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魔王戦編(仮
緊急事態(仮
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『申し訳ない!』
『申し訳ございません!』
猫電話の向こうで頭を下げているらしいのは、ドワーフのグロン夫妻だ。
『こいつが調子に乗って、余計なことをしたせいで、』
『依頼されたって言ったでしょ!しかも、亭主は半分引きこもってるし!』
『なん、だと?』
「夫婦喧嘩は、自分の家でやってくれ」
各拠点を猫電話とコンミョウの金紙で繋いでのリモート会議中だ。
『まあまあ、こちらからの依頼だったのは、本当ですから』
目の前で争われているのだろうコンミョウが執成しているのが、猫電話から流れる。
各所からの報告を整理してみる、と地下五階のフロアボスが倒され、六階へが開かれた代わりに、浅い階のモンスター出現率が減少して魔石の生産量が落ち、六階の強いモンスター対策に「紋刻魔法」装備を貸し出すようになったのは、まだ記憶に新しい。
新たな六階は、未だ全制覇されておらず、マッピング中だ。
地図制作を取りまとめているコンミョウが気がついたのが、一画にある空間だ。
入口の報告はなく、空間がどうつながっているかは不明だが、上階の床にも下への移動手段はなさそうだった。
そこでコンミョウは、トップランナーのグロン奥さんのパーティーへ依頼をした。
壁を壊して、中を確かめてほしい、と。
ちなみに、ダンジョンの床は無理だが、壁は破壊が可能だ。
ただし、五日もすれば、魔素を消費してでか元通りに修復される。
なので最悪、道に迷ったら壁をぶち抜いて脱出することも可能だ。
しかしこれは、通路と勘違いした者が混乱する危険、魔素を浪費して将来的な魔石枯渇につながる可能性があるため、禁止事項となっている。
依頼なので大手を振って、なかなかやるチャンスのない壁を壊したところ、封じられた中から、モンスターが飛び出してきた。
咄嗟に迎え撃つパーティーだったが、物理・魔法共にダメージを受けて怯む様子もなく、一撃でタンクが殴り飛ばされる始末。
三人がかりで気絶した重装備のワーベアーを抱えて逃げ出せたのは、敵が追ってこなかったからに過ぎない。
あまりに一瞬の出来事で、ようやく振り返ったときには、金色の人影を認識できただけだった。
大至急、地上に戻ったパーティーは、「紋刻魔法」装備の貸し出し窓口でオレンジを通して報告、緊急会議が招集されたのだ。
『現在、五・六階へは立ち入り禁止とし、インディゴが六階の階段前で監視をしております』
「もし姿が見えたら、情報集めようとしないで逃げるように指示してあるな?」
『大急ぎで逃げまーす!』
『だそうです』
パス通信ではない猫電話からの声に、わざわざ持って行っているのか、と思ったが秘書軍団は元羽猫、親機のようなものか。
選択肢は、討伐しかありえない。
トップランナーの中でも硬いタンクが一撃だ。
放置して、他が遭遇したら危険だ。
五階より上の階は、モンスター出現率が落ちているので、六階閉鎖は、魔石生産の面からあり得ない。
もちろん、六階に留まっているとも限らない。
とはいえ、あまりに情報が少ない。
金色で人型らしいが、それすらも混乱した逃走中の目撃で曖昧だ。
情報収集するにも、並みでは逃げるのも難しいだろう。
となると結局。
「俺たちで威力偵察するしかないか」
トップランナーが逃げるしかなかったのだ。
その上の戦力となれば、俺たちくらいになる。
もちろん、城塞都市にいるコンミョウと秘書軍団も上だが、出し惜しみをしている場合ではない。
シラン「魔王」『様』を前線投入する訳にもいかない。
「早い方が良いだろう。これからシランを呼んで跳ぶか」
「いえ、主殿」
珍しく、隣にいるハイロウが反対した。
「うん?俺たちが適任だと思うが?」
『いえ主上、そちらではなく』
同意らしいコンミョウの言葉に、ハイロウも頷いている。
『シラン殿の特性は、最後の手段として温存した方が良いと考えます、主上』
つまり、その敵に俺たちが全滅しそうになった場合、救出用に消耗させておきたくない、と言うのだ。
「そこまでの、」
心配は不要では?と続けるつもりだったが、両手に触れられて、俺は口をつぐんだ。
「パパ、その方が良いよ」
右手のヤトが訴え、左手のヨウコも頷いた。
「跳ぶんなら行かせないよ、お父さん」
背にしがみついて、シウンが囁いた。
パス通信で察しているコンミョウが、
『主上、ご同意いただけましたか?』
皆が聞いている猫電話でダメ押しをしてくる。
「しかし、」
『移動している気配がないから、元の場所で閉じ籠っているのかも?』
「動かないようならば、一刻を争うような緊急性は下がりますな」
インディゴの言葉をハイロウが解説する。
キラやサクラも何か言いたげな様子に、俺は折れた。
「わかったわかった。レッド、ドワーフ商隊は町にいるか?」
『すでに出発の準備に入っています』
俺の決定、いらなくないか?
『申し訳ございません!』
猫電話の向こうで頭を下げているらしいのは、ドワーフのグロン夫妻だ。
『こいつが調子に乗って、余計なことをしたせいで、』
『依頼されたって言ったでしょ!しかも、亭主は半分引きこもってるし!』
『なん、だと?』
「夫婦喧嘩は、自分の家でやってくれ」
各拠点を猫電話とコンミョウの金紙で繋いでのリモート会議中だ。
『まあまあ、こちらからの依頼だったのは、本当ですから』
目の前で争われているのだろうコンミョウが執成しているのが、猫電話から流れる。
各所からの報告を整理してみる、と地下五階のフロアボスが倒され、六階へが開かれた代わりに、浅い階のモンスター出現率が減少して魔石の生産量が落ち、六階の強いモンスター対策に「紋刻魔法」装備を貸し出すようになったのは、まだ記憶に新しい。
新たな六階は、未だ全制覇されておらず、マッピング中だ。
地図制作を取りまとめているコンミョウが気がついたのが、一画にある空間だ。
入口の報告はなく、空間がどうつながっているかは不明だが、上階の床にも下への移動手段はなさそうだった。
そこでコンミョウは、トップランナーのグロン奥さんのパーティーへ依頼をした。
壁を壊して、中を確かめてほしい、と。
ちなみに、ダンジョンの床は無理だが、壁は破壊が可能だ。
ただし、五日もすれば、魔素を消費してでか元通りに修復される。
なので最悪、道に迷ったら壁をぶち抜いて脱出することも可能だ。
しかしこれは、通路と勘違いした者が混乱する危険、魔素を浪費して将来的な魔石枯渇につながる可能性があるため、禁止事項となっている。
依頼なので大手を振って、なかなかやるチャンスのない壁を壊したところ、封じられた中から、モンスターが飛び出してきた。
咄嗟に迎え撃つパーティーだったが、物理・魔法共にダメージを受けて怯む様子もなく、一撃でタンクが殴り飛ばされる始末。
三人がかりで気絶した重装備のワーベアーを抱えて逃げ出せたのは、敵が追ってこなかったからに過ぎない。
あまりに一瞬の出来事で、ようやく振り返ったときには、金色の人影を認識できただけだった。
大至急、地上に戻ったパーティーは、「紋刻魔法」装備の貸し出し窓口でオレンジを通して報告、緊急会議が招集されたのだ。
『現在、五・六階へは立ち入り禁止とし、インディゴが六階の階段前で監視をしております』
「もし姿が見えたら、情報集めようとしないで逃げるように指示してあるな?」
『大急ぎで逃げまーす!』
『だそうです』
パス通信ではない猫電話からの声に、わざわざ持って行っているのか、と思ったが秘書軍団は元羽猫、親機のようなものか。
選択肢は、討伐しかありえない。
トップランナーの中でも硬いタンクが一撃だ。
放置して、他が遭遇したら危険だ。
五階より上の階は、モンスター出現率が落ちているので、六階閉鎖は、魔石生産の面からあり得ない。
もちろん、六階に留まっているとも限らない。
とはいえ、あまりに情報が少ない。
金色で人型らしいが、それすらも混乱した逃走中の目撃で曖昧だ。
情報収集するにも、並みでは逃げるのも難しいだろう。
となると結局。
「俺たちで威力偵察するしかないか」
トップランナーが逃げるしかなかったのだ。
その上の戦力となれば、俺たちくらいになる。
もちろん、城塞都市にいるコンミョウと秘書軍団も上だが、出し惜しみをしている場合ではない。
シラン「魔王」『様』を前線投入する訳にもいかない。
「早い方が良いだろう。これからシランを呼んで跳ぶか」
「いえ、主殿」
珍しく、隣にいるハイロウが反対した。
「うん?俺たちが適任だと思うが?」
『いえ主上、そちらではなく』
同意らしいコンミョウの言葉に、ハイロウも頷いている。
『シラン殿の特性は、最後の手段として温存した方が良いと考えます、主上』
つまり、その敵に俺たちが全滅しそうになった場合、救出用に消耗させておきたくない、と言うのだ。
「そこまでの、」
心配は不要では?と続けるつもりだったが、両手に触れられて、俺は口をつぐんだ。
「パパ、その方が良いよ」
右手のヤトが訴え、左手のヨウコも頷いた。
「跳ぶんなら行かせないよ、お父さん」
背にしがみついて、シウンが囁いた。
パス通信で察しているコンミョウが、
『主上、ご同意いただけましたか?』
皆が聞いている猫電話でダメ押しをしてくる。
「しかし、」
『移動している気配がないから、元の場所で閉じ籠っているのかも?』
「動かないようならば、一刻を争うような緊急性は下がりますな」
インディゴの言葉をハイロウが解説する。
キラやサクラも何か言いたげな様子に、俺は折れた。
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