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第三章
ロードのお弁当とにゃんこヤンキー
しおりを挟む「体調はどうかな?」
美味しさにうっとりしていたにゃんこヤンキーは、私の声にハッとして自身の身体を見る。「え? え?」と言いながら、徐々に表情が驚愕に変わっていく。
「身体のダルさも重さもなくなってる!? えぇ!? 何これっ」
自身の身体から私達に目線を移し騒ぎだす。しかし、グゥゥゥと先程よりも大きな音が鳴り「腹…へったぁ~…」と、空腹だけは体力回復薬ではどうにもならなかったのかへたりこんだ。
「元気そうだし、昼食にしようか」
そう声を掛けると、眉をハの字にして見上げられた。
「オレ、飯食う金持ってねぇから…」
言ってから俯き、耳を倒し空腹を耐える姿は健気で気の毒だ。
「(ロードが張り切って)作りすぎたお弁当だし、食べきれないから食べてって言ってるの。お金はいらないよ」
アイテムバッグから重箱5段重ねとヴェリウス用のお弁当を取り出し、にゃんこヤンキーの目の前に広げていく。
「お~美味しそう!! めちゃくちゃ気合い入ってるね。このお弁当」
『本当にな。あやつは昨夜帰ってきてからすこぶる機嫌が良かったからな…』
そんな話をしながら、1人と1匹が私をチラ見して目線をお弁当に移したので、心を無にする。
にゃんこヤンキーはヨダレを垂らしながら、並べたお弁当を凝視してお腹を鳴らしている。
「みーちゃんお茶くださ~い」
トモコの声に、そういえば出してなかったなと思い出し、コップと冷えた麦茶の入ったポットを出す。
お弁当に夢中なにゃんこヤンキーは、アイテムバッグに注目していない為隠さずどんどん出せるから楽だ。
女子力が高いトモコは、取り皿やフォークをそれぞれの前に並べてコップにお茶を注いでいる。流石です。
勿論ヴェリウスには取り皿やフォークは無い。ワンちゃんだしね。
すっかりピクニック気分だが、実はここ、周りを家に囲まれた路地裏の一角である。人通りが無いのでまぁ良いかと落ち着いているのだ。
「それじゃあ食べようか」
決してピクニックするような環境ではないが、皆それには文句も言わずにただ一点(お弁当)を見つめている。
「ほ、本当に食べて良いのか? 後でお金を請求したりしないだろうな?!」
疑ってくるが、口からはヨダレが溢れているぞ。
「そんな事しないって」
1つだが自作薬の消費にも貢献してくれたしね。
「じゃ、いただきまーす」
『「いただきます」』
習慣が染み付いているのだろうか、食べ始めの挨拶をして手を合わせると、トモコとヴェリウスがそれを繰り返した。
にゃんこヤンキーが驚き、戸惑いながらも真似をするので素直だなぁと思いつつ食べ始めたのだ。
皆の様子を伺いつつ恐る恐る食べ始めた彼は、すぐにお弁当に夢中になった。「美味ぇ!!」と取り皿も使わずお弁当箱を持ってマンガのようにガツガツ食べているので、ロードのお弁当は美味しいよね~と誇らしくなる。
しかし喉に詰まらせそうでソワソワするな。
「はぁ~美味かったぁ!! こんな美味い飯、生まれて始めて食ったぜぇ~」
パンパンになったお腹をさすりながらそんな感想をこぼすにゃんこヤンキーに、そうだろう。そうだろうと頷く。
何しろ天才料理人(※騎士です)が気合いを入れて作った料理なのだ。そんじょそこらの料理とは格が違うのだよ。
「だよね~。やっぱりシェフ(※騎士です)のお弁当は最高だわ!」
『あやつの料理の腕だけは褒めるにあたいするな(※ヴェリウスのお弁当は生肉を並べてあっただけです)』
口々にウチのシェフ(※騎士です)を褒めるので深く頷く。するとにゃんこヤンキーが顔を青ざめさせて後退した。
「ま、さか…アンタら、人族の貴族、か…?」
今にもまた逃げ出しそうで、貴族ではないと即否定したがなかなか信じてもらえない。何故なら…
「アンタはまぁ、貴族には見えねぇけど……そっちの姉ちゃんは、顔を隠していても分かる程美人だろ。しかも喋る魔獣を連れてるし…」
と、私を見た後トモコを見て言うのでイラッとした。
「美人ってのは貴族に多いし、シェフなんて一般人には雇えねぇからな」
彼の説明が私の心を抉るのだ。
「本当に貴族じゃないから安心して。シェフはみーちゃんの旦那さんだから、雇ったシェフじゃないんだよ」
トモコがでっち上げやがった。
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