【1クール終】恋愛で痩せますか?いいえ痩せるならXXX運動です

まみ夜

文字の大きさ
54 / 59
12&13:デート、どうする?

Aパート

しおりを挟む
 僕は、固まってしまった。
 先輩と「同じ顔の女性」を前にして。
 怪訝そうだった先輩は、すぐに僕と気が付いて、笑顔になった。
 笑顔は素敵だが、それも目に入らない。
「なんだ、メッキーか、驚いたよ。どうしたんだい?」
 まさか、先輩が女といるのにムカついて、正体を聞きにきた、とも言えずにいたら、ショージさんが。
「あ、私、部活で使うウェアを買おうと思って。そうしたら、偶然」
「おー、やる気になってるね。いいことだよ」
 ショージさんが倒れたことをかなり気に病んでいた先輩なので、嬉しいのだろう。
 笑顔が素敵だ。
 じゃなくて。
「これ、双子の姉の拙奈(せつな)。二人は、職場の百目鬼君と東海林さん」
「ああ、メッキーって君ね。二人ともはじめまして、拙奈です。弟がいつもお世話になっております」
 丁寧に頭を下げられた。
「すぐ姉ぶって。双子なのに」
「だって、姉だもの」
 よくある誤解の第一位「姉」とわかって、にこやかに挨拶するショージさんとは裏腹に、僕は固まったままだった。

 拙奈さんは、ヨガのインストラクターをやっていて最近、この近くのスポーツジムで教えるようになったそうだ。
 そこで、姉弟で食事でも、となったのだそうだ。
 そして、なぜか僕達も同席していた。
 店は、先輩ご贔屓の看板猫がいるとこだ。
 ショージさんは、サッキーと昨日きて、二日連続らしいが、先輩といっしょなので、嬉しそうだった。
「ダブルデートみたい」
 と小声で呟いていたのが、妙に心に刺さった。
 今日の日替わりは、甘い卵焼きを薄焼きにして、茹でた春雨と海老をチリソースで和えた具を包んだ、生春巻き風だった。
 辛い具と、甘い卵が合う。
 揚げた春雨なのか、カリカリしたものが具に混ざっていて、食感もいい。
 僕は、甘い卵焼き好きの先輩が、どう反応するか、息を潜めて見ていた。
 隣で、ショージさんも同じような表情をしていた。
「うまい!」
 喜ぶ先輩に、息を吐く僕らに、拙奈さんが、吹き出した。
「知ってる?家族で旅行に行ったとき、朝ご飯のスクランブルエッグが甘くないとコーヒー用の砂糖かけて、じゃりじゃり食べてたのよ」
 吹き出すショージさん。
「姉さんだって、コーンポタージュが甘くないからって、砂糖入れてたじゃないか」
「あれは、溶けるからいいのよ」
 仲がいいんだな。
「仲がいいんですね」
「「ぜんぜん」」
 ショージさんは、まったく同じタイミングで返されて、また吹き出した。
 僕は、未だに混乱していた。

「メッキー君は、大人しいのね?」
 呼ばれて、ドキっとした。
 先輩は、ビールを買うために立ち上がったところだったので頭上から、
「上司の肉親には、さすがに緊張するかい?」
 そういう訳では、なくて。
「アーチェリーやってたんでしょ?どれどれ」
 腕を触られて、心臓が止まりかかる。
「まだまだ、いけそうね」
「姉さん、セクハラ」
 笑って、先輩は、笑ってカウンターに向かっていった。
「ごめんなさい。ヨガのインストラクターやってると触ることに躊躇なくって」
「いえいえ、光栄です」
 強がって言う。
「どうして、アーチェリー止めちゃったの?」
「右目を悪くして」
 彼女の表情が曇ったので、
「日常生活には困らないので、大丈夫ですよ」
「でも、ごめんなさい」
 頭を下げられて、好感度が上がる。
 上げた顔で、いたずらっぽく聞いてくる。
「付き合ってる人、いるの?」
 心臓が、止まりかかる。
 隣で、ショージさんが、次に同じ質問されたらどうしよう、と慌てていた。
 それを見て、
「東海林さんは、言わなくても、わかるから」
 ショージさんが固まる。
「あの馬鹿に、気があるんでしょ?」
 ショージさんは、固まりすぎて、無表情になった。
「な、なんで、それ?」
「姉のカンよ、双子の姉の。でも弟、馬鹿だよ?」
 先輩と同じ顔で、でも違う笑顔で、笑う。
「いないところで、悪口は酷いな」
「だって、テストで一度も勝ったことないでしょ?」
 僕は、自分の気持ちが、よくわからなかった。
 ただ、カンが鋭い、という彼女が気がつかないのなら、単なる勘違いだろう、と思っていた。
 先輩と「同じ顔の女性」に、僕が惚れる、だなんて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...