継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 オリヴァーの婚約者選び3 〜

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真っ赤な顔をして、わたくしを見る皇女殿下に戸惑っていると、皇后様がぷっと吹き出した。

「おほほっ、イザベル様、エリザはあなたの開発した組立式模型が大好きなの。だから、模型を開発したあなたの大ファンで、ずっと会いたいって言っていたのよ」
「お、お母様! そんな恥ずかしいことを女神様の前で言わないでください!」
「あらぁ、緊張して何も話せないエリザの代わりにアタシが言ってあげたんじゃない。感謝なさいよ」
「あぅぅ~……」

皇女殿下は皇后様に組立模型を好きな事を暴露され、恥ずかしいのか真っ赤になって俯いてしまった。

可愛らしい皇女様だわ。

「組立式模型がお好きなのは、皇帝陛下と同じですね」
「は、はいっ、お父様とは、たまに一緒に作ったりしています」
「まぁ、それは素敵ですわね!」
「っ……あ、あの!」

皇女殿下はお顔を真っ赤にしたまま、声を振り絞る。

「はい?」
「あ、握手っ、してください!!」
「はい。よろしくお願いしますわ。皇女殿下」

握手と言われたので手を差し出すと、皇女殿下は両手でわたくしの手を握り、目を輝かせながらも頬を真っ赤に染め、嬉しそうに握手をしていた。

その後、皇后様と他の方に挨拶に行かれたのだけど、遠くから、「お母様! 今日は連れて来ていただきありがとうございます!」と元気なお声が聞こえてきて、頬が緩んでしまいましたわ。

「ベル、そろそろオリヴァーに話を聞きに行こうか」

ご令嬢との会話中は少し離れていたテオ様が、皇女様が去っていってから近づいて来た。

幼女でもダメみたいなのよね……。女性全般が苦手みたい。

「そうですわね。ノアはどこかしら……」

ブルちゃんとお話しした後に、お父様が連れて行ったのだけど……。

「ノアならば、先程の女児と、聖女とであちらの隅へ行って遊んでいる」

テオ様が教えてくれた方を見ると、ニコニコ……いえ、デレデレとしたお父様の目線の先で、三人がテディで遊んでいる光景が目に入ってきた。

「ノアちゃん、フロちゃん、わたし、テディのリリちゃんでしゅ。よろちくね」
「リリちゃん、ノアです。よろちく、おねがいちましゅ!」
「ふりょ! よーちくぅ、ましゅ!」

あらあら、ブルちゃんはテディで挨拶すると、もじもじせずに喋れるのね。
ノアはブルちゃんの喋りにつられているわ。可愛い!
フロちゃんもよろしくお願いしますが言えるようになったのね。

「フフッ、可愛い」
「ベル、ノアは義父上にお任せしよう」
「そうですわね」

初孫のお世話を邪魔するわけにはいきませんものね。

「テオ様、オリヴァーの所へ行きましょう」
「ああ」

弟がいる所へ移動すれば、小さなご令嬢に囲まれ、苦笑いを浮かべるオリヴァーの姿があった。

まぁ、我が弟ながら大人気ですわ。

お母様に似た中性的な外見のお陰もあるだろう。
小さな女の子たちからしてみれば、威圧的ではないオリヴァーは近付きやすいのかもしれない。

「ご歓談中申し訳ありませんわ」

テオ様が離れて行こうとするので、腕を組んでそれを止め、華やかな少女たちに謝罪をしてからオリヴァーを呼べば、少女たちはわたくしの姿を見た途端、「イザベルさま!」「めがみさま!」と騒ぎ出したのでぎょっとする。

何なんですの!?

「お姉様っ、あちらへ行きましょう!」

ご令嬢たちの輪から抜け出したオリヴァーが、足早に会場のバルコニーを指差しながら、さっさと行ってしまうので、「皆様、ごきげんよう」と挨拶をしてからバルコニーへと向かったのだ。

「オリヴァー、ちょっとお待ちなさいっ」

テオ様と共に追いかけると、バルコニーに出た途端、

「はぁ~……お姉様、お義兄様、助かりました。ありがとうございます」

そう言ってバルコニーの手すりに、もたれ掛かり、はぁともう一度溜め息を吐く弟の姿に呆れた。

「オリヴァー、気になるご令嬢は居たかしら?」
「お姉様、さっきのを見たでしょう? 全員子供ですよ。それで気になる令嬢がいたら変態ですからね!」
「まぁ、そうですわね……」

チラリとテオ様を見れば、ゴホンッと咳をするものだから、笑ってしまいそうになりましたわ。

「オリヴァー、今は接点を作るぐらいで十分だ。君はまだ若いからな。少しずつ交流を持って、時間をかけて婚約者を決めれば良い」
「さすがお義兄様! そうですよね。お義兄様も最初の結婚は20代後半でしたもんね!」

オリヴァー、そこには触れないであげて。
テオ様のトラウマなのよ。

「そういえば、皇女殿下は組立式模型が好きなのですって。ああいった集中力を要することがお好きなら、研究者気質のあなたとも話が合いそうでしたわよ」
「お姉様、貧乏伯爵家の僕に皇女と交流を持てと!? どんな無茶振りですか!」

あなたもう、貧乏伯爵家ではないでしょう。
まったく……お互い貧乏性が抜けないですわね。

増々呆れてしまい、溜め息が出たその時、テオ様がオリヴァーを諭したのだ。

「オリヴァー、君は皇女も妻に迎える事が出来るほどの立場なのだ。もし仮に、君が何の考えもなく他国から妻を迎えたとしよう。他国にシモンズが秘匿とする新素材の製造方法が流出し、最悪戦争が起こるかもしれない。分かるか? 君の婚姻一つで、そのような大事になるかもしれない事を忘れてはならない」
「っ……はい。お義兄様……」

蒼白となった弟の顔色を見て、「大丈夫ですわ」とオリヴァーとテオ様に微笑む。

「オリヴァーは愚かな子ではありませんもの」

たった14歳ですから、婚約者選びと言われても戸惑いしかないかもしれませんが、皇女様やブルちゃん、フロちゃんと素敵な令嬢は沢山おりますわ。
彼女たちが成長すれば、自ずと気になってくるでしょうし、わたくしたち大人は、子供たちが正しい道を進めるようにだけ、少し手助けしてあげれば良いのですもの。

「お姉様……っ、僕は、お姉様とお義兄様のような関係の夫婦になりたいです!」

え? どうしたの、突然。

テオ様を見ると、「ふむ……。そうなるには、まずは交流を深める事が大事だ。私はベルと運命の出会いをしたが、交流を深める事で互いを知り、愛が芽生えたのだからな」などとしれっと口にしているが、わたくしたちの始まりは、仮面夫婦ですわよ。

「はい! お義兄様、僕、頑張ります!」

えぇ……。

オリヴァーの婚約者探しは、なかなか難しそうだわ、と心の中で思ったけれど、男同士の話には口は挟むまいと、わたくしはそっとバルコニーを離れ、天使たちの所へと移動したのだった。

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