驚愕

かじ たかし

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 街灯がないと男であっても1人で出歩くのは怖いな。そう思いながら一応繁華街とも呼べなくもない商店街を歩いている。目的は特にないがなんとなく惹かれる店があった。
Fantom
煌々と暗闇に水色のネオンが浮かび上がるら黒塗りの壁に真っ白のドア。躊躇せずに足を踏み入れる。
「いらしゃいませ」抑揚のない声で軽く微笑みかけるように黒服の男が言った。
「お一人様ですか」と黒服。そうですがと進は頷くとすぐ横のソファーに案内される。
「ご指名とかはありますか、本日出勤している者のリストでございます」少し厚めの本を出しながら問うてきた。本を見ながら進はソープを思い浮かべるが、フロアは見えているのでその考えは打ち消し名前に目を遣る。
最初の頁に記載されているのは売れっ子だと、一目で分かる。進は一通り順に本を捲っていく、後半の頁で「凛」とゆう名前に手が止まる。この子を指名しますと告げると、意外だったのか少し黒服があたふたしながら言った。「かしこまりました」ではこちらへ。と小さなボックス席に案内される。

浅く腰掛け他の席を見渡す。水曜日と時刻のせいもあってか混雑している様子もなく空いてる席が目立った。程なくして黒服の男と共に指名の女がやって来た。
「ご指名ありがとうございます。凛です」幼さが仄かに残る顔立ちで化粧の下の肌は綺麗だった。
どうして指名してくださったのですかと問うてくる。
ただ名前が目に留まったと伝え、いけなかったかと逆に問い返した。
少し戸惑う様子を見せそんな事はないですよと手を振って否定して、ありがとうございますと微笑んだ。その笑顔が作っていると分かっていても吸い寄せられるようだった。
手際も程々によくブランデーの水割りをすっと差し出し「お名前教えていただいてもいいでしょうか」さりげなく聞いてくる。
進と下の名前だけボソッと呟く。
そこからはマニュアル本でもあるかのような言葉のキャッチボールが続いた。それもどちらかとゆうと進が積極的に質問していた。
あっとゆう間に時間が過ぎていく。

 店を出たのは24時を少し過ぎた頃だった。
ありがとうございましたとゆう声を背に受け、タクシーも呼ばず商店街の店の灯りも次いでいない道を歩きだす。帰り際に凛が「よければ連絡下さいね」と言った時、待ってましたとばかりに内心でガッツポーズをする。手渡された名刺には個人の携帯が書かれてあった。ポケットにしまっていたそれを取り出し携帯にメモリ登録する。今日はもう遅い。「明日以降にでも連絡するか」1人で呟きながら別の番号をプッシュし発信する。コール音が聞こえると共に仕事の始まりだな。とまたしても1人呟やいた。
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