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CBM-020
しおりを挟む稼ぎとしては破格すぎる物を持ち帰った形の俺たち。さすがにこれらを換金できるような場所はなかった。保管する場所にも困り、こっそりと一番近い街であるグンダーまで向かってから考えることにした。そこから国への報告と一緒に援軍を要請することにしたのだ。
「体の慣らしにはちょうどよかったかな?」
「ええ、私も色々と補充出来ましたし……ルト君も問題なさそうですね」
さすがにこれだけの人数が前線を離れることに良い顔はされなかったが、都会で垢を落としてきたいと言えばなんとかなった。
道中、俺たちは俺たちで使った分の水薬の補充であったり、当初の予定の1つであるこの土地ならではの薬草を使った薬の作成などを休息の度に実施した。俺自身は、逆にじっとしていられないぐらいだった。これはマスターや、一緒にいた人間たちも同じようだ。
(マスターは、一時的に過剰なマナが体に残ってるからだと言っていたが)
体力が有り余ってる状態と言えばいいだろうか? 普段なら休息が必要な見張りもむしろ誰が先に休むかを押し付け合うぐらいだ。それは俺にも、マスターにも言える。普段は疲れるからあまり作らないという、マナを注ぎながらの薬作りも数多くこなした。
「俺は変わったような変わってないような……」
一番変化がわからないのは俺自身だった。見た目はほぼ変化が無い。毛並みは良くなったとマスターは言うが、実際どうなのだろう。それに、コボルトで毛並みが良いと言われてもあまりうれしくないような……いや、嬉しいことは嬉しいのだが、戦う者としてはどうかとは思う訳だ。
1つだけ、確実に変化を感じられるだろう手段はあるにはある。それは胸元に埋まったままの結晶の力を己の物にするようにして動くことだ。マスターは、見た目にはわからないけれど触れば驚くほどの力が隠れている、と言っていた。その力を自分の物として動けば恐らく、俺はもっと戦える。
「ルト君の話がその通りなら、恐らく……ドラゴンに関連した力を発揮すると思いますよ。試すにも今はちょっと遠くに行けませんけどね」
皆が寝静まったころ、マスターにそんなことをつぶやかれた。ドラゴンの、力か。楽しみなような、怖いような。だが、どんなものであれ使えるのであれば使って俺とマスターを守らねばならない。
やや退屈な日々が過ぎ、ようやくグンダーへと到着する。街での応対はあの討伐者のリーダーと兵士側の代表者に任せた。俺というコボルトが話すよりは話が早いと思ったわけだ。最初は半信半疑だったグンダーの責任者も厳重に俺たちが守っている建物の中を覗き込むや表情が変わった。
今回、俺たちが持って帰ってきたマナ結晶は馬車半分あるかどうか。量としてはまあ、すごい多いわけでは無い。が、普段マナ結晶を見る機会があったであろう立場の人間にとってその輝きなどからどんな程度の物か、ある程度察したのだと思う。
「すぐ担当者が来るみたいですね、ありがたいことです」
「道中何もないと良いんだがな……」
手紙でも出すのかと思ったが、そうではない何かによって既に王都とは連絡が取れたらしい。既にこちらに王都から人が向かっているというのだ。話が早すぎるように思うが、どうやら離れた場所と連絡を取り合う何かがあるらしい。
「相性のいい魔法使い同士が使う魔法と、後は文字しか送れないですけど道具という手もあるらしいですよ」
「人間は奥深いな。道具と言えば精々削った木の枝ぐらいのコボルトとは大違いだ」
そんな話をしながら待つことさらにしばらく。ようやく王都からの使者?がやってくる。随分と身軽だなと思う格好ということは、この場で現金払いということではなさそうだ。それを一緒に戦った彼らも感じたのだろう。なんだか面倒なことが起きたという顔だ。うん、俺もそう思う。
「これは……恐ろしいほどの圧縮だ。見事……見事すぎる」
担当することになった人間はいかにも魔法使いと言った感じの老人だった。足腰はしっかりしているようだが、顔にも皺が多い。その皺だらけの顔で、瞳が強い輝きを放っているように見える。興奮しすぎて倒れやしないかと心配になるほどだった。
「一番丁寧な扱いが必要そうなのがこちらです」
専用に用意した木箱に収められたいくつかのマナ結晶は、俺たちが持って帰ってきた中でもとびきりだ。と言っても例の途中で力尽きたか捨てていった袋の中にあった奴……つまり、持ち出した奴は目利きだったわけだ。本人はどうなったのかわからないままだが。
「うっかり使わないように気をつけねばならんな。あー、討伐者諸君、そして兵士の皆よ。見事だ、王もお喜びになるだろう。問題は買い取りだが……これら以外は私の権限ですぐに支払いができる範疇に収まると思うが問題はこちらだな。これだけで残りと同じ分はある。さすがに倍は払えない」
老魔法使いの言葉に、反感はほぼなかった。誰もが、そうじゃないかと思ってはいたのだ。足が付きやすいと言い換えると厄介さがわかるだろうか? 人間たちは皆、苦々しい顔をしている。俺にはよくわからないが、刻まれた知識から考えるに……儲けは欲しいが厄介事はいらないなあというところか。
「マスター、俺たちでよければ」
「私もそう思っていました。皆さん、よろしければその……そちらの分は私たちの取り分として、残りは事実上、無かったことにしませんか?」
豪快かつ、かなり強引な話だ。俺たちは厄介事と一緒に取り分を多めに貰う。その代わり他の面々は儲けは減るかもしれないが、国からの追求だとか面倒ごとが来ないようにするという提案だ。もちろん、そう全部上手く行くかはわからないが、少なくとも表立って色々と聞かれることはなくなるだろう。
一通り話し合った結果、討伐者や兵士は俺たちの申し出に頷くことになる。特に自由に生きていたい討伐者たちにとっては変なしがらみは不要だったようだ。
「よいのか? 間違いなくこのまま私と一緒に王都へと呼び出されることになる」
「変な噂になるより、その方が動きやすいかなと」
確かに、このままマナ結晶だけが王都に輸送され、あらぬ噂が広がるぐらいなら自分たちが採ってきましたとはっきりさせた方が良いのかもしれない。ドラゴンが骨とはいえ復活しそうになった、とかは言うべきかどうかは向こうについてから考えればいいだろう。
そうして、俺たちは人気のない僻地から今度は大都会である王都へと向かうことになったのだった。
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