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新たな婚約者候補 2
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完成したものを侍女に渡し、それから数日後。
アレッタが怒りをあらわに部屋にやってきておまえのせいだと扇で頬を打たれた。
いったいどういうことか解らぬまま痛みに耐える。
そして机に置かれている箱を手にしたのだ。それは母親が誕生日にくれたキレイなお菓子の箱。その中に入っている刺繍道具が入っていた。
今まで何が気に入らないことがあっても刺繍道具にだけは手を出さないでいた。ダメになってしまったら困るからだ。
それなのに箱をつぶされて針を踏んで折り曲げる。残ったパールの糸は侍女に奪われた。
殴られるだけならよかった。痛いのを我慢すればいい。しかし刺繍は取り上げないでほしい。母との思い出でもあるのだから。
「お願いします。刺繍を取り上げないでください」
「うるさいっ! お前のせいで婚約者から候補に落とされただけでなくレナーテまで候補になるなんて」
まさかそんなことになっていたとは。しかもレナーテが婚約者候補に選ばれるとなるとは。あの刺繍が関係しているのあろうか。
「申し訳ありません」
「謝ってすむ問題じゃないわっ!」
怒りが収まらないアレッタはもう一度扇で頬を打つ。
その痛みに耐えながら嵐が止むのを待っていると、
「お姉様、弱い者いじめなんて情けないですわよ」
ドアの近く、その声にアレッタとヴェルネルが顔を向けるとレナーテがたっている。
「レナーテ」
アレッタが怒りのこもった声で彼女の名を呼ぶ。姉妹はとても仲が悪いく、使用人同士も牽制しあっている。
噂話を聞きたいわけではないが廊下で話しているのが聞こえてくるのだ。
「私、お友達が図案をお譲り頂きましたの。それをヴェルネルに繍わせたところ大変すばらしい出来栄えで。私が使うより気高く美しい女性の方がお似合いになるのではと思いまして。そこに浮かんだのが王妃殿下だったのですわ」
目を細めてにやりと笑う。その表情にアレッタの怒りが爆発した。
「お前」
ミシミシと扇が音を立てる。今にも折れてしまうのではないだろうか。
「あら、こわ~い。王子殿下が見たら即候補から外されてしまいますわよ」
「絶対に許さないわよ」
「うっ」
そういうとヴェルネルの足の甲をヒールで踏みつけて部屋を出て行った。
仲が悪くとも手を出すことはない。ヴェルネルが八つ当たりをされることとなる。
理不尽だがこの家ではそれが当たり前なのだ。
「今回はよくやったわ。そのダメになった刺繍道具は私が買い与えましょう」
痛む足をおさえて耐えていたがレナーテの言葉に痛みが少しだけ和らいだ。
「ありがとうございます!」
「せいぜい私のためにこれからも働きなさい」
「はい」
レナーテが立ち去るとヴェルネルは折れた針とつぶれた箱を拾い机に置いた。
「ダメになっちゃった」
大切な思い出があるから捨てずに机の引き出しにしまう。
そこには前に折れてしまった針がしまってある。
「母さん、刺繍ができなくなると絶望的な気持ちになったけど、姉さんが新しいのを買ってくれるって。また一緒に刺繍ができるね」
心の中ではいつも一緒に母と刺繍をしている。絶望でしかないこの家の中で一番幸せで楽しい時間だ。
アレッタが怒りをあらわに部屋にやってきておまえのせいだと扇で頬を打たれた。
いったいどういうことか解らぬまま痛みに耐える。
そして机に置かれている箱を手にしたのだ。それは母親が誕生日にくれたキレイなお菓子の箱。その中に入っている刺繍道具が入っていた。
今まで何が気に入らないことがあっても刺繍道具にだけは手を出さないでいた。ダメになってしまったら困るからだ。
それなのに箱をつぶされて針を踏んで折り曲げる。残ったパールの糸は侍女に奪われた。
殴られるだけならよかった。痛いのを我慢すればいい。しかし刺繍は取り上げないでほしい。母との思い出でもあるのだから。
「お願いします。刺繍を取り上げないでください」
「うるさいっ! お前のせいで婚約者から候補に落とされただけでなくレナーテまで候補になるなんて」
まさかそんなことになっていたとは。しかもレナーテが婚約者候補に選ばれるとなるとは。あの刺繍が関係しているのあろうか。
「申し訳ありません」
「謝ってすむ問題じゃないわっ!」
怒りが収まらないアレッタはもう一度扇で頬を打つ。
その痛みに耐えながら嵐が止むのを待っていると、
「お姉様、弱い者いじめなんて情けないですわよ」
ドアの近く、その声にアレッタとヴェルネルが顔を向けるとレナーテがたっている。
「レナーテ」
アレッタが怒りのこもった声で彼女の名を呼ぶ。姉妹はとても仲が悪いく、使用人同士も牽制しあっている。
噂話を聞きたいわけではないが廊下で話しているのが聞こえてくるのだ。
「私、お友達が図案をお譲り頂きましたの。それをヴェルネルに繍わせたところ大変すばらしい出来栄えで。私が使うより気高く美しい女性の方がお似合いになるのではと思いまして。そこに浮かんだのが王妃殿下だったのですわ」
目を細めてにやりと笑う。その表情にアレッタの怒りが爆発した。
「お前」
ミシミシと扇が音を立てる。今にも折れてしまうのではないだろうか。
「あら、こわ~い。王子殿下が見たら即候補から外されてしまいますわよ」
「絶対に許さないわよ」
「うっ」
そういうとヴェルネルの足の甲をヒールで踏みつけて部屋を出て行った。
仲が悪くとも手を出すことはない。ヴェルネルが八つ当たりをされることとなる。
理不尽だがこの家ではそれが当たり前なのだ。
「今回はよくやったわ。そのダメになった刺繍道具は私が買い与えましょう」
痛む足をおさえて耐えていたがレナーテの言葉に痛みが少しだけ和らいだ。
「ありがとうございます!」
「せいぜい私のためにこれからも働きなさい」
「はい」
レナーテが立ち去るとヴェルネルは折れた針とつぶれた箱を拾い机に置いた。
「ダメになっちゃった」
大切な思い出があるから捨てずに机の引き出しにしまう。
そこには前に折れてしまった針がしまってある。
「母さん、刺繍ができなくなると絶望的な気持ちになったけど、姉さんが新しいのを買ってくれるって。また一緒に刺繍ができるね」
心の中ではいつも一緒に母と刺繍をしている。絶望でしかないこの家の中で一番幸せで楽しい時間だ。
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