私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

27.空飛ぶお屋敷

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目の前に積み上がるパン、パン、パン。

レーズンパンやナッツパン、あんこの入ったパンなど、色んなパンが邸のキッチンへと集められ、山となっている。

「「「ごめんなさい……」」」

ホームベーカリーでのパン作りに夢中になってしまった子供達が、村中のホームベーカリーを使用して食パンを焼いてしまったからだ。

そしてこの大量の食パンを前に大反省して項垂れている。

「まったくあなた達はっ いくら楽しくても、食べ物で遊んではいけません!」

イヴリンさんは激オコである。

「まぁまぁ。やっちゃったものは仕様がないですし、パンは冷凍保存も出来ますから、イヴリンさんもそんなに怒らず……」
「カナデ様、冷凍保存しても、永遠に保つわけではないのですよ。今回リッチモンド様達が連れて来られるても人数は限られているでしょうし……。こんなに大量のパン、本当にどうしましょう……」
「ど、ドラゴン姿のリッチモンドさんならすぐ食べちゃいそうですし、大丈夫ですよ!」

大丈夫、大丈夫とイヴリンさんを宥めて、パン工場のように良い匂いが充満するキッチンを眺める。
床に綺麗な布を敷き、床までパンで埋もれている。

夜ご飯、もう作っちゃったけど、パンとこの夜ご飯のどっちを優先すればいいのか……。


『カナデよ。帰ったぞ』


困っていたその時、邸の外からリッチモンドさんの声が聞こえてきた。

「あっ おじいちゃんが帰って来ました!!」
「おじいちゃん、帰って来た」
「おじいちゃんっ お帰りなさーい!!」

説教に耐えきれなくなった子供達が、逃げるようにキッチンの扉から外へ駆けて行った。

「まぁっ あの子達ったら!」
「あはは……。子供を連れ帰ると行っていたので、きっとお友達が沢山できるとはしゃいでるんですよ」
「そうですね……。カナデ様、私達も行きましょう。きっと衰弱しているでしょうし、スポーツ飲料水を飲ませてあげないといけませんもの」

と、イヴリンさんと共に外に出ようとした時、子供達とローガンさん達の絶叫が聞こえたのだ。

「!? 何かあったんでしょうかっ」
「とにかく行ってみましょう!」

慌てて外に出ると、皆が口を開けて空を見上げているではないか。

そしてなぜか、ドラゴン姿のリッチモンドさんがバッサバッサ羽を動かし、未だに空を飛んでいる。

「リッチモンドさん? どうして降りて来ないんですか?」
『カナデよ。これを中に入れる事を許可してくれ』

これ?

「か、カナデ様!! あれを……っ リッチモンド様の後ろをご覧下さい!!」

子供達同様、悲鳴のような声を上げるイヴリンさんに驚いたが、指差す方に視線を移すと………………、


巨大なお屋敷が空に浮かんでいたのだ!!!


「お、お、お、お屋敷が、浮いているゥゥ!!!?」
『カナデよ、早く結界内に入れてくれぬか?』

あまりの驚きに唖然として固まっていた為、リッチモンドさんの声にハッとする。

「す、すいませんっ どうぞお入り下さい!!」

許可すれば、ドラゴン姿のリッチモンドさんが、お屋敷と共に村へと降り立った。

私のおウチ様が大谷美術館のような洋館なら、リッチモンドさんが持ってきた巨大なお屋敷は、イギリスのバッキンガムシャー州に建つ、あのカントリーハウスホテル、ハートウェルハウスのような建物だった。

そんなものが、今、村の真ん中にドンと建っているのだ。
周りは日本の一般的な一戸建ての住宅が建っているわけで、違和感がすごい。

「カナデ、大きなものを持って帰ってきてしまった。すまないな」

すぐに人化したリッチモンドさんは、そう言ってお屋敷を見る。

「あの、あれは一体……「おじいちゃんお帰りなさい!」」

動揺していると、子供達がリッチモンドさんに抱きつき、あれは何? と質問してくれたので聞き耳を立てる。

「うむ。あれにスラムの者達を入れて、ここに連れて来たのだ」
「「「「「「「はい??」」」」」」」

ちょっと、リッチモンドさんが何を言ってるのか分からない。

「カナデ様、皆、只今戻りました」
「レオさん!? お帰りなさい。今、あのお屋敷から出てきましたよね!?」

注目の的であるお屋敷の中から出てきたレオさんが、亜人族の街であった事を簡単に説明してくれ、概要はなんとなく理解したが、何故お屋敷ごと持って帰ってきてのか……。

「カナデが前に教えてくれた浮遊魔法を使ったのだ」
「へ?」
「ほら、前に言っておっただろう。わしは飛べるから浮遊魔法は必要ないと言ったら、カナデが、浮遊魔法を物にかける事は出来ぬのか、と」
「ああ、確かに言いました」

あれは、リッチモンドさんと魔法の勉強をしている時だったっけ。

リッチモンドさんって、どんな魔法でも使えるのに、偶にこの世界の固定概念に囚われていて、勿体ないんだよね。
浮遊魔法も、自分にかけるだけだと思い込んでたから、他にもかけられないか聞いたんだ。

「今回助けた者の数が多すぎてな。わしの背に乗れる数も限られているだろう。だから、建物に入ってもらって、それを浮遊させれば一気に全員連れて来られると考えたのだ」
「なるほど! だから空飛ぶお屋敷になったんですね!」

納得していたら、お屋敷の中から恐る恐るこちらを見ている人達に気付く。

「リッチモンドさん、レオさん、とりあえずこれから連れて来た人達にスポーツ飲料水を飲んでもらうので、お屋敷の中から出てきてもらっても良いですか」
「畏まりました。屋敷から出るよう伝えてきます」

レオさんがお屋敷の中へ戻って行く後ろ姿を眺めつつ、このお屋敷、この後どうするんだろう……。とチラリとリッチモンドさんに目を向ける。
すると彼は、子供達にヒーローを見るような目で見られて笑っていたのだ。


こうして、亜人族の街にあるスラムの人達が、空飛ぶお屋敷で村にやって来たのである。

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