44 / 59
上司と部下の「恋」模様
蓮と利成
しおりを挟む
着信音が鳴る。
テーブルの上に置かれているのは三木本のスマートフォンからで、恋人だからとて勝手に触るのはいけない。
なので無視しておくことにしたが、今度はメールが送信されてきたようだ。
余程、彼に用事があるのだろう。
緊急の用事かもしれないなと、少し気になりかけていた所に、三木本が髪を拭きながらリビングにくる。ほんのりと赤くそまった頬が色っぽくて良い。
手招きをすれば、少し照れながら隣へ座る。
「蓮、スマホ、鳴っていたよ」
首に掛けてあるタオルをとり髪を拭いてやる。
「え?」
スマートフォンを手にして画面を操作していたが、ため息をついてソファーへと画面を伏せておく。
「急用じゃないの?」
「いいえ。後で返事しておきますので」
この話題には触れられたくないようで、気まずそうな表情を浮かべている。
だから余計に気になってしまった。
「僕には言えない相手かな?」
肩が揺れる。どうやら図星だったようで、ソファーから立ち上がる。
「そ、そういう訳ではなくて」
「蓮」
「怒りません?」
「ん、もしかして怒られるような相手なの?」
「いえ、そういう訳では……」
怒ったふりをして腕を組めば、何か言いにくそうに言葉を濁す。
ジト目で彼を見れば、ため息をひとつ吐き捨てて話だす。
「セフレの一人で、もう会えないと連絡したら、会って話がしたいと言われていたのですが、ずっと無視をしてました」
セフレの一人や二人、今更驚かない。その原因の一つは、彼の想いを受け入れてあげなかった八潮なのだから。
だが、面白くはない。
「あぁ、そういうこと。そうだねぇ、僕のだってちゃんとおしえてあげないと駄目だよねぇ。よし、彼に会おうか」
「雄一郎さんも一緒に会うんですか!?」
「うん。例の、彼じゃないよね?」
同じ会社の男のことを言うと違うと首を振る。
「そう」
嫉妬していたのが顔に出てしまったか。三木本の顔色が真っ青だ。
「すみません。俺」
「僕のせいだよね。解っているから、ね」
「でも、怒って」
「あはは、蓮が僕のだって思うようになってから心が狭くなっちゃったみたい」
いわゆる、独占欲というものだ。
「……すみません」
でも、嬉しいと、胸へ顔を埋めてくる。
「会うのは一人で行ってきます。信じて待っていてくれますか?」
「あぁ、わかった。君のことを信じて待っているよ」
ちゃんと断って帰ってきてね。そう抱きしめながら囁くと、三木本は頷いて顔を上げる。
その熱っぽい目は八潮を誘う。
それならば、もう一つ。独占欲の証をその首に。
目立つ位置につけたキスマークに、相手が気がつけばいい。
◇…◆…◇
会いたいと何度も送られてきたメール。
返事をすることなく無視してきたのだが、それをたまたま恋人に見られてしまった。
今まで逃げていたのだが、きちんと話をしないと駄目だとメールの相手に連絡を入れた。
待ち合わせはいつも使っていたバーにした。相手は既に来ており、三木本を見ると笑顔で手を上げる。
マスターには既に話をしてあり、奥の部屋を貸してもらうことになっていた。
「いらっしゃい。奥、良いわよ」
「お借りします。利成、来い」
「あ、はい」
そこは従業員が使う部屋で、二人はソファーへと腰を下ろした。
「ずっと無視して悪かった」
「蓮さん」
「お前が俺に好意を持ってくれていることに気が付いていた。だから……」
利成が待ってと掌を向けて出す。
「蓮さん、告白させてください」
「利成」
その想いには応えられないと、眉を寄せて相手を見れば、解っていますと口する。
「蓮さんにきちんとふって欲しんです」
気持ちの整理をつけるためにお願いしますと頭を下げられる。
本気で自分を想ってくれていたのだと改めて思わされる。
そう、自分も以前、八潮に告白をしてふられた。それで気持ちを新たに思い続けることが出来た。
利成にその機会すら与えてあげることをせず、お前では無理だと心の中で思っていた。随分と酷いことをしていた。
「わかった」
「では。蓮さん、好きです」
「ありがとう。でも、ごめん」
「あぁ、やっと告白できた! 聞いてくれてありがとうございます」
笑顔を向けてお礼を言える利成は凄い。改めて、彼は良い男だと思うし、もっと色々と話をすればよかった。
今更だが、自分は勿体ないことをしていた。
「利成……」
「蓮さん、これからは友達として仲良くしてくれませんか?」
それは願ったりだ。こんな自分で良いと言うのならお願いしたい。
「良いのか?」
「はい。ここにこんな痕をつける独占欲の高い彼氏さんの話も聞きたいですし」
目立つ位置につけられた痕へと触れれば、慌てた様子でそこをなでる。
「なんだって!?」
その痕をスマートフォンで撮り、三木本へと見せてくれた。
「なっ」
気が付かなかった。夢中になりすぎて八潮になら何をされてもいい状態になってしまう。
恥ずかしくてそれを見られないようにとシャツのボタンをはめた。
「蓮さん、幸せになってくださいね」
「あぁ」
それから部屋を出て、カウンター席へと座り一緒に酒を飲んだ。
下の名前で呼び合うのも、と、今更だなと笑いながら互いに自己紹介をしあった。
【了】
テーブルの上に置かれているのは三木本のスマートフォンからで、恋人だからとて勝手に触るのはいけない。
なので無視しておくことにしたが、今度はメールが送信されてきたようだ。
余程、彼に用事があるのだろう。
緊急の用事かもしれないなと、少し気になりかけていた所に、三木本が髪を拭きながらリビングにくる。ほんのりと赤くそまった頬が色っぽくて良い。
手招きをすれば、少し照れながら隣へ座る。
「蓮、スマホ、鳴っていたよ」
首に掛けてあるタオルをとり髪を拭いてやる。
「え?」
スマートフォンを手にして画面を操作していたが、ため息をついてソファーへと画面を伏せておく。
「急用じゃないの?」
「いいえ。後で返事しておきますので」
この話題には触れられたくないようで、気まずそうな表情を浮かべている。
だから余計に気になってしまった。
「僕には言えない相手かな?」
肩が揺れる。どうやら図星だったようで、ソファーから立ち上がる。
「そ、そういう訳ではなくて」
「蓮」
「怒りません?」
「ん、もしかして怒られるような相手なの?」
「いえ、そういう訳では……」
怒ったふりをして腕を組めば、何か言いにくそうに言葉を濁す。
ジト目で彼を見れば、ため息をひとつ吐き捨てて話だす。
「セフレの一人で、もう会えないと連絡したら、会って話がしたいと言われていたのですが、ずっと無視をしてました」
セフレの一人や二人、今更驚かない。その原因の一つは、彼の想いを受け入れてあげなかった八潮なのだから。
だが、面白くはない。
「あぁ、そういうこと。そうだねぇ、僕のだってちゃんとおしえてあげないと駄目だよねぇ。よし、彼に会おうか」
「雄一郎さんも一緒に会うんですか!?」
「うん。例の、彼じゃないよね?」
同じ会社の男のことを言うと違うと首を振る。
「そう」
嫉妬していたのが顔に出てしまったか。三木本の顔色が真っ青だ。
「すみません。俺」
「僕のせいだよね。解っているから、ね」
「でも、怒って」
「あはは、蓮が僕のだって思うようになってから心が狭くなっちゃったみたい」
いわゆる、独占欲というものだ。
「……すみません」
でも、嬉しいと、胸へ顔を埋めてくる。
「会うのは一人で行ってきます。信じて待っていてくれますか?」
「あぁ、わかった。君のことを信じて待っているよ」
ちゃんと断って帰ってきてね。そう抱きしめながら囁くと、三木本は頷いて顔を上げる。
その熱っぽい目は八潮を誘う。
それならば、もう一つ。独占欲の証をその首に。
目立つ位置につけたキスマークに、相手が気がつけばいい。
◇…◆…◇
会いたいと何度も送られてきたメール。
返事をすることなく無視してきたのだが、それをたまたま恋人に見られてしまった。
今まで逃げていたのだが、きちんと話をしないと駄目だとメールの相手に連絡を入れた。
待ち合わせはいつも使っていたバーにした。相手は既に来ており、三木本を見ると笑顔で手を上げる。
マスターには既に話をしてあり、奥の部屋を貸してもらうことになっていた。
「いらっしゃい。奥、良いわよ」
「お借りします。利成、来い」
「あ、はい」
そこは従業員が使う部屋で、二人はソファーへと腰を下ろした。
「ずっと無視して悪かった」
「蓮さん」
「お前が俺に好意を持ってくれていることに気が付いていた。だから……」
利成が待ってと掌を向けて出す。
「蓮さん、告白させてください」
「利成」
その想いには応えられないと、眉を寄せて相手を見れば、解っていますと口する。
「蓮さんにきちんとふって欲しんです」
気持ちの整理をつけるためにお願いしますと頭を下げられる。
本気で自分を想ってくれていたのだと改めて思わされる。
そう、自分も以前、八潮に告白をしてふられた。それで気持ちを新たに思い続けることが出来た。
利成にその機会すら与えてあげることをせず、お前では無理だと心の中で思っていた。随分と酷いことをしていた。
「わかった」
「では。蓮さん、好きです」
「ありがとう。でも、ごめん」
「あぁ、やっと告白できた! 聞いてくれてありがとうございます」
笑顔を向けてお礼を言える利成は凄い。改めて、彼は良い男だと思うし、もっと色々と話をすればよかった。
今更だが、自分は勿体ないことをしていた。
「利成……」
「蓮さん、これからは友達として仲良くしてくれませんか?」
それは願ったりだ。こんな自分で良いと言うのならお願いしたい。
「良いのか?」
「はい。ここにこんな痕をつける独占欲の高い彼氏さんの話も聞きたいですし」
目立つ位置につけられた痕へと触れれば、慌てた様子でそこをなでる。
「なんだって!?」
その痕をスマートフォンで撮り、三木本へと見せてくれた。
「なっ」
気が付かなかった。夢中になりすぎて八潮になら何をされてもいい状態になってしまう。
恥ずかしくてそれを見られないようにとシャツのボタンをはめた。
「蓮さん、幸せになってくださいね」
「あぁ」
それから部屋を出て、カウンター席へと座り一緒に酒を飲んだ。
下の名前で呼び合うのも、と、今更だなと笑いながら互いに自己紹介をしあった。
【了】
0
あなたにおすすめの小説
有能課長のあり得ない秘密
みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。
しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる