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庭での出会い 2
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痛みに耐えながら自分の部屋へと戻る。
あの後、侍女が告げ口をし義母と姉に罵られて仕置きをされた。ただ、いつもよりも酷くはされなかったものの痛いものは痛い。
彼はアレッタの婚約者となる人で、ヴェルネルが会話をしていい相手ではないと言われた。ただ恥でしかない私生児なのだからと。
いつもならその通りなのだから特に何も思わないのだが、親切にしてもらったことで、あんな優しい人と婚約ができるなんてと思ってしまったのだ。
自分とは違い彼女たちは沢山のものを生まれた時から持っている。自分だって半分は同じ血が流れているのに何も持っていないのだ。
妬んだところでどうにもならないのに。ここにきてから優しくされたことがなかったからだろう、そんな相手の婚約者に選ばれるなんてと思ってしまう。
この国では同性婚も許されており、跡継ぎを必要としない男子と政略婚なんてこともある。そう、自分にだっ縁があれば……なんて絶対に無理なことを考えてしまう。
「はぁ、普通に何をしているのかと思うよな」
夜に、しかも使用人よりも酷い格好をした男が立っていたのだから。不審者だと思われてもおかしくない。だが彼は寒そうだと上着を貸してくれたのだ。本当に優しい人だ。
それにしても彼は何しにここへ来ていたのだろう。ヴェルネルが散歩を許可される日は来訪者がいない時だけだ。
許可を下すのは義母だから彼女が知らぬ所で客がきていたのだろう。
だが知らぬところに彼がきたから出逢うことができた。ほんの数口話しただけだけど人の温かさに触れることができたことにヴェルネルは幸せを感じた。
急な来訪の理由を次の日知ることになった。
彼の訪問は急であったそうで、しかもヴェルネルを部屋に戻そうと侍女に命じたそうだが一歩遅かったみたいだ。
汚いものに触れさせてしまったとアレッタが文句をいう。
「あぁっ、あの人の上着が穢れてしまったことにも腹が立つわっ! 本来なら食事も抜くところだけれどもお前には当分手を出すなと父から言われているし」
この家に来てから父親は自分をかばったことなどない。仕置きだと鞭で打ち付けられているのを見てもなんとも思わないのだから。
刺繍を命じられているときだって止めないのに、今回はそれほど大切なのだろう。
「お前には王家に提出する刺繍をしてもらう」
婚約者となる人だと聞いていたがまだ決定ではなく、これをうまくこなせたら正式に婚約者となるそうで、痛めすぎて刺繍ができなくなると困るのはアレッタである。
「わかりました」
渡されたのは上等な生地で作られたシャツに、好きな糸の色を選び刺繍をする。デザインは自由だそうだ。
彼のために繍《ぬ》うとなると今までで一番心が弾んだ。
あの後、侍女が告げ口をし義母と姉に罵られて仕置きをされた。ただ、いつもよりも酷くはされなかったものの痛いものは痛い。
彼はアレッタの婚約者となる人で、ヴェルネルが会話をしていい相手ではないと言われた。ただ恥でしかない私生児なのだからと。
いつもならその通りなのだから特に何も思わないのだが、親切にしてもらったことで、あんな優しい人と婚約ができるなんてと思ってしまったのだ。
自分とは違い彼女たちは沢山のものを生まれた時から持っている。自分だって半分は同じ血が流れているのに何も持っていないのだ。
妬んだところでどうにもならないのに。ここにきてから優しくされたことがなかったからだろう、そんな相手の婚約者に選ばれるなんてと思ってしまう。
この国では同性婚も許されており、跡継ぎを必要としない男子と政略婚なんてこともある。そう、自分にだっ縁があれば……なんて絶対に無理なことを考えてしまう。
「はぁ、普通に何をしているのかと思うよな」
夜に、しかも使用人よりも酷い格好をした男が立っていたのだから。不審者だと思われてもおかしくない。だが彼は寒そうだと上着を貸してくれたのだ。本当に優しい人だ。
それにしても彼は何しにここへ来ていたのだろう。ヴェルネルが散歩を許可される日は来訪者がいない時だけだ。
許可を下すのは義母だから彼女が知らぬ所で客がきていたのだろう。
だが知らぬところに彼がきたから出逢うことができた。ほんの数口話しただけだけど人の温かさに触れることができたことにヴェルネルは幸せを感じた。
急な来訪の理由を次の日知ることになった。
彼の訪問は急であったそうで、しかもヴェルネルを部屋に戻そうと侍女に命じたそうだが一歩遅かったみたいだ。
汚いものに触れさせてしまったとアレッタが文句をいう。
「あぁっ、あの人の上着が穢れてしまったことにも腹が立つわっ! 本来なら食事も抜くところだけれどもお前には当分手を出すなと父から言われているし」
この家に来てから父親は自分をかばったことなどない。仕置きだと鞭で打ち付けられているのを見てもなんとも思わないのだから。
刺繍を命じられているときだって止めないのに、今回はそれほど大切なのだろう。
「お前には王家に提出する刺繍をしてもらう」
婚約者となる人だと聞いていたがまだ決定ではなく、これをうまくこなせたら正式に婚約者となるそうで、痛めすぎて刺繍ができなくなると困るのはアレッタである。
「わかりました」
渡されたのは上等な生地で作られたシャツに、好きな糸の色を選び刺繍をする。デザインは自由だそうだ。
彼のために繍《ぬ》うとなると今までで一番心が弾んだ。
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