9 / 587
ヤクザじゃなくてオカンだった
しおりを挟むロードを追い出そうと日々奮闘しているが、図々しさキングなこのオッサンは、頑なに出ていこうとはせず1週間が過ぎてしまった。
毎日温泉に入っているせいか、ロードの肌や髪がツヤツヤしてきていて気持ち悪い。見た目がガチムチマッチョヤクザなので気持ち悪さが倍増する。
掃除、洗濯、料理等の家事全般は、私の能力だと一瞬で終わらせてしまえるのだが、ロードの前でそれをやるとまた色々追及されてしまうので、自らの手で行わなくてはならなくなった。
本当に面倒臭くて嫌になる。
しかも料理が下手なので、初日に出した晩御飯を最後にロードが作るようになった。マッチョヤクザのクセに料理が上手いとはどういう事か。
掃除や洗濯は私がしているが、ロードが居ない所では能力を使っている。面倒な事はやってられないのだ。
ロードはそういう時何をしているかというと、剣を持って素振りをしたり、腕立て伏せやスクワットをしたりと鍛練している。
その後は畑で野菜を収穫して保管庫へ運ぶ作業をし、それが終われば私の監視をするのがどうやら日課のようだ。
監視とは言っても、一日中じっと見られているわけではないのであまり気にならない。むしろこちらの世界の美味しいご飯を味わえるのでラッキーだ。
ちなみに野菜畑は、ロードがご飯を作ると言い出した時に急遽、この世界でよく食べられる野菜を収穫出来るよう、薬草畑の側に作った。さも前からありましたよ、というように。
合わせて保管庫も増設した。勿論気づかれないように私の能力を使ってね。
調味料畑はさすがに見られるわけにはいかないので、私以外には見えなくなるよう結界を張った。
家の中にある不思議な道具類は、私が魔道具製作をしているのだと説明しておいた。
その際ぎょっとした表情をされたが、特に何も言われなかったので魔道具は存在するのだろう。
しかしロードは本当にここに居着いてしまった。妙に気が利くので、1週間経った今ではさっさと帰れとも言い辛くなってきている。別に餌付けされたわけではない。
私は1人で暮らしたいのだ。心を鬼にして追い出さなくては!
「ミヤビ~。昼飯できだぞー」
キッチンから美味しい匂いとロードの声が聞こえてくる。
あ~今日も良い匂い。食欲をそそるなぁ。
じゅるりと出てくるヨダレを拭い、寝転んでいたリビングのソファから立ち上がる。
「今日のお昼は何ですかー?」
キッチンへ向かいながらロードへ声をかければ、すぐに答えが帰ってきた。
「今日は野菜をたっぷり使ったスープと、ヤコウ鳥の肉と卵を使った炒め物に、焼きたてのパンだぜぇ」
「おーっ 美味しそう!」
ダイニングテーブルの席につくと、机の上に並べられた料理に目が輝く。
ヤコウ鳥とかいう鳥はこの森に結構いるらしく、魔物とはまた違う、ただのデカイ鳥らしい。
ロードは出会った時にあげた魔物避けのお守りを持って狩りに行き、ヤコウ鳥を狩ってきたのだ。しかもそれを素早く解体し、下処理をして料理に使っている。
そしてこのヤコウ鳥、絶品だ!
肉厚なのに柔らかくて臭みが全くない。癖もない味でさっぱりしている。今や私の好物になっている。
「おめぇ、ヤコウ鳥好きだろう。沢山作ったからたんと食え」
「やったー! いっただっきまーす!!」
手を合わせてから食べ始める。
ロードの作る料理は本当に美味しい。野菜たっぷりスープも、ヤコウ鳥の鶏ガラと野菜を煮込んで出汁をとっているのだろう。最高だ。もう一手間加えると絶品ラーメンのスープにもできそうな気がする。
パンも焼きたてで、外はパリっとしているのに中はふっくらもちもちである。
ヤコウ鳥の肉と卵の炒め物を乗せて食べると美味しすぎ!
「はぁ~幸せ~」
「ククッ飯ぐれぇで大げさだねぇ」
優しい眼差しで見つめられて、つい呼んでしまいそうになった。
“オカン”と。
174
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜
タイトルちょっと変更しました。
政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。
それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。
なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。
そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。
そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。
このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう!
そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。
絶望した私は、初めて夫に反抗した。
私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……?
そして新たに私の前に現れた5人の男性。
宮廷に出入りする化粧師。
新進気鋭の若手魔法絵師。
王弟の子息の魔塔の賢者。
工房長の孫の絵の具職人。
引退した元第一騎士団長。
何故か彼らに口説かれだした私。
このまま自立?再構築?
どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい!
コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
捨てられ聖女は、王太子殿下の契約花嫁。彼の呪いを解けるのは、わたしだけでした。
鷹凪きら
恋愛
「力を失いかけた聖女を、いつまでも生かしておくと思ったか?」
聖女の力を使い果たしたヴェータ国の王女シェラは、王となった兄から廃棄宣告を受ける。
死を覚悟したが、一人の男によって強引に連れ去られたことにより、命を繋ぎとめた。
シェラをさらったのは、敵国であるアレストリアの王太子ルディオ。
「君が生きたいと願うなら、ひとつだけ方法がある」
それは彼と結婚し、敵国アレストリアの王太子妃となること。
生き延びるために、シェラは提案を受け入れる。
これは互いの利益のための契約結婚。
初めから分かっていたはずなのに、彼の優しさに惹かれていってしまう。
しかしある事件をきっかけに、ルディオはシェラと距離をとり始めて……?
……分かりました。
この際ですから、いっそあたって砕けてみましょう。
夫を好きになったっていいですよね?
シェラはひっそりと決意を固める。
彼が恐ろしい呪いを抱えているとも知らずに……
※『ネコ科王子の手なずけ方』シリーズの三作目、王太子編となります。
主人公が変わっているので、単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる