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ちかめいきゅう

アーマー・ドラゴン

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 朝日が射すように、明るくなっていく広間。
 その中央には、ドラゴンがいた。
 バーも、名前も見えない。
 まだ、俺たちに気づいていないからか?
 俺たちは、通路へ戻ろう、と振り返って、そこが壁になっていることに気がついた。
 アーマー・ドラゴンの名前とバーが現れ、咆哮が響いた。

「間に合わなかった」
 カムイが悔やむように呟いた。
 戦闘前に、装備をライフルに代えたかったのだろう。
 それで、気がついた。
「例の鱗がないぞ」
 そう、逆鱗が見当たらないのだ。
 逆に、攻撃が通るのか?
 素早く回り込んで、足元に一撃。
 腕が痺れるような衝撃。
 バーが削れた様子がない。
 硬い上に逆鱗がないとか、無敵か?
 しかも、広間には逃げ道がなさそうだ。
 飛び退いた俺を追ってこなかったことで、気がついた。
 アーマー・ドラゴンは鎖で、柱のようなものに縛り付けられている。
 あれは、転送石か?
 なんとか、あれで逃げ出せば?
 いや、もし起動せずに転送されなかったら、一撃を喰らう。
 しかも、どこへ跳ばされるかわからない。
 倒すしかないのか?
 どうやって?
 ドラゴンが、動けないことに気がついたカムイが、銃弾を放つ。
 しかし、バーに変化がない。
 もっと強力な攻撃なら?
「ファイアー・ストーム」
 ドラゴンの足元から、炎の嵐が巻き起こった。
 バーが少し削れた?
 重なった鱗が、何枚か剥がれ落ちている。
 その下から、背に色の違う鱗が一枚。
 あれか!
 そこに俺たちの視線が集まった瞬間、ドラゴンが炎を吐いた。
 ダメージを与えた、ミチルへ向けて伸びる。
 ランドウの盾を大型化しながら、ミチルを抱きかかえて避けるが、僅かに間に合わず、ミチルが足を焼かれて、ヒットポイントが激減する。
「ミノタウロスの源に感謝するんだな」
 角のヒットポイント増加の補正がなければ、危なかった。
「だって、角カッコ悪いもん」
 バイキングとかに謝れ。
「鱗が戻ってる」
 カムイの声に見る、と剥がれた鱗が浮き上がり、再び身体に張り付いて、逆鱗を隠していく。
 再生するのか?
 でも、場所さえわかれば!
「カムイはヘイトを稼ぐな!」
 俺は叫んで、ドラゴンに駆け寄り、足に一撃。
 当然、ダメージは入らないが、ヘイトはこちらに向いた。
 頭の方へ移動したら、まだ炎を吐けないのか、頭で潰そう、と振りかぶった。
「カムイ、ランチャー!ドラゴンに中てるなよ!」
 ドラゴンの足元から、煙が吹き上がる。
 視界が奪われたのか、飛び退いた俺には気づかず、頭突きは空振りで床にメリ込んだ。
 その頭に俺は飛び乗る。
 慌てたように持ち上がる頭。
 その動きで巻き起こった風で、煙が晴れた。
 逆鱗があった場所に、龍鱗の剣を投げ唱える。
「燃えろ」
 フっ、と気が遠くなって、投身自殺みたいに、身体が宙に浮いた。
 遠くで、悲鳴が聞こえて、我に返る。
 剣が中って背中の鱗が弾け、逆鱗が見えていた。
 俺は、絆の鎖を引いて、空中で龍鱗の剣を逆手に掴む、と体重を乗せて、そのまま逆鱗に向かって落ちていった。

 あの後、広間からの出口は見つからず、どこに跳ぶかわからない転送石にかけたが、幸いギルドの転送石に出た。
 まだ早朝だ、というのにギルド職員がいた。
 徹夜を愚痴る職員に、アーマー・ドラゴンのことを話す。
 真っ青になった職員は、どこかへ走っていき、また戻ってきて息せきって聞いてきた。
「ドロップアイテムはどうなってます?」
 あ、確認するのを忘れてた。
 ステータスカードで確認したら、「鎧龍の鱗」。
 「呪い」のアイテムではなく、一安心だった。
 「龍鱗」が呪われていたのは、やはり腐りドラゴンだったからなのだろうか?
 「鎧龍の鱗」は、防具の素材として、優秀な上、ステルス能力があった。
 モンスターから見つかりにくくなるのだ。
 カムイが装備すれば、前衛でヘイトを稼いでも、逃げやすくなるし、ライフル射撃の後も見つからないですむかもしれない。
 問題は、ダンジョンだが、入口が壁で塞がれ、入れなくなってしまった。
 広間へも、ギルドの転送石の調整がうまくいかずに、跳べずにいる。
 ギルドは、「使用権がー」とか、「所有者がー」とか言っているが、入れないものは仕方ない。
 というか、転送できるようにギルドが頑張れ。
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