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せいけんのきし
ナイト
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俺は、礼儀として、シュウの冥福を祈りつつフ、と思った。
死んだら、魂はどこへ行くんだ?
墓の側に、教会はない、というのに。
俺は、ランドウとの対決で、苦悩したことを思い出し、無邪気な顔したライラに、無性に腹が立った。
こいつ、人殺して、ナニ晴れやかな顔してやがる?
俺は、ライラに向けて、無造作に剣を投げた。
雷の感電を警戒して、手首の鎖と繋ぐ革バンドは外したままだ。
「うおっ」
シュウを倒し、悦に入って油断していたのか、意外に野太い叫びを発しながら、剣を弾くころには、俺は目の前に迫っていて、十字の盾で殴りつけた。
ライラの名前とバーが出て、赤く削れる。
俺は、地面に転がったライラから視線を外さずに、剣を拾った。
こいつ、ケモミミ?
そう、ショートカットの髪の登頂部分に、二つの犬っぽい三角形の獣の耳があった。
こんな種族が、この世界にいたのか?
というか、人の耳があるあたりから、ピアスだかイヤリングが見えるが耳、四つあるのか?
ライラは立ち上がり、
「不意打ちとは、卑怯者め!」
いや、お前もシュウを不意打ちしてただろう?
とはいえ、怒りに任せて殴ったのはいいが、斬り殺すわけにいかず、かといって殺されるのもご免被る。
少々、困っている、とライラのアンダーの胸元が捲れた。
どうやら、十字の盾で殴ったときに、その縁の「クラーケンの嘴」で切ってしまったらしい。
アンダーの隙間からボロッ、と巨乳が、いやパッドが零れ落ちた。
その胸は、明らかに平で、
「貴様、恥をかかせてくれたな!」
その声は、諦めたのか野太くて、
ケモミミ男の娘?
俺は、胸元を隠して逃げ出すライラを見送りガックリ、と膝をついた。
もし、俺がこの話を聞いた、としたら、大笑いしただろう。
なんというか、盛り過ぎで、どこもかしこもツッコミがいがあるからだ。
しかし、当事者になってみれば、笑えない。
一番怖いのは、「最後の一人の報酬」の存在すらわからないのに、平気で人を殺すことだ。
この報酬が、「元の世界に帰れる」という望みを叶えられるなら、俺は悩んだだろう。
帰りたいか、結論は別にして、可能性があれば悩む。
人は、誰しも叶えたい願望があるのはわかる。
だが、叶うかが本当かどうかもわからないのに、人を殺せるのか?
しかも、何振り残っているか知らないが、その使い手、複数全員をだ。
確かに、俺はジェネラルとして、モンスターと戦っている。
しかし、それと人を殺せるかは、別問題だ。
シュウとの勝負に応じたのも、殺し合いとは思っていなかったからだ。
なぜなら、彼からは殺気を感じなかったからだ。
それは、俺を殺す気がなかったためではなく、聖剣の付属品もしくは障害物、としか見ていなかったからだ、と今ならわかる。
ライラも、同じだったからだ。
むしろ、使い手を殺せば、聖剣が消せる、くらいにしか考えていないのだろう。
「人」が、どんな思いを抱えているかなど、想いを馳せもせず。
そもそも武器も防具も、壊れてもステータスカードを通じて、転送しなおせば、元に戻る。
それでも、不用品は捨てたり売ることはできるはずが、「聖剣☆龍鱗の剣」になったせいか、処分できなくなっていた。
まるで、「聖」剣とは名ばかりの、呪いのアイテムのように。
つまり、使い手を殺すしか、聖剣を消滅させる方法はないのだ。
いやもし、ギルドの倉庫を破壊したら、どうなるんだ?
「どうするの?」
烏賊飯を箸で口に運びながら、ミチルが聞いてきた。
酔ってゲソ串を齧ってから、また元のように魚介が食べられるようになっていた。
でも烏賊食べ過ぎ、烏賊臭くなるぞ。
「どうする、と言ってもな」
最悪、聖剣の使い手の残りが、ライラと俺だけなら、自分の身を守るために、殺す覚悟はある。
しかし、今は最後の二人だった、としても今後また増えてくるのかもしれないのだ。
何人いるかもわからないのに、殺し続ける根性は、ない。
いや、もっと正確に言えば、殺し続けられる自分になりたくない。
それは、ランドウを平気で殺せる、ということだからだ。
サクラの死を目の当たりにせず、どこかで生きているんじゃないか、という思いがあるせいか、人の死に、鈍感になりつつある、と感じていた。
人を殺すこと、仲間が死ぬことには、慣れたくない。
そうなったら、もう「俺」ではない気がする。
そもそも、「俺」って何だ?
「でも、あの耳、なんだったんだろう?」
カムイが、疑問に思ったらしく、口にした。
え?
ケモミミいないの?
「なにそれウケる。雪男とか信じてるタイプ?」
モンスターがいて魔法がある世界で、言われたくないぞ。
「人みたいだった」
耳が四つあるとか、生物学的にどうか、と思うが。
頭蓋骨の登頂に耳の穴開いてたら、髪洗ったら水入るんじゃないのか?
脳は聴覚器官の分、凹んでるのか?
「人じゃないから、人を殺しても平気なのかな?」
俺たちがモンスターを狩るように?
聖剣の使い手は、人じゃない?
なら、殺していいのか?
いや、シュウは「人」だった、と思う。
少なくとも俺は、「人」のはずだ。
ジェネラルは、「人」じゃないのか?
俺が「俺」でなくなる心理的な葛藤以外にも犯罪、としての面もある。
俺たちジェネラルは、対モンスターの戦力であって、人を裁いたり、捕らえたりする権利はない。
少年漫画なら、「倒した」で犯罪にはならないのだろうが、人殺しだ。
そういうのは、
「警察?いや衛兵の仕事か?」
「ケイサツ?」
カムイが、オムライスのスプーンを咥えて、首を捻った。
ヤキトリを食べて、元のように鶏肉が食べられるようになって、ご飯はケチャップで味付けのチキンライスになっていた。
ケチャップライスもまた良し、と見なおしたらしいが、でも口元が赤く汚れてるぞ。
「なにそれ?」
ミチルも、不思議そうに聞いてきたので、
「犯罪をしたら、捕まるだろう?」
「捕まる?誰に?」
そういえば、牢獄とか見たことがないな。
どこかの地下にでもあるんだろう、と気にしたこともなかったが。
「いや、だから警察とか衛兵にだよ」
二人の頭の上に、クエスチョンマークが浮かぶのが見えるようだ。
もしかして、ないのか、犯罪者取り締まりの組織が?
それとも何やってもバッサリ、と切り捨て御免とか?
そもそも、そういう衛兵とかを見たことがないな。
「悪いこと、しちゃダメなんだよ?」
ミチルが、眉を顰めて言った。
カムイも頷いている。
「いや、それはそうなんだが」
それでも犯罪は起こるもので、とは轟音で続けられなかった。
料理が散乱した床から、顔を上げたら壁をブチ抜き、予想通りライラが立っていた。
ミノタウロスかよ。
女装は止めたのか、胸に膨らみのないブレストプレートを着けていた。
俺は、念のために着ていたアンダーで装備を呼び出し、大型化した十字の盾を翳してライラに突進し、そのまま夜の街中へ、と押し出した。
ライラは、踏みとどまろう、としているが、店から離したいので、力任せに押し続ける。
『くそ!人間風情が・・・!』
ライラの叫びが、盾越しに微かに聞こえた。
やはり、人じゃないのか?
『特別だと・・・・、切り捨・・・・。女の恰好・・・させて!』
差別的なことか?
女装も特別視させるため?
さすがに、勢いが削がれ、足が止まった。
ライラが、雷鳴の剣を翳す。
くる!
俺は轟音の中、雷鳴の剣を受け止めていた。
対策をしていたとはいえ、耳が痛い。
雷鳴の剣の能力は、その名の通り「雷鳴」、音と衝撃だけだった。
それで怯ませて、隙を突く。
一度も雷撃がなかったのを見抜いていた俺は、衝撃で床に転がったとき、耳に烏賊飯のご飯を詰めていた。
目を見開くライラの腹に、拳を減り込ませる。
気絶した手足を縛りながら、女装していたら、俺が犯罪者にしか見えないな、と苦笑したが正直、これからどうしよう、と悩んでいた。
人の気配がしたので、ミチルたちか、と思って振り向いたら、そこには、長髪の人影が立っていた。
死んだら、魂はどこへ行くんだ?
墓の側に、教会はない、というのに。
俺は、ランドウとの対決で、苦悩したことを思い出し、無邪気な顔したライラに、無性に腹が立った。
こいつ、人殺して、ナニ晴れやかな顔してやがる?
俺は、ライラに向けて、無造作に剣を投げた。
雷の感電を警戒して、手首の鎖と繋ぐ革バンドは外したままだ。
「うおっ」
シュウを倒し、悦に入って油断していたのか、意外に野太い叫びを発しながら、剣を弾くころには、俺は目の前に迫っていて、十字の盾で殴りつけた。
ライラの名前とバーが出て、赤く削れる。
俺は、地面に転がったライラから視線を外さずに、剣を拾った。
こいつ、ケモミミ?
そう、ショートカットの髪の登頂部分に、二つの犬っぽい三角形の獣の耳があった。
こんな種族が、この世界にいたのか?
というか、人の耳があるあたりから、ピアスだかイヤリングが見えるが耳、四つあるのか?
ライラは立ち上がり、
「不意打ちとは、卑怯者め!」
いや、お前もシュウを不意打ちしてただろう?
とはいえ、怒りに任せて殴ったのはいいが、斬り殺すわけにいかず、かといって殺されるのもご免被る。
少々、困っている、とライラのアンダーの胸元が捲れた。
どうやら、十字の盾で殴ったときに、その縁の「クラーケンの嘴」で切ってしまったらしい。
アンダーの隙間からボロッ、と巨乳が、いやパッドが零れ落ちた。
その胸は、明らかに平で、
「貴様、恥をかかせてくれたな!」
その声は、諦めたのか野太くて、
ケモミミ男の娘?
俺は、胸元を隠して逃げ出すライラを見送りガックリ、と膝をついた。
もし、俺がこの話を聞いた、としたら、大笑いしただろう。
なんというか、盛り過ぎで、どこもかしこもツッコミがいがあるからだ。
しかし、当事者になってみれば、笑えない。
一番怖いのは、「最後の一人の報酬」の存在すらわからないのに、平気で人を殺すことだ。
この報酬が、「元の世界に帰れる」という望みを叶えられるなら、俺は悩んだだろう。
帰りたいか、結論は別にして、可能性があれば悩む。
人は、誰しも叶えたい願望があるのはわかる。
だが、叶うかが本当かどうかもわからないのに、人を殺せるのか?
しかも、何振り残っているか知らないが、その使い手、複数全員をだ。
確かに、俺はジェネラルとして、モンスターと戦っている。
しかし、それと人を殺せるかは、別問題だ。
シュウとの勝負に応じたのも、殺し合いとは思っていなかったからだ。
なぜなら、彼からは殺気を感じなかったからだ。
それは、俺を殺す気がなかったためではなく、聖剣の付属品もしくは障害物、としか見ていなかったからだ、と今ならわかる。
ライラも、同じだったからだ。
むしろ、使い手を殺せば、聖剣が消せる、くらいにしか考えていないのだろう。
「人」が、どんな思いを抱えているかなど、想いを馳せもせず。
そもそも武器も防具も、壊れてもステータスカードを通じて、転送しなおせば、元に戻る。
それでも、不用品は捨てたり売ることはできるはずが、「聖剣☆龍鱗の剣」になったせいか、処分できなくなっていた。
まるで、「聖」剣とは名ばかりの、呪いのアイテムのように。
つまり、使い手を殺すしか、聖剣を消滅させる方法はないのだ。
いやもし、ギルドの倉庫を破壊したら、どうなるんだ?
「どうするの?」
烏賊飯を箸で口に運びながら、ミチルが聞いてきた。
酔ってゲソ串を齧ってから、また元のように魚介が食べられるようになっていた。
でも烏賊食べ過ぎ、烏賊臭くなるぞ。
「どうする、と言ってもな」
最悪、聖剣の使い手の残りが、ライラと俺だけなら、自分の身を守るために、殺す覚悟はある。
しかし、今は最後の二人だった、としても今後また増えてくるのかもしれないのだ。
何人いるかもわからないのに、殺し続ける根性は、ない。
いや、もっと正確に言えば、殺し続けられる自分になりたくない。
それは、ランドウを平気で殺せる、ということだからだ。
サクラの死を目の当たりにせず、どこかで生きているんじゃないか、という思いがあるせいか、人の死に、鈍感になりつつある、と感じていた。
人を殺すこと、仲間が死ぬことには、慣れたくない。
そうなったら、もう「俺」ではない気がする。
そもそも、「俺」って何だ?
「でも、あの耳、なんだったんだろう?」
カムイが、疑問に思ったらしく、口にした。
え?
ケモミミいないの?
「なにそれウケる。雪男とか信じてるタイプ?」
モンスターがいて魔法がある世界で、言われたくないぞ。
「人みたいだった」
耳が四つあるとか、生物学的にどうか、と思うが。
頭蓋骨の登頂に耳の穴開いてたら、髪洗ったら水入るんじゃないのか?
脳は聴覚器官の分、凹んでるのか?
「人じゃないから、人を殺しても平気なのかな?」
俺たちがモンスターを狩るように?
聖剣の使い手は、人じゃない?
なら、殺していいのか?
いや、シュウは「人」だった、と思う。
少なくとも俺は、「人」のはずだ。
ジェネラルは、「人」じゃないのか?
俺が「俺」でなくなる心理的な葛藤以外にも犯罪、としての面もある。
俺たちジェネラルは、対モンスターの戦力であって、人を裁いたり、捕らえたりする権利はない。
少年漫画なら、「倒した」で犯罪にはならないのだろうが、人殺しだ。
そういうのは、
「警察?いや衛兵の仕事か?」
「ケイサツ?」
カムイが、オムライスのスプーンを咥えて、首を捻った。
ヤキトリを食べて、元のように鶏肉が食べられるようになって、ご飯はケチャップで味付けのチキンライスになっていた。
ケチャップライスもまた良し、と見なおしたらしいが、でも口元が赤く汚れてるぞ。
「なにそれ?」
ミチルも、不思議そうに聞いてきたので、
「犯罪をしたら、捕まるだろう?」
「捕まる?誰に?」
そういえば、牢獄とか見たことがないな。
どこかの地下にでもあるんだろう、と気にしたこともなかったが。
「いや、だから警察とか衛兵にだよ」
二人の頭の上に、クエスチョンマークが浮かぶのが見えるようだ。
もしかして、ないのか、犯罪者取り締まりの組織が?
それとも何やってもバッサリ、と切り捨て御免とか?
そもそも、そういう衛兵とかを見たことがないな。
「悪いこと、しちゃダメなんだよ?」
ミチルが、眉を顰めて言った。
カムイも頷いている。
「いや、それはそうなんだが」
それでも犯罪は起こるもので、とは轟音で続けられなかった。
料理が散乱した床から、顔を上げたら壁をブチ抜き、予想通りライラが立っていた。
ミノタウロスかよ。
女装は止めたのか、胸に膨らみのないブレストプレートを着けていた。
俺は、念のために着ていたアンダーで装備を呼び出し、大型化した十字の盾を翳してライラに突進し、そのまま夜の街中へ、と押し出した。
ライラは、踏みとどまろう、としているが、店から離したいので、力任せに押し続ける。
『くそ!人間風情が・・・!』
ライラの叫びが、盾越しに微かに聞こえた。
やはり、人じゃないのか?
『特別だと・・・・、切り捨・・・・。女の恰好・・・させて!』
差別的なことか?
女装も特別視させるため?
さすがに、勢いが削がれ、足が止まった。
ライラが、雷鳴の剣を翳す。
くる!
俺は轟音の中、雷鳴の剣を受け止めていた。
対策をしていたとはいえ、耳が痛い。
雷鳴の剣の能力は、その名の通り「雷鳴」、音と衝撃だけだった。
それで怯ませて、隙を突く。
一度も雷撃がなかったのを見抜いていた俺は、衝撃で床に転がったとき、耳に烏賊飯のご飯を詰めていた。
目を見開くライラの腹に、拳を減り込ませる。
気絶した手足を縛りながら、女装していたら、俺が犯罪者にしか見えないな、と苦笑したが正直、これからどうしよう、と悩んでいた。
人の気配がしたので、ミチルたちか、と思って振り向いたら、そこには、長髪の人影が立っていた。
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