レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

文字の大きさ
28 / 91
魔王国滅亡編

我がままでした

しおりを挟む
 魔物に貴重な食料を与えない。
 翌朝、そう俺に言われて昨夜、なぜヨウコが泣きそうになっていたのかを理解していたヤトは、頷いた。
 ヨウコも、ヤトが「蜘蛛がいるけど大丈夫だよって、みんなに、ちゃんと教えれば、アラクネーが罠を見にいけたと思うから。だから一番、責任感じて、ご飯あげたかった」と、ちゃんと自分から説明できたので、落ち込みから回復した。
「ヤト姉様、口元、汚れてます」
「・・・自分でできるよ」
 それで世話焼きになってしまうのは、ヨウコなりの愛情表現なのだろう。
「お父さん、口拭いて?」
「はい、シウン姉様、綺麗になりましたよ」
「・・・ヨウコちゃんのいじわる」
「ハイロウ叔父様は、顔ごと拭いてください」
「わ、わおん?」

「こっちから、甘い匂いがします、お父様」
「でも、そっち、いっぱい羽音がするよ?」
 その日の探索では、蜜蜂の巣を見つけることができた。
 しかし、巣を壊して、ハチミツを奪うのは簡単なのだが、せっかくだから、養蜂をやりたい。
 娘たちは、アネ芋の甘さで喜んでいるのだから、定期的なハチミツの供給が可能になれば、きっともっと喜んでくれるだろう。
「さっそく煙で燻して、ハチミツをとりますか」
「はちみつー!」
「いや、この蜜蜂を飼うことはできないか?」
「蜜蜂を飼う?ですか、主殿」
「そんなこと、できるんですか?お父様」
「俺も詳しくは知らないんだが、そういう方法があるはずなんだ。知らないか?」
「残念ながら。キラにも聞いてみましょう」
 早速、パス通信を始めるハイロウ。
『キラ、今、話して大丈夫か?』
 なんだか、スマホっぽい話出しだな。
『兄さま、またやらかしたんですか?』
『い、いや、そうではなくてだな』
 聞いている娘たちは叔父を、「やらかしてるよね」的な目で見ていた。
『主殿が、蜜蜂を飼いたいとおっしゃられてな。キラは、聞いたことがあるか?』
『南の方で、そういう取引に行った覚えがありますけど、うろ覚えですね』
『・・・ああ、あのハチミツは、飼った蜜蜂でだったのか』
『・・・兄さまも、キラといっしょに、説明を聞いたはずです』
 聞いている娘たちは叔父を、「やらかしてるよね」的な目で見ていた。
 結局、キラにも前世でいう巣箱に、どう誘導するとかの専門知識はないようだった。
『主様。いろいろ申し訳ありません。今度、街でやり方を調べてみます』
『わかった。頼む』
「・・・いろいろって?」
 聞いている娘たちは叔父を、「いろいろ、やらかしてるよね」的な目で見ていた。

 残念だが、蜜蜂の巣の周囲に、目印をつけておいて、街でワー・ウルフ兄妹に調べてもらった後、なんとかすることにしよう。
「はちみつ、いっぱいとれるようになったらいいね!」
「お料理の幅が、広がりそうです」
「お父さん、ハチミツとシウン、どっちが好き?」
「ハイロウ、口閉じて、口元拭こうな」
 これを聞いて、ヤトもヨダレをぬぐった。
 ヤトの「人の振り見て我が振り直せ」がレベルアップした。

 夕食を囲んでいると、「あ」とヤトが、声を上げた。
 そして、「昨日のアラクネーが来てる」と、耳と指をさして、告げた。
 どうやら、警戒していたからか、風向きか、ヨウコとハイロウは、既に気づいていたようで、ヤトの指より先に、そちらを見ていた。
 しかし、ヤトが、アラクネーの接近を隠さなかったことで、何も言う気はないようだ。

 木陰から、こちらを見ている見覚えのある、くすんだ赤い髪のアラクネーに、ヤトは何かしてあげたいようだが、「魔物に貴重な食料を与えない」の約束で、何も言えずにいた。
 俺はそれを見て、正しいことか、判断がつかないまま、感情のままに、自分の分の干し肉の炙り焼きの串を掴み、「もう、腹いっぱいだから」と、アラクネーに放ろうとしたら、「主殿!」と、強い声でハイロウに止められた。
「・・・もう、食べられないんだが?」
 咎められて、見苦しく言い訳する俺に、目を逸らさず、
「主殿。投げては、攻撃ととられて逃げます」
 確かにそうだ。
 なら、近くまで持っていって肉を置いてこよう、と立ち上がった。
「お父様?」
 反対するだろうヨウコの声に、シウンとヤトが、おろおろしている。
「もう、お食べにならないなら、つくったヨウコが、責任をとって捨ててきます」
 ヨウコの言葉に、みなの力が抜けた。
「あ、ヤトも、もう」
「お姉さんも食べられないから、ヤトちゃん、食べてくれる?」
「え?ヤトも、そんなに食べられないよ」
「じゃあ、ヤトちゃんは、自分の分をちゃんと食べてね。お父さん、シウンの分も余っちゃいました。ごめんねヨウコちゃん」
 自分のつくった料理を捨てると躊躇なく言う末っ子。
 空腹を我慢して自分の食べる分を差し出そうと悩む妹に、手を差し伸べる姉。
 俺は、優しい芝居をする家族を、誇らしげに見て、それに合わせて、わざとらしく、ため息をついた。
「自分の食べられなかった分くらい、自分で持っていくよ」
「お父様の手を煩わせることはありません!」
 慌てたように言うヨウコ。
 どうやら、本心では、アラクネーにご飯をあげたヤトがうらやましくて、自分であげたいのだろう。
 それを素直に言えない末っ子に、ちょっとした心配と、ちょっとした安堵を感じた。
 そして、それを温かく見ている長女に、心配そうな次女。
 俺は、側の木から、葉をとると、干し肉を乗せて渡し、
「わかった、ヨウコに頼む。念のために、シウンとヤトも、ヨウコに、つき添ってやってくれ」
「はい、お父様!」
「うん、パパ!」
「わかってます、お父さん」

 娘たちを見送る俺に、
「魔物に食料を与えるのは、良いこととは、思いませんな、主殿」
「俺も、甘いと思う。すまないな、こんな主で」
「いえ、それでこそ、我が主殿ですぞ」
 我がままを通しただけの俺に向けるハイロウの笑顔は、少しばかり眩しすぎた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...