私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

30.独りぼっちの彼

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リッチモンドさんが照れるという貴重な姿を見る事が出来、何だか得した気分だ。

あの後、若いリッチモンドさんと村を散歩していたら、彼はおば様から若い女性まで、独身既婚問わず、黄色い声を上げられていた。

こんなに格好良いんだから、格好良いとか素敵とか、さっきのように散々言われてきたんじゃないかと思うのだけど、私のような普通顔の女にもあんな風に照れてくれたかと思うと、何だか胸がキュンとして嬉しくなった。

「カナデ、少し村が拡がったな」
「そういえば、そうですね。100戸位建ってると思っていたけど、150戸はあるかも……。村が拡がる場合は、家も初期のタイプじゃなくて進化バージョンで建つんだぁ……。あ、そういえば、街から持ってきたあの立派なお屋敷は何処に行ったんですか?」

寝て起きたら無くなっていたからびっくりしたんだよね。

「ん? ああ、あれは……森に捨ててきたぞ」
「え!?」
「スラムの者は、あの建物にあまり良い思い出が無かったからな。森の入口付近に置いて、魔物が棲み着かぬよう結界を張っておいた。森に迷い込んだ運の良い者の避難場所になるだろう」

それ、捨てたんじゃなくて避難所を作ったんじゃ……。

「こまめに見回ろうと思っているがな」
「リッチモンドさんって、どうしてそんなに優しいんですか?」

この人は、いつも誰かの為に行動してる。

元々王様だって言ってたから、民の為に生きるっていうのが染み付いてるのかな?? 

「優しい……?」
「はい。だって貴方は、いつも誰かに寄り添おうとしています。
虐待されていた子供達には、過去の事を無理矢理聞き出すでもなく、孫として可愛いがって。あの子達が将来困らないように教育を受けさせたり、レオさんだって、最初ここに来た時は追い詰められてるみたいに切羽詰まっていたのに、ずっと付きっきりで……いつの間にか笑うようになってた」

スラムの人を救いたいと言い出したのもリッチモンドさんだ。

「優しいのはカナデ、お前だ」
「へ?」

私はただ、皆が言った事をやってるだけなのに?

「わしは、カナデに家族として受け入れられたから今があるのだ。カナデが居なければ、今頃野垂れ死んでいただろう」
「リッチモンドさんが、野垂れ死ぬ……?」

その言葉に呆然としていたら、リッチモンドさんが「こっちへおいで」と私の手を引いて、村の端に置いてあるベンチに座らせた。

このベンチは、バーモントさんが休憩用に作ってくれたものだ。

「わしはな、ドラゴンの国を追い出されたのだ」
「え……」

隣にに腰掛けたリッチモンドさんは、自分がここにやって来た理由をゆっくり語りだした。

「昔、ドラゴンはその数の少なさから、絶滅寸前の種族であった。数を減らしたのは、ドラゴンの性質が問題でな……。群れるのを嫌い、好き勝手に生きる。何処にいるかもわからぬものだから、ドラゴン同士で番うこともままならぬ。しかも、人間を下等種と見下している者が多く、他種族と交わる事もせぬ。その結果が絶滅危惧種だ」
「リッチモンドさんは、ドラゴンを増やす為に国を創ったんですね」
「そうだ。国を創れば仲間が集まり、その中から番うものもあるだろう。そう思った。そうして数百年で、ドラゴンは数を増やしたのだ」

リッチモンドさんも、奥さんや子供が居たのだろうか……。

彼の美しい横顔を眺めながら考える。

こんなに素敵な人だもんなぁ。そりゃ居るよね。

そう思うと何でか、きゅっと喉が締め付けられて、息が詰まるような気がした。

「わしは力の強いドラゴンだった。だから王として、皆が認めてくれていたし、民の為に尽力してきたつもりでいた」
「リッチモンドさんは、本当に良い王様だったんだろうなって、素人の私から見ても分かります」

そう伝えると、リッチモンドさんは優しいし眼差しをして微笑んだ。

だけど、それはどこか寂しげな笑顔だった……。

「ドラゴンは、弱肉強食なのだ」

元々の性質の事を言っているのだろう。
たとえ国を創ったとしても、根底にあるものは変わらないのだと彼は言った。

「年老いて力が劣ると、王を退くようにと進言くる若いドラゴンが増え始めてな……。わしを支えてくれていたドラゴンも引退し、いつの間にか周りは、わしを邪魔だと思う者で溢れていたよ」
「そんな……っ」

リッチモンドさんが、邪魔なわけない!
こんなに皆の事を思って行動している人が、どうして邪魔なの!?

「お前はもう、この国に必要ない老いぼれだと……、国を追われたわしは、逃げるように魔の森へとやって来た。生きる気力も無かったのでな……」
「じゃあ、私達が初めて会った時、リッチモンドさんは死ぬ気だったの……?」
「……十分、生きた」

そんな……、そんな悲しい事言わないで……っ

「家族は? リッチモンドさんの家族は、生きて欲しいって思ってるはずだよ!」

けれど、リッチモンドさんは私の言葉に首を横に振った。

「わしに家族はいないのだ」
「え、」


「わしはな、普通のドラゴンよりも魔力が大きすぎてな。子を作るような行為をすれば、相手は魔力に耐えきれず、死んでしまうのだよ」


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