甘える君は可愛い

希紫瑠音

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年下ワンコとご主人様

8・久世

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 今日は色々あった。

 自分の行動が波多を泣かせることになり、すごく落ち込んだ。

 このまま許してもらえなかったらどうしようと心配していたが、波多は許してくれた。
本当、いい先輩だ。

 家に帰り、早速彼女に波多の話をする。

 いつもニコニコとしながら聞いてくれるので、嬉しくなって夢中で話す。

「ふふ、楽しそうでよかった」

 そう彼女は言った後。久世の両手を握りしめ、真っ直ぐと見つめてくる。

 大切な話があるのだろうか。

 初めては告白をしてくれた時。次は一緒に住もうと言った時、今と同じような事をした。

 きっと良い事だろうと彼女が口を開くのを待つ。だが彼女が口にしたのは久世にとって悪い報告だった。

「もう私が居なくても大丈夫ね」

 別れましょう、そう言われて。久世は驚いて目を見開く。

「え……?」

 何を言っているのと縋りつけば、優しく頭を撫でられた。

「だって、大輝が私に求めているのは恋人ではなくて母親でしょう?」

 そう言われて久世は何も言えなくなる。確かに彼女を母親の様に彼女を見ていた。

「私に対するのは家族や友達に持つ愛情。でも、波多さんに対しては持つ感情は恋よ」
「確かに好きだけど、でも」
「ちゃんと考えなさい、自分の気持ちを。あの人を特別だと思っている筈だわ」

 だからお別れ、と、握っていた手が離れた。

「鍵を返してくれる?」

 そう手を伸ばす彼女の、その掌にカギを落とした。





 最低限必要な荷物だけを持ち歩き出す。

 波多のことは好きだ。それは突放されてからもずっとだ。

 なんだかんだと言いながらも優しい。今はご主人様と犬のような関係だけれど、傍に居られるのならそれでよいと思っていた。

 だが違っていた。波多に特別な感情を持っていたから欲しかったんだ。

 彼女に言われなければ気が付かなかった。どれだけ自分は鈍いのだろう。

 波多に会って、この気持ちを打ち明けたい。

 そう思ったら会いたくて電話を入れるが、なかなかでてくれない。それでも何度もしつこくかけていたら、「うるさい」と怒鳴られてしまった。

 電話に出てくれないのは波多の方なのに。

 そう口に出かかってやめる。文句を言ったら即、通話を切られてしまいそうだから。

「波多さん、酷いです」
『要件を言わなければ切る』

 不機嫌そうにそう言われ。ひとまず告白は会って直接伝えたいので、もう一つの要件を口にする。

「あの、家に泊めてくれませんか?」
『はぁ? 嫌に決まってんだろ』

 速攻断られた。だが、ここで引き下がることはできない。

「お願いします。俺、帰る家がないんです」

 実家に居場所がないことを波多は知っている。それなので、彼女に振られてしまったことを素直に話す。

『……そうか。解った。なら駅で待ち合わせをしよう』

 迎えに行くからと、波多の住むマンションの最寄駅を告げる。

「ありがとうございます。では、後程」

 目の前に居ない波多へと頭を下げて通話を切り、急いで駅に向かい電車を待った。
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