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05&06:食事、どうする?
Aパート
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きっかけは、昼食時の会話だった。
その日は、佐伯さんが出張でいないのと、外が雨だったので、ビル内にあるコンビニで買って、食べることにした。
佐伯さんがいれば、ランチに誘ってくれるのだけど、意外に百目鬼君や山崎さんとも仕事でのスレ違いが多く、一人で食べることが、何度かあった。
百目鬼君は弁当男子で、いつもお弁当を持参している。
山崎さんが、ちょうど出先から戻ってきたので、三人で会議室で食べることにした。
ちなみに、予定が入っていなければ、会議室は開放されていて、食事をしたり、休憩に使ったりできるようになっている。
転職したこの会社には、社員食堂はなく、昼食補助金が出ていた。
一人で食べるのではないので、自分的にちょっとカッコつけて、サンドイッチとショートパスタ入りのスープにした。
自分だけだったら、オニギリに一応小さ目のカップラーメンにしたりしていた。
綺麗になる?
痩せる?
その前に、お仕事をしなければいけないのだ。
空腹は、お仕事の敵だ。
「相変わらず、味気ない弁当」
お豆腐入りで色鮮やかなサラダのパッケージを開けながら、山崎さんが言うので見る、と百目鬼君がプラスチック製のお弁当箱のフタを取ったところだった。
むむ、私が高校生のときのお弁当箱より、小さいんじゃないか?
中身は、豚肉の生姜焼きっぽいのがメインで、ブロッコリーの緑はあるが、見た目が華やかとは言えなかった。
その中でも、
「ご飯、味付けなの?」
全体を茶色い印象にしているのが、茶色いご飯だった。
「白米じゃなくて、玄米なんですよ、これ」
「玄米って、美容系のタレントさんとかが食べてるやつ?」
「タレントがどうかは知らないですけど、食物繊維が多くて、便秘とかにもいいんですよ」
山崎さんが、眉根を寄せた。
「食べてるときに、ソッチの話は止めて」
確かに食事中だ。
だがしかし、便秘にいいとか、興味あるぞ。
「ご飯に混ざっているのは、胡麻?」
「チアシードです。肌にいいし、これも食物繊維が多いんですよ」
ちあしーど?
初めて聞いた言葉だ。
これも便秘によさそうだから後で、ググってみよう。
「お肉、ササミじゃないんだね?」
生姜焼きっぽい豚肉を箸でつまむ百目鬼君に聞く、と彼は首を傾げた。
山崎さんも頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、すぐそれをビックリマークに変えた。
「まさか、鍛えてる人は、ササミしか食べないイメージ?」
はい、その通りです。
「だって、前にテレビで視たもん」
その番組では、ひたすら茹でただけで味もつけないササミを貪っていたのだ。
「ま、まあ、そういう人もいますけど、僕は今、そんなに絞っているわけではないですから。カロリー的にも、PFCバランス的にも範囲内なんですよ」
ぴーえふしー?
「プロテイン、ファット、カーボ」
「つまり、タンパク質、脂質、炭水化物をどうバランス良く食べるか、ということですね」
「ああー、糖質制限とかのこと?」
百目鬼君が目を逸らし、山崎さんが遠い目をした。
「糖質制限、それを盲信した時期もあった」
なんだか、言ってはいけないことを口にしてしまったようだ。
「それ、糖質」
山崎さんが、テーブルに置かれた私のサンドイッチのパンを指さした。
「それも糖質」
プラスチックのフォークですくっていたショートパスタに指を移動させた。
思わずスープに落としたネジネジのパスタが、飛沫を上げる。
「そのトロミも糖質」
会議室が静まりかえった。
山崎さんが咀嚼する、サラダの水菜だろうか、シャクシャクいう音が、響くようだ。
「あの、ショージさん。糖質制限って、何でするか知ってますか?」
えーと、血糖値がどうとかで、
「糖質が、太りやすいからでしょ」
「ぶぶー」
山崎さんの口効果音に苦笑しながら、
「極論を言えば、何を食べても、消費カロリーより、摂取の方が多ければ、体重は増えます。糖質制限は、面倒くさいカロリー計算を諦めて、糖質つまり炭水化物を減らすことで、摂取を減らして痩せよう、という考え方です」
あれ?
なんだか聞いたのと違う。
「糖質を制限すれば、何でも食べていいんじゃない?」
「最近は、錬金術でも等価交換。たくさん摂れば、たくさん体重も増える」
糖質制限って、お肉食べ放題じゃないの?
食べ終わったサンドイッチの空パッケージが目に入る。
できてないけど、糖質制限。
「ショージさん、ご自分が、どのくらい食べたらいいか、知ってますか?」
「腹八分目くらい?」
「ナイスボケ」
「え?」
「え?」
真面目に答えたのに、山崎さんのリアクションの意味がわからない。
山崎さん、驚いてるのに、無表情に目だけを見開くの止めて、怖い。
「ショージさん、基礎代謝って知ってますか?」
「排卵日とかがわかるやつ?」
「それ基礎体温です」
???
アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?
その日は、佐伯さんが出張でいないのと、外が雨だったので、ビル内にあるコンビニで買って、食べることにした。
佐伯さんがいれば、ランチに誘ってくれるのだけど、意外に百目鬼君や山崎さんとも仕事でのスレ違いが多く、一人で食べることが、何度かあった。
百目鬼君は弁当男子で、いつもお弁当を持参している。
山崎さんが、ちょうど出先から戻ってきたので、三人で会議室で食べることにした。
ちなみに、予定が入っていなければ、会議室は開放されていて、食事をしたり、休憩に使ったりできるようになっている。
転職したこの会社には、社員食堂はなく、昼食補助金が出ていた。
一人で食べるのではないので、自分的にちょっとカッコつけて、サンドイッチとショートパスタ入りのスープにした。
自分だけだったら、オニギリに一応小さ目のカップラーメンにしたりしていた。
綺麗になる?
痩せる?
その前に、お仕事をしなければいけないのだ。
空腹は、お仕事の敵だ。
「相変わらず、味気ない弁当」
お豆腐入りで色鮮やかなサラダのパッケージを開けながら、山崎さんが言うので見る、と百目鬼君がプラスチック製のお弁当箱のフタを取ったところだった。
むむ、私が高校生のときのお弁当箱より、小さいんじゃないか?
中身は、豚肉の生姜焼きっぽいのがメインで、ブロッコリーの緑はあるが、見た目が華やかとは言えなかった。
その中でも、
「ご飯、味付けなの?」
全体を茶色い印象にしているのが、茶色いご飯だった。
「白米じゃなくて、玄米なんですよ、これ」
「玄米って、美容系のタレントさんとかが食べてるやつ?」
「タレントがどうかは知らないですけど、食物繊維が多くて、便秘とかにもいいんですよ」
山崎さんが、眉根を寄せた。
「食べてるときに、ソッチの話は止めて」
確かに食事中だ。
だがしかし、便秘にいいとか、興味あるぞ。
「ご飯に混ざっているのは、胡麻?」
「チアシードです。肌にいいし、これも食物繊維が多いんですよ」
ちあしーど?
初めて聞いた言葉だ。
これも便秘によさそうだから後で、ググってみよう。
「お肉、ササミじゃないんだね?」
生姜焼きっぽい豚肉を箸でつまむ百目鬼君に聞く、と彼は首を傾げた。
山崎さんも頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、すぐそれをビックリマークに変えた。
「まさか、鍛えてる人は、ササミしか食べないイメージ?」
はい、その通りです。
「だって、前にテレビで視たもん」
その番組では、ひたすら茹でただけで味もつけないササミを貪っていたのだ。
「ま、まあ、そういう人もいますけど、僕は今、そんなに絞っているわけではないですから。カロリー的にも、PFCバランス的にも範囲内なんですよ」
ぴーえふしー?
「プロテイン、ファット、カーボ」
「つまり、タンパク質、脂質、炭水化物をどうバランス良く食べるか、ということですね」
「ああー、糖質制限とかのこと?」
百目鬼君が目を逸らし、山崎さんが遠い目をした。
「糖質制限、それを盲信した時期もあった」
なんだか、言ってはいけないことを口にしてしまったようだ。
「それ、糖質」
山崎さんが、テーブルに置かれた私のサンドイッチのパンを指さした。
「それも糖質」
プラスチックのフォークですくっていたショートパスタに指を移動させた。
思わずスープに落としたネジネジのパスタが、飛沫を上げる。
「そのトロミも糖質」
会議室が静まりかえった。
山崎さんが咀嚼する、サラダの水菜だろうか、シャクシャクいう音が、響くようだ。
「あの、ショージさん。糖質制限って、何でするか知ってますか?」
えーと、血糖値がどうとかで、
「糖質が、太りやすいからでしょ」
「ぶぶー」
山崎さんの口効果音に苦笑しながら、
「極論を言えば、何を食べても、消費カロリーより、摂取の方が多ければ、体重は増えます。糖質制限は、面倒くさいカロリー計算を諦めて、糖質つまり炭水化物を減らすことで、摂取を減らして痩せよう、という考え方です」
あれ?
なんだか聞いたのと違う。
「糖質を制限すれば、何でも食べていいんじゃない?」
「最近は、錬金術でも等価交換。たくさん摂れば、たくさん体重も増える」
糖質制限って、お肉食べ放題じゃないの?
食べ終わったサンドイッチの空パッケージが目に入る。
できてないけど、糖質制限。
「ショージさん、ご自分が、どのくらい食べたらいいか、知ってますか?」
「腹八分目くらい?」
「ナイスボケ」
「え?」
「え?」
真面目に答えたのに、山崎さんのリアクションの意味がわからない。
山崎さん、驚いてるのに、無表情に目だけを見開くの止めて、怖い。
「ショージさん、基礎代謝って知ってますか?」
「排卵日とかがわかるやつ?」
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???
アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?
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