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せいけんのきし
パラディン
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『ら・・・は、・・・・さい・・・』
あ、ごめん。
何かしゃべっているようだが、耳に詰めた「ご飯」で聞こえない。
指で、かき出して、
「悪い、聞こえなかった」
相手は、肩を落としたが、
「ライラは、我々の中で最弱だ!」
とりあえず、顔はよく見えないが、知らない高い声で、ランドウではなかったので、安心した。
決め台詞だったのに、繰り返させてしまって、申し訳ない。
「我々の中」ということは、複数なのだろう。
もしかして、聖剣使いの残りが勢ぞろいか?
三聖人とか四天王とか五人衆とか六道王とか七将軍とか八部衆とかか?
人数を確認しよう、と見渡すが、一人だけのようだ。
え?
まさかの二人組?
「我ら、兄弟のように育ったのだ!」
あ、そっちね。
というか、姉妹じゃないんだ?
よく見たら、長髪ではなく垂れた、ウサミミかダックスフントのような耳だった。
邪魔と言うか、人より聴こえ辛くないか?
いや、どれもこれも、差別的発想か?
「星海の剣セイラ、参る」
名前とバーが出た。
こっちは、名乗ってないのに、問答無用かよ。
いや、兄弟同様を縛り上げておいて、話し合いもないか。
星海の剣、どんな能力だ?
流れ星を落とす、メテオストライクだけは止めてくれよ。
思わず見上げた夜空から、星が消えた。
星だけでなく、セイラも、いやほとんど何も見えない。
人の輪郭のようなものが揺らぎ、ガサガサ擦れるような音、焦げた匂いが強くなった。
フィルムの映写機を回すような音が響く。
なんだ?
熱が視えている?
輪郭の腕が動いたように視えた。
布を裂くような音がし、俺の足元から甘い匂いがし、煙のようなものが広がって、セイラの輪郭を消してしまった。
何が起きている?
ガラスを引っかくような音がして、思わず身を竦めた。
強い焦げた匂いがし、煙がかき回され、側で風船のようなものが膨らんだ。
なぜか、その風船に「ほう躱したか」と視えた。
視覚、聴覚、嗅覚が入れ替わっている?
また、ガラスを引っかく音がしたので、大きく飛ぶ。
これは、剣の動きが聞こえてるのか?
じゃあ、始めの輪郭や煙は匂い?
消えたのは、香水でも巻かれたのか?
動きが遅いのは、集中が途切れたら、この能力が解除されるからか?
フィルムのような音は、能力を使うことでバーが減っているのが聞こえてるのか?
なら、距離をとって時間を稼げば、ヒットポイントがなくなるはずだ。
遠くへ逃げよう、として顔面を強打されて、倒れた。
風船が膨らみ「壁にぶつかりにいくとは馬鹿だな」と視えた。
教えてくれて、ありがとう。
動かず、匂いも音もしないものは、よくわからないらしい。
それでも、とにかく立ち上がり、振り向き様、手首から外した鎖を投げた。
絡まる感触がしたので、強く引く。
触覚には影響していないようだ。
「うおっ」
野太い叫びがして、視界が元に戻った。
そこには、剣を持つ手に鎖が巻き付いたセイラが、驚きの表情で立っていた。
「なぜ、ここだとわかった」
「まあ、後ろから来たいだろうな、と思って」
見えてなくても、用心して真正面は避けて、背後から忍び寄るだろう、という単なるカンだ。
正面から敵が消えたら、後ろか上から、だよな。
とはいえ、困っているのは、俺の方だ。
ケモミミだろうが、殺したくはないのだ。
そこで、手は打っていたのだが、まだかミチル?
「申し訳ないけど、その手は封じたよ」
セイラの胸を背後からブチ抜き、ランドウが言った。
セイラの胸を、俺が切り落としたはずのランドウの腕が、貫いていた。
ガントレットをつけているのか、昆虫の足じみた黒い金属のような腕。
「システムキーは、返してもらうよ」
その腕が、セイラの胸越しに星海の剣を掴む、と剣は消えた。
いや、形を変えて、ランドウが掴んだのか?
それより、あの能力で、どうして星海の剣だったんだ?
「まさか、龍鱗の剣を消すために、ギルド倉庫を燃やそうとするとは、驚いたよ」
そう、耳にご飯を詰めながら、床に転がるミチルに頼んだのだ。
ギルド倉庫を焼けば、その倉庫に戻した龍鱗の剣も消えるのではないか、と。
「そういうところが、ケイの怖いところだね」
まあ、下手すれば、この街中のジェネラルの装備が使えなくなって、大変なことになるが、仕方がない。
ランドウが腕を振る、とセイラは転がった。
「驚かせてくれた罰は、受けてもらうよ」
それは、俺とセイラ、どちらへ向けて言ったのか。
ランドウが、黒い腕で指を鳴らした。
その腕で、しかもシステムキーとやらを握ったまま、どうやって指を鳴らしたんだ?
なんてツッコム余裕は、実はなかった。
俺の両手から重みが、剣と盾が消えていた。
「きっと、倉庫が使えなくなっても仕方ない、とか思っていたんだろうから、楽しんで」
呼び戻そう、としても、装備は戻ってこなかった。
倉庫が使えなくなった?
「それでは皆様。次回に乞う、ご期待」
一礼をしてランドウは俺に背を向け歩き出した。
おいおい、悪役っぽく消えないのかよ、とも思うが、素手の俺では追えもせず、闇に消えていくのをただ見送った。
ライラとセイラは、見つからなかった。
死んで死体が消えたのだろうか?
ランドウに驚いて、バーを見る余裕がなかったが、セイラのあの傷では、生きてはいないだろう。
ライラも、セイラと戦っている最中にでも、ランドウが止めをさしたのか?
聖剣騒ぎは、セイラの持っていたシステムキーとやらが原因?
それをランドウが取り戻したことで、終わったのか?
じゃあ、ランドウは何をしているんだ?
龍鱗の剣の名前を確認したいが、呼び出せないままだ。
疑問は渦巻くが、ミチルに頼んだ倉庫の放火を、ランドウが邪魔した、と言ったのだ、トラブっているだろうから、急いで向かった。
ギルドは、もう大騒ぎになっていた。
だが、ミチルの放火未遂がバレたわけではなく、倉庫が原因不明で使えない件でだ。
装備も呼び出せないし、倉庫の扉も開かなくなっていた。
回復アイテムも当然使えず、もしモンスターが出たら、素手と魔法で戦うしかない。
ランドウの話をするわけにもいかず、俺は宿に戻った。
すっかり忘れていたが、宿の食堂も壊れていて早速、修理が始まっていた。
明日の朝から、修理をしつつ、営業はするそうだ。
ケモミミのモンスターが暴れた、という認識で、俺たちに責めがなかったが、あの「人」とあまり違わない姿をモンスター、と言われてしまうのは、ジェネラルは「人」なのか、と思う俺にとっては複雑な気持ちだった。
あ、ごめん。
何かしゃべっているようだが、耳に詰めた「ご飯」で聞こえない。
指で、かき出して、
「悪い、聞こえなかった」
相手は、肩を落としたが、
「ライラは、我々の中で最弱だ!」
とりあえず、顔はよく見えないが、知らない高い声で、ランドウではなかったので、安心した。
決め台詞だったのに、繰り返させてしまって、申し訳ない。
「我々の中」ということは、複数なのだろう。
もしかして、聖剣使いの残りが勢ぞろいか?
三聖人とか四天王とか五人衆とか六道王とか七将軍とか八部衆とかか?
人数を確認しよう、と見渡すが、一人だけのようだ。
え?
まさかの二人組?
「我ら、兄弟のように育ったのだ!」
あ、そっちね。
というか、姉妹じゃないんだ?
よく見たら、長髪ではなく垂れた、ウサミミかダックスフントのような耳だった。
邪魔と言うか、人より聴こえ辛くないか?
いや、どれもこれも、差別的発想か?
「星海の剣セイラ、参る」
名前とバーが出た。
こっちは、名乗ってないのに、問答無用かよ。
いや、兄弟同様を縛り上げておいて、話し合いもないか。
星海の剣、どんな能力だ?
流れ星を落とす、メテオストライクだけは止めてくれよ。
思わず見上げた夜空から、星が消えた。
星だけでなく、セイラも、いやほとんど何も見えない。
人の輪郭のようなものが揺らぎ、ガサガサ擦れるような音、焦げた匂いが強くなった。
フィルムの映写機を回すような音が響く。
なんだ?
熱が視えている?
輪郭の腕が動いたように視えた。
布を裂くような音がし、俺の足元から甘い匂いがし、煙のようなものが広がって、セイラの輪郭を消してしまった。
何が起きている?
ガラスを引っかくような音がして、思わず身を竦めた。
強い焦げた匂いがし、煙がかき回され、側で風船のようなものが膨らんだ。
なぜか、その風船に「ほう躱したか」と視えた。
視覚、聴覚、嗅覚が入れ替わっている?
また、ガラスを引っかく音がしたので、大きく飛ぶ。
これは、剣の動きが聞こえてるのか?
じゃあ、始めの輪郭や煙は匂い?
消えたのは、香水でも巻かれたのか?
動きが遅いのは、集中が途切れたら、この能力が解除されるからか?
フィルムのような音は、能力を使うことでバーが減っているのが聞こえてるのか?
なら、距離をとって時間を稼げば、ヒットポイントがなくなるはずだ。
遠くへ逃げよう、として顔面を強打されて、倒れた。
風船が膨らみ「壁にぶつかりにいくとは馬鹿だな」と視えた。
教えてくれて、ありがとう。
動かず、匂いも音もしないものは、よくわからないらしい。
それでも、とにかく立ち上がり、振り向き様、手首から外した鎖を投げた。
絡まる感触がしたので、強く引く。
触覚には影響していないようだ。
「うおっ」
野太い叫びがして、視界が元に戻った。
そこには、剣を持つ手に鎖が巻き付いたセイラが、驚きの表情で立っていた。
「なぜ、ここだとわかった」
「まあ、後ろから来たいだろうな、と思って」
見えてなくても、用心して真正面は避けて、背後から忍び寄るだろう、という単なるカンだ。
正面から敵が消えたら、後ろか上から、だよな。
とはいえ、困っているのは、俺の方だ。
ケモミミだろうが、殺したくはないのだ。
そこで、手は打っていたのだが、まだかミチル?
「申し訳ないけど、その手は封じたよ」
セイラの胸を背後からブチ抜き、ランドウが言った。
セイラの胸を、俺が切り落としたはずのランドウの腕が、貫いていた。
ガントレットをつけているのか、昆虫の足じみた黒い金属のような腕。
「システムキーは、返してもらうよ」
その腕が、セイラの胸越しに星海の剣を掴む、と剣は消えた。
いや、形を変えて、ランドウが掴んだのか?
それより、あの能力で、どうして星海の剣だったんだ?
「まさか、龍鱗の剣を消すために、ギルド倉庫を燃やそうとするとは、驚いたよ」
そう、耳にご飯を詰めながら、床に転がるミチルに頼んだのだ。
ギルド倉庫を焼けば、その倉庫に戻した龍鱗の剣も消えるのではないか、と。
「そういうところが、ケイの怖いところだね」
まあ、下手すれば、この街中のジェネラルの装備が使えなくなって、大変なことになるが、仕方がない。
ランドウが腕を振る、とセイラは転がった。
「驚かせてくれた罰は、受けてもらうよ」
それは、俺とセイラ、どちらへ向けて言ったのか。
ランドウが、黒い腕で指を鳴らした。
その腕で、しかもシステムキーとやらを握ったまま、どうやって指を鳴らしたんだ?
なんてツッコム余裕は、実はなかった。
俺の両手から重みが、剣と盾が消えていた。
「きっと、倉庫が使えなくなっても仕方ない、とか思っていたんだろうから、楽しんで」
呼び戻そう、としても、装備は戻ってこなかった。
倉庫が使えなくなった?
「それでは皆様。次回に乞う、ご期待」
一礼をしてランドウは俺に背を向け歩き出した。
おいおい、悪役っぽく消えないのかよ、とも思うが、素手の俺では追えもせず、闇に消えていくのをただ見送った。
ライラとセイラは、見つからなかった。
死んで死体が消えたのだろうか?
ランドウに驚いて、バーを見る余裕がなかったが、セイラのあの傷では、生きてはいないだろう。
ライラも、セイラと戦っている最中にでも、ランドウが止めをさしたのか?
聖剣騒ぎは、セイラの持っていたシステムキーとやらが原因?
それをランドウが取り戻したことで、終わったのか?
じゃあ、ランドウは何をしているんだ?
龍鱗の剣の名前を確認したいが、呼び出せないままだ。
疑問は渦巻くが、ミチルに頼んだ倉庫の放火を、ランドウが邪魔した、と言ったのだ、トラブっているだろうから、急いで向かった。
ギルドは、もう大騒ぎになっていた。
だが、ミチルの放火未遂がバレたわけではなく、倉庫が原因不明で使えない件でだ。
装備も呼び出せないし、倉庫の扉も開かなくなっていた。
回復アイテムも当然使えず、もしモンスターが出たら、素手と魔法で戦うしかない。
ランドウの話をするわけにもいかず、俺は宿に戻った。
すっかり忘れていたが、宿の食堂も壊れていて早速、修理が始まっていた。
明日の朝から、修理をしつつ、営業はするそうだ。
ケモミミのモンスターが暴れた、という認識で、俺たちに責めがなかったが、あの「人」とあまり違わない姿をモンスター、と言われてしまうのは、ジェネラルは「人」なのか、と思う俺にとっては複雑な気持ちだった。
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