【完結】剣と魔法と魔力銃でモンスターを狩って楽しく暮らしていた「が」

まみ夜

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ちかめいきゅう

オーク

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 今日も、無事にモンスター退治を終え、俺たちは夕食を囲んでいた。
 俺は、トンカツをビールで、ミチルはシーフードグラタンで白ワイン、カムイはオムライスにウーロン茶だ。
 カムイは、卵料理が好きで、よくオムライスを食べているが拘りは、ちょっと変わっていて、オムレツを乗せて切り広げるタイプなのだが、ご飯が塩胡椒で味付けされたチキンピラフだ。
 カムイに言わせれば、かかっているケチャップを節約して食べるのが楽しいのに、中身もケチャップライスでは、味がカブるし、楽しみが減るのだそうだ。
 真剣に主張するのはいいが、口元が赤く汚れてるのが、カワイイ。
 俺たちの食卓は、一見すれば不自然ではない。
 だが実は、俺たちは、ミノタウロスと戦ってから、牛肉が食べにくくなっていたのだ。
 それは、ヤツにファイアー・ストームが中った時の匂いが原因だった。
 とてもいい、焼肉の匂いがしたのだ。
 で、それ以来、誰も牛肉を食べよう、とはしない。
 別の席に、ステーキが運ばれる匂いも、ちょっと嫌な感じだ。
 腐りドラゴンの腐臭はしなかったのに比べて、少し不思議だが、あれはああいう外見なだけで、腐っていなかったのだろうか?
 速攻、カムイが一撃で倒してしまったので、はっきり名前がどうだったか、憶えていない。
 トンカツを焼いていない食パンで挟み、ソースの小皿に寿司のようにつけて、齧る。
 トンカツは、白飯で旨いのは当然だが、ビール呑んでいるときは、パンに挟むのもいい。
 カツサンドでビールを飲み干してしまったので、空のジョッキを示して、お代わりを頼む。
 ミチルが食べているグラタンに乗っている海老を見て、綺麗に形が揃っているな、と思った。
 漁協のブランド品も真っ青の規格だ。
 まあ、カップヌードルの海老も、見分けがつくほど個性があるわけではないから、こんなものなのかもしれない。
「一口、ほしいの?」
 俺が、海老を見ていたせいか、ミチルが言ってきた。
「ただし、トンカツ一切れと交換よ」
 それは、等価交換ではないし、絶対に熱々部分を差し出してくるに違いない。
「いや、いい」
 ちっ、と舌打ちしたミチルだったが、期待の目で見ていたカムイと一口交換していた。
 そういえば、海老は、どこで捕れるのだろう?
 海がある、とは聞いたことがない。
 淡水の海老なのだろうか?
 それを言えば、転送先とかでも、畑などを見たことがないような気がする。
 いや一度、結構近場で羊が飼われているのを見たことがあったか。
 俺の実家が農家だったはずだが、田植え機を使っていたり、大型車両で玉葱を掘り起こしていたり、と記憶が混乱していて、はっきりしない。
 食事はここでか、クエスト途中はギルドで買った携帯食料ばかりで、一般の店で買い物をしたことがなかったな。
 なんてことを考えていたら、見覚えのあるギルド職員が、駆け込んできて叫んだ。
「カムイさんは、いらっしゃいませんか?」
「は、はい!」
 慌てて、最後のオムライスを飲み込んで、手を挙げて立ち上がった。
「大至急、ギルドへお願いします。パーティーのみなさんも」
 こんな時間にか?
 酒、呑んじゃってるぞ?
「お早く!」
 急かされて店を出る俺の視界の隅に、俺の中ジョッキが運ばれていくのが見えた。
 ビール頼み損だ。
 魔法があろうが、あの泡を保存しておく術ないのだ。

「え?なんで?」
 それが、話を聞いた第一声だった。
 ギルドで聞かされたのは、「ダンジョンにオークが住み着いたから、退治しろ」だ。
 使用権は、ギルドに売ったはずだけど?
 ギルドが主張するには、オークが住み着いて使用できないので、所有者の責任で、使用可能にしろ、とのこと。
 賃貸アパートに白蟻が住み着いたら、大家が処理する、という感じだろう。
 言いたいことはイロイロ、とあったが、面倒にもなったので、正式なクエストとして受けることで、納得した。
 なるべく急いでダンジョンを開放しろ、というので、酔いも醒めていたから、その足でダンジョンに向かった。
 しかし、夜のダンジョンは、真っ暗だった。
 逆に、昼のダンジョンが明るかったのが、不思議だ。
 一度、戻ってライトなどを用意した。
 龍鱗の剣は、「燃やせ」ば、淡く赤く発光するが、単に目立つだけな上、夜間の警備員みたいになるので、普通にライトを持った。
 更に、野宿するとき用の魔力石式のランタンを、ギルドで買った「ランタンお買い得セット」に入っていた伸縮式十フィートの棒の先に括り付けて、ミチルが持った。
 カッコ悪い、と嫌がったが、先頭の俺も殿のカムイも武器とライトで両手が塞がっているので、仕方がない。
 オークはいなくなったのか、またもや不具合なのか、ガイドカーソルが出ていない。
 カムイが後方を警戒しながらユックリ、と進む。
「なんだ?」
 ランタンの光で、不自然な影が床にあったので、十フィートの棒で突かせたら、崩れた。
「落とし穴だ」
 どうやら、オークが罠を仕掛けたらしい。
 真っ暗な上にトラップ付では危険すぎて無理だ。
「一度、撤収」
 二人も頷き、元の道を戻り始め、しばらくしたら行き止まりになった。
「なんで?」
 ステータスカードに表示されるマップも、通路になっている。
「これも罠か?」
 急に赤いガイドカーソルが現れ、オークたちが背後から襲い掛かってきた。

 不意を打たれものの、オーク単体は、それほど強くないので、撃退できた。
 しかし、これも罠なのか、ミノタウロスのときに歩いた地図が、役に立たない。
 仕方なくランタンは諦め、カムイが先頭で十フィートの棒で壁を叩きながら進み、ランドウの盾を大型化した俺が殿を務めた。
 通路に飛び出てくるオークを、カムイが一、二発で倒す、というシューティングゲームがしばらく続く。
 時々、現れるガイドカーソルの感じから結構、残りは少なさそうだ。
 クエスト自体は、チョロいかもしれない。
 出口が見つかれば、だが。
 助かったのが、オークを倒して十五分ほど戦闘がない、と戦闘終了扱いになるらしく、回復アイテムが使えた。
 それが分かって、少し余裕が出た俺たちは、通路のど真ん中で、ミチルとカムイに仮眠をとらせた。
 ライトをとりに戻ったときに、ついでに簡易お泊りセットも持ってきたのは正解だった。
 セットに入っていたアルミホイルみたいな断熱シートに包まって、丸まって寝ている二人を眺めながら見張りをして、エネルギーバーを齧る。
 外の夜明けに合わせてか、ダンジョン内も明るくなり始めたので、二人を起こした。
 ペットボトルから水を入れて、牛タン弁当みたいに紐を引っ張れば熱くなるカップラーメンは、向こうの世界でも売ってほしいくらい便利だ。
 はふはふプラスチックのフォークで朝食を食べる二人とは違って、寝不足で食欲のない俺は、カフェインの入ったゼリー飲料を二人の分も貰って、再び攻略を開始した。

 カムイの銃撃、ミチルのファイアー・アローで、順調に攻略は進んだ。
 ミチルのヒットポイントが三分の二に減ったら十五分、休憩して、回復アイテムを使うようにした。
 時々にしか現れないガイドカーソルを追って、オークを全滅させたのか、不具合で表示されないだけなのか迷いながら歩いていたら、大広間に出た。
 ミノタウロスのときには、なかった空間だ。
 夜が明けきっていないのか、奥までは見通せない。
 しばらく、警戒したが、もう最後の戦闘から三十分以上ガイドカーソルは出ていないし、オークの気配もしないから、全滅させたのだろう。
 ダンジョンからの出口を期待して、中に踏み込んだ。
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