いつけられていたことだ。
荷物を拾おうとするが先に相手にとられてしまった。
「君は?」
どうしたらいいのか混乱して何も言えずに俯いた。
「どうした話せないのか」
「あ……」
怖い。見つかったら仕置きをされるだろう。背中や足を鞭で打たれて、痛くて刺繍をするのがしんどくなる。
逃げなければいけないのに足が動かず、血の気を失い体が震えだす。
「寒いのか」
震えているなと言われ体に何かを掛けられ、ヴェルネルは顔を上げた。
目の前にいるのは整った容姿を持つ身なりの良い男だった。
そして肩にかかっているのは彼が着ていただろう上着である。
「え、あっ」
慌てて脱ごうとするが彼の手がそれを止めた。
「そんなに薄着でいては風邪をひく。着ているといい」
そういうと彼は立ち去った。
目の前で起きたことは夢ではないだろうか。この家に連れてこられてからといもの優しくされたことがなく、ポーっと彼のの後姿を眺めていると、すぐに現実に引き戻されることとなる。
侍女が上等な上着を肩に掛けたヴェルネルを見つけたからだ。
「どうしてお前がそれを着ているの!」
「え?」
「よこしなさい」
上着を奪われてしまい、呆然としている間に侍女は屋敷へと行ってしまった。きっと先ほどのことを報告しに行くのだろう。これは仕置き決定だ。
母親は庶民であり、下賤な血が混じった私生児だからと冷遇されていた。家族だと認められず使用人と同じように呼ぶように言われている。
血のつながりのことを知っているのはタズリー家の者と執事、そして侍女長だけだ。他の使用人達からは刺繍の腕を買われた庶民だと思われていて、自分たちよりも扱いが悪いこともあって下に見ているのだ。
部屋は使用人用に建てられた場所にあり日当たりが悪く狭い。
与えられる食事は二回。廃棄寸前の硬いパン、食べ残った具のないスープのみだ。腐ってカビが生えていないだけましではあるが。
庶民は男でも刺繍をするものがいる。金になるからだ。だが貴族は違うようで女がするものだとバカにされた。
それでも、刺繍は母親との楽しい思い出の一つ。ヴェルネルにとって大切なものであるし、自分がこの家で生きる価値はそれしかないのだ。
どんなに辛い目にあっても耐え抜いているのは母との約束があったから。つらくとも生きてほしい、その願いは必ず守りたい。
ヴェルネルに許されるのは部屋で刺繍をする、たまに夜の数分だけ散歩をすること、それだけだ。
今日は庭に出られる。嬉しくてスケッチブックと鉛筆をもっていく。
今の時期だとバラが咲いているだろう。
花を見ながら図案を考えるのだが、夢中になると周りが見えなくなる。だからすぐそばに誰かがいることに気が付けなかった。
「ほう、うまいものだな」
声を掛けられて心臓が飛び出るくらいに驚いた。持っていたスケッチブックと鉛筆が地面に落ちた。
誰かが来た時は隠れるか部屋に戻ること。義母からきつく言いつけられていたことだ。
荷物を拾おうとするが先に相手にとられてしまった。
「君は?」
どうしたらいいのか混乱して何も言えずに俯いた。
「どうした話せないのか」
「あ……」
怖い。見つかったら仕置きをされるだろう。背中や足を鞭で打たれて、痛くて刺繍をするのがしんどくなる。
逃げなければいけないのに足が動かず、血の気を失い体が震えだす。
「寒いのか」
震えているなと言われ体に何かを掛けられ、ヴェルネルは顔を上げた。
目の前にいるのは整った容姿を持つ身なりの良い男だった。
そして肩にかかっているのは彼が着ていただろう上着である。
「え、あっ」
慌てて脱ごうとするが彼の手がそれを止めた。
「そんなに薄着でいては風邪をひく。着ているといい」
そういうと彼は立ち去った。
目の前で起きたことは夢ではないだろうか。この家に連れてこられてからといもの優しくされたことがなく、ポーっと彼のの後姿を眺めていると、すぐに現実に引き戻されることとなる。
侍女が上等な上着を肩に掛けたヴェルネルを見つけたからだ。
「どうしてお前がそれを着ているの!」
「え?」
「よこしなさい」
上着を奪われてしまい、呆然としている間に侍女は屋敷へと行ってしまった。きっと先ほどのことを報告しに行くのだろう。これは仕置き決定だ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました
山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。
王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。
レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。
3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。
将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ!
「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」
ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている?
婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
王太子妃に興味はないのに
藤田菜
ファンタジー
眉目秀麗で芸術的才能もある第一王子に比べ、内気で冴えない第二王子に嫁いだアイリス。周囲にはその立場を憐れまれ、第一王子妃には冷たく当たられる。しかし誰に何と言われようとも、アイリスには関係ない。アイリスのすべきことはただ一つ、第二王子を支えることだけ。
その結果誰もが羨む王太子妃という立場になろうとも、彼女は何も変わらない。王太子妃に興味はないのだ。アイリスが興味があるものは、ただ一つだけ。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる