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理性って大事だとしみじみ思う
しおりを挟む「あの、お話があるんですよね?」
「どうしても今さっきの事を忘れてほしいんだね」
あの扉との戦いは無かった事にしてくれるのが紳士というものだろう。
王様はニコリと笑って、キョロキョロと周りを見渡し、木で出来た粗末な椅子を手にとって私達の前にちょこんと座った。ちなみに私達は同じく木で出来た、ソファと言ってもいいのか迷うのだが、そんな感じの物に座っている。
ソファと粗末な椅子…これは失礼な事ではないかと冷や汗が出てきた。
「あー…こちらに座っていただいた方が…」
「とんでもない。命の恩人である貴女に気をつかわせてしまうなんて申し訳ない。それに、突然の訪問で驚かせてしまったね」
「あ、いえ…」
何か腰が低い人だった!
国王だよね? 国王って頭下げたりしちゃダメなんだよね? いいの? これ普通に頭下げちゃってますよ。
「…陛下、要件だけ言ってさっさと帰ってくれ」
「あ~すまないなロード。私は君に殺されても文句が言えない事をしているしな…」
え?どういう事??
さっきから国王とは思えない態度でロードが接してるんだけど、理由があるの?殺されるって…
訳がわからなくてヴェリウスを見ると、頷かれた。
んん?
『ミヤビ様、“つがい”の事はお聞きになったかと思いますが』
「それは聞いたけど、それと殺す殺さないって物騒な話とどう繋がるのか…?」
首を傾げれば、王様に「そういえば、貴女は人族では無かったか」と納得された。余計分からない。
『人族の男からつがい認定された異性は、それはもう溺愛されるのです』
「つがいを見つけた人族の男側からするとね、それはもう何よりも可愛いし、美人だし、宝物みたいに光輝いて見えるんだよね。だから欲しくてたまらない上、閉じ込めてしまいたくなる」
ヴェリウスの後に極上の笑顔で恐ろしい事を言ってのける王様に愕然とした。
「人族のつがいへの本能って本当に恐ろしいものでね、そのせいで国が滅びた事もあったそうだよ」
『確か奥方を拐かされた人族の王が、拐かしたとされる他国に単身攻めいって滅ぼしたという話もありましたよ』
怖っ 何その話!? 人族最強説が出来上がるぞ!
『人族の愛に狂う様は、他種族から見れば恐ろしくも羨ましい事だと言われています。人族の男性は他種族の女性から人気があるようですし』
「人気があってもつがいでない限り、相手はしないし出来ないけどね」
成る程。つがいに対して人族の男性はかなり執着してしまうと。逆に、人族の女性はどうなんだろうか?
「人族であれば、“つがい”は絶対だからね。女性であっても変わらないよ。まず、つがいは基本的に一方通行ではないんだ。こっちがつがいだと感じたら、相手もそう感じているって事」
そうなると、片方が他種族だった場合は…?
「ロードと貴女がそうであるように、人族と他種族のつがいというのは稀にあるみたいでね。人族の女性程ではないけれど、相手を拒否出来ない位には惹かれるそうだよ。覚えがないかな?例えば今の状態とか…」
王様にそう言われ、いつの間にかロードの膝の上に座らされている自分にハッとする。
そう言われればこんな風に抱き込まれる事がよくあるが、特に嫌だと思った事はない。何という事だ!!!
つがいとは所謂“魅了”の魔法に近いものなのでは!?
解除!! 魅了解除!!
……変わらねー!! なんも変わらねー!! 魅了じゃないの!?
『ミヤビ様、“つがい”とは魅了の魔法とは違いますよ』
「え゛…」
何故魅了を解除していた事がヴェリウスにバレたのかはわからないが、魅了の魔法ではないと分かったのでよしとしよう。
「やっかいだよね。けれど、つがいが現れてしまえば人族は今のロードのように、異性を自身のつがいに近付ける事をよしとしない。独占欲というのかな。それが過剰になりすぎて殺人衝動が抑えられなくなってしまう。出会って間もないつがいにはよくある事だね」
『うかつにもそういったつがいに声をかけて殺された者も多数いるそうですよ』
よくある事で沢山殺されてるの!?
人族ヤベェ…怖すぎる。
「今のロードはよく理性が働いている方だと思うよ。私のようにつがいがまだ子供だというなら分かるけど…」
王様の言葉に引っ掛かりを覚えた。
何だって? つがいがまだ子供って言った?
「あの、陛下のつがいはまだ成人していないと…?」
「そうだよ。まだ6つなんだ」
ロリコンかよォォォ!!!
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