召喚破棄されたコボルト、お人よしの魔女と出会う

ユーリアル

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CBM-036

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「右に3、左に2だ!」


「拘束します、とどめをっ!」


 駆け抜ける俺の体を包むのは春の温かさを感じる柔らかな風。後で花見でもしようかと思いながらも、仕事の相手である畑を荒らす害獣を次々に仕留めていく。出てきたところをマスターが縛り付けているのだ、雑草を適当に抜くようなものだ。


 すぐさま戦いは終わり、俺たちの受けた仕事も終わる。


「お疲れ様です。これで終わりですね」


「ああ、採取も終わったし……今日も平和だな」


 依頼人にとってはそうではないだろうけれども、俺たちにとってはこうした日々は平和そのものに思えた。


 謎の屋敷、そして呼び出された怪物との戦いから数か月、俺たちは南にいた。例の召喚士は行方不明、恐らくサーミッド以外の国の人間か、未所属となるのだろうがその行方はつかめていない。生きているあいつがどこで何をしているかは不安ではあるが、今すぐどうしようもないものを気にしていてもしょうがないのである。


 結果、俺たちはブレグ王子から直々にいくらかの報酬と、面白い物があったら教えるようにという無期限の依頼を受け、また旅に出ることになったのだ。


 街から町へ、あるいは村を転々と。特に目標のない気楽な旅だ。一応、アイツだけは見つけたらどうにかしておきたいと思っているのは俺もマスターも同じではある。


「ルト君……実は私……」


 今日もそんな自由な旅のある日である。新しい水薬の噂を聞けば行って試し、月夜にしか咲かない花が薬になると聞けば夜通し待ち、あるいは魔法使いと召喚獣として討伐の依頼をこなし……冬の寒さも忘れるほどの時間である。


「どうした、マスター」


 そんな旅だからこそか、帰り道にマスターは俺を呼び止める。実のところ、大体は俺も察しがついている。あの時は勢いで叫んだが、実際にはマスターが召喚士でなければ呼び出すことはできない。そしてマスターは俺を呼べた……ということは彼女は召喚士でもあるのだ。だというのに、何故危険のある直に契約することを選んだのか。それはずっと疑問ではあった。


「召喚魔法を介してじゃなく……直にだったら頑張れるかなって思ったんです。失うと大変な契約なら、頑張れるかなって。でもそれはルト君を縛り付ける物だったと気が付いたんです」


 やはりそうか、と思う。彼女は過去に召喚獣を失っているのだ。その時に、自分がほとんど被害を受けていないのを気にしているのだ。だから、互いが失われれば相応の痛みを受ける直に契約する道を選んだ。


 そのまっすぐというか、真面目というのか微妙な気持ちは嬉しくもあり……。


「だから、なんとかして直の契約を解除する方法を探し「むかしむかし、とあるところにただのコボルトがいました」


「ルト君?」


 言いながら、道端の適当な岩に腰を下ろす。マスターもそれに従い、横に座った。まるで親子ほどの背丈の差。そこが悔しくもあり、俺たちの味だなとも思う。


「平和に暮らしていたコボルトはある日突然、見知らぬ土地に呼び出されました。しかも、お前なんかいらないと言われてしまったのです。コボルトは困りました。自分は誰かを、一族を守る戦士だったのに。お腹もすくし、頭だってもやもやする。このままだと近くに同族もいないからただの獣に逆戻りです」


 語り掛けるのは俺たちの出会い、そして俺の彼女への気持ち。


「コボルトは嫌だなと思いました。考えて過ごせることはなんと素敵なことだろうと思っていたからです。誰かを守りたいという気持ちだってある。困ったコボルトを包むのは暖かな光でした。なんと、お人よしの魔女がコボルトと契約してくれたのです」


 岩から飛び降り、知識にある劇のように彼女の前に片膝をついてそのまま片手を突き出す。


「コボルトは考えました。どうしたらこの喜びを、この感謝を伝えられるだろうかと。答えは1つでした。マスター……いや、エルサ。どうか俺とこのまま旅を、一緒に笑い、一緒に泣いて、一緒に生きてください」


「……はいっ!」


 つながれた手は、確かな暖かさを俺に伝えてくれた。


 俺たちの旅は、これからも続く。
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