【1クール終】恋愛で痩せますか?いいえ痩せるならXXX運動です

まみ夜

文字の大きさ
55 / 59
12&13:デート、どうする?

Bパート

しおりを挟む
 なぜか、僕は、映画館で、拙奈さんの隣に座っていた。
 きっかけは、四人で呑んでいる最中に、彼女に届いたラインだった。
 それは、彼女の友人からで、日曜日の映画の約束をキャンセルする連絡だった。
 チケットは、座席指定で購入済で、割引金額なので変更もできない。
 日曜日は、インストラクター仲間は仕事の場合が多く、代わりが見つからなさそう、との話になった。
 先輩は、姉と映画なんて嫌だ、と断固拒否。
 ショージさんは、話題の血まみれホラーだったので、こちらも拒否。
 そこで、僕が生贄、となったのだ。
「カップルばっかりだね」
 チケット代が奢りだ、というので代わりにポップコーンを買ってきて、座るなり言われた。
 ちなみに、山盛りのポップコーンは、彼女のリクエストで、キャラメルとイチゴミルクだ。
 甘党の一家なのだろうか。
 でも、先輩は、半分はチーズとかのショッパイのにしそうだ。
 だから、先輩と比べるのは、止めろ。
 顔が同じでも、別人だ。
 でも、同じ顔が側にいて、ドキドキする。
 気が利いたことも言えないままに、上映開始のブザーが鳴った。

「ほらほら、泣き止んで」
 僕は、映画に感動して、ガン泣きしていた。
 ドロッドロのスプラッターだったのだが、不覚にも、ラストでボロッボロ泣いた。
 それはもう、拙奈さんと周囲が、若干引くほどに。
「だって、だって、ジョニーが、えぐっ」
「うんうん、そうだねー」
 入れ替え制なので、肩を抱かれてロビーに出た。
「顔、洗いにいくのは無理、そうだね」
「じょ、ジョニー。ひぐっ」
 彼女は、僕の背中を摩りながら、
「弟が、いっしょに映画に来たがらなかったのね。中学のときに、同じように泣いたの。ドラえもんだったけど」
 先輩が泣いたのか。
「後で、恥ずかしがって、二度といっしょに映画に行かないって、言われちゃった。泣くのは、恥ずかしいことじゃないのにね」
「・・・いや、恥ずかしいですよ。男としては」
「男とか、関係ないじゃない?」
 僕は、いろいろな恥ずかしさで麻痺していたのか、その言葉に、挑戦的に言った。
「僕、男ですけど、先輩に告白して、フラれました」
 彼女の手がピタリ、と止まった。
「理由は?」
「・・・部下だから、弟というか、家族としか思えない、って」
「それは、仕方ない」
 僕は、顔を上げ、強い目で、彼女を見た。
「仕方ない、ですか?」
「うん」
 彼女は、頷き。
「私だって、弟のことは大好きだけど、家族だもん」
「でも、先輩は?」
「だって弟、馬鹿だもん。気がつかないよ」
 ちょっと、寂しそうに笑って、
「だからって、私に惚れてもダメだぞ。メッキー君も弟みたいにしか、思えないから」
 どうやら僕は、同じ顔の人に、またフラれたらしい。
「呑む?」
「呑みます。顔洗ってきます」
 その代わりに僕は、同じ人を好きになった人と出会えたらしい。

 翌日、僕は二日酔いでギクシャク、と出社した。
 昨日は、先輩への愚痴で盛り上がってしまって、カラオケにまで行ってしまった。
「メッキー、おはよう」
「あ、おはようございます。先輩」
 今朝も先輩は、素敵だ。
 少しだけ、二日酔いが和らいだ気がする。
「あれ?」
「はい?」
 先輩が、心配そうな顔になった。
「昨日、姉さんに連れまわされたんじゃないのかい?」
「ええ、でも、楽しかったですよ」
 彼は、笑顔になった。
 今朝の笑顔も素敵だ。
「そうか。でも、悪口を言ってなかったかい?」
「え、ええ。バレンタインデーのチョコの数で、先輩がお姉さんに勝ったことがないとか」
「それ、母親からのを数に入れたら、勝ってた年、あったんだよ!」
 弟扱いなら、それでもいい。
 姉弟合わせて、身内上等だ。
 先輩がショージさんと付き合った後に、こんな弟分がいて本当に良かった、と先輩たちに、思い知らせてやる。
 それが、この失恋の落とし前だ。
「お姉さん、素敵ですね」
「自慢の家族だよ」

 僕は失恋と同時に、同志と家族を手にいれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...