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美乃里
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「何? お前らも一緒に行くの?」
空になった丼を置きながら、政宗が訊いた。
「うん。一緒の方が楽しいし」
「はあ? 遊びじゃねぇんだぞ」
嬉しそうにはしゃぐ楓を政宗が一喝する。
「わかってるよ、そんなこと」
「いいじゃん政宗。俺らも楽しめば」
ねぇ、と小首を傾げ、聖が楓に賛同する。
「さっすが聖。そうだよ。何事も楽しまなきゃ」
「だからお前らは……」
「まあまあ。さすがに二人だって実習中は真面目にやるでしょ? 単位落とすわけにいかないんだから」
政宗の小言を制し、美乃里が援護射撃する。
「そうそう。さすがに短大で留年とかヤバいっしょ」
「うん、ヤバいね」
聖と楓が、揃って頭を上下に振った。
ね、と微笑む美乃里を一瞥し、はあっと政宗が大きく息を吐き出した。
「じゃあ、施設実習の件は一件落着ということで」
聖は席を立つと、「午後の講義も頑張りますか」トレーを持って満面の笑みを浮かべた。
「『も』じゃねぇだろ。お前はこれが本日初の講義だろ」
政宗が素早く突っ込む。
「しかも、今日の講義は次で終わりだしね」
楓が追い打ちをかける。
「うん。最初で最後だね」
聖母のような微笑みを蓄え、美乃里が鋭くとどめを刺した。
「ひどいよ、みんなして」
口を尖らせ、恨めしそうに聖が三人を見回した。
「悔しかったら真面目に来い」
「へいへい」
聖と政宗は、連れ立って食器返却口へと歩き出した。
その後ろ姿を見送りながら、「ねえ」楓が美乃里に声を掛けた。
「ん?」
政宗の座っていた椅子を直しながら、美乃里が視線を上げた。
「今日の帰り、ちょっと買い物付き合ってくんない? 今度の保育園実習で使うペープサートの材料買いたいんだけど」
「楓、ペープサートすんの?」
ペープサートとは、紙人形劇のことで、厚紙に描いた絵を動かして演じる人形劇だ。
表と裏、二枚の厚紙に絵を付け、間に割り箸を挟んで貼り付ける。それを物語に沿って随時ひっくり返しながら話を進めていくのだ。
「うん。三匹のこぶた演ろうと思って」
「一人で?」
腕は二本しか無い為、登場人物の多い物語は、一人で演じるのが困難だ。
「大丈夫。テッシュケースに粘土入れて幾つか用意しておけば固定できるし」
「なるほど」
感心した様子で、美乃里が大きく頷いた。
「ついでにさ、ご飯でも一緒にどうかなって思って」
「ああ……」
曖昧な声を漏らしながら、美乃里が視線を中空に泳がす。少しの間があった後、「ごめん」ようやく言葉が意味を成し、美乃里の口からこぼれ落ちた。
「今日はちょっと……」
「え? そうなの? 家の用事?」
「まあ、そんな感じ?」
「そっかぁ。じゃあ仕方ないね」
「ごめんね」
「いいよ。気にしないで」
申し訳なさそうに眉間に皺を寄せる美乃里に、楓は笑顔で手を振った。
空になった丼を置きながら、政宗が訊いた。
「うん。一緒の方が楽しいし」
「はあ? 遊びじゃねぇんだぞ」
嬉しそうにはしゃぐ楓を政宗が一喝する。
「わかってるよ、そんなこと」
「いいじゃん政宗。俺らも楽しめば」
ねぇ、と小首を傾げ、聖が楓に賛同する。
「さっすが聖。そうだよ。何事も楽しまなきゃ」
「だからお前らは……」
「まあまあ。さすがに二人だって実習中は真面目にやるでしょ? 単位落とすわけにいかないんだから」
政宗の小言を制し、美乃里が援護射撃する。
「そうそう。さすがに短大で留年とかヤバいっしょ」
「うん、ヤバいね」
聖と楓が、揃って頭を上下に振った。
ね、と微笑む美乃里を一瞥し、はあっと政宗が大きく息を吐き出した。
「じゃあ、施設実習の件は一件落着ということで」
聖は席を立つと、「午後の講義も頑張りますか」トレーを持って満面の笑みを浮かべた。
「『も』じゃねぇだろ。お前はこれが本日初の講義だろ」
政宗が素早く突っ込む。
「しかも、今日の講義は次で終わりだしね」
楓が追い打ちをかける。
「うん。最初で最後だね」
聖母のような微笑みを蓄え、美乃里が鋭くとどめを刺した。
「ひどいよ、みんなして」
口を尖らせ、恨めしそうに聖が三人を見回した。
「悔しかったら真面目に来い」
「へいへい」
聖と政宗は、連れ立って食器返却口へと歩き出した。
その後ろ姿を見送りながら、「ねえ」楓が美乃里に声を掛けた。
「ん?」
政宗の座っていた椅子を直しながら、美乃里が視線を上げた。
「今日の帰り、ちょっと買い物付き合ってくんない? 今度の保育園実習で使うペープサートの材料買いたいんだけど」
「楓、ペープサートすんの?」
ペープサートとは、紙人形劇のことで、厚紙に描いた絵を動かして演じる人形劇だ。
表と裏、二枚の厚紙に絵を付け、間に割り箸を挟んで貼り付ける。それを物語に沿って随時ひっくり返しながら話を進めていくのだ。
「うん。三匹のこぶた演ろうと思って」
「一人で?」
腕は二本しか無い為、登場人物の多い物語は、一人で演じるのが困難だ。
「大丈夫。テッシュケースに粘土入れて幾つか用意しておけば固定できるし」
「なるほど」
感心した様子で、美乃里が大きく頷いた。
「ついでにさ、ご飯でも一緒にどうかなって思って」
「ああ……」
曖昧な声を漏らしながら、美乃里が視線を中空に泳がす。少しの間があった後、「ごめん」ようやく言葉が意味を成し、美乃里の口からこぼれ落ちた。
「今日はちょっと……」
「え? そうなの? 家の用事?」
「まあ、そんな感じ?」
「そっかぁ。じゃあ仕方ないね」
「ごめんね」
「いいよ。気にしないで」
申し訳なさそうに眉間に皺を寄せる美乃里に、楓は笑顔で手を振った。
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