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第三章
ドラゴンの移動とうっかりミス
しおりを挟む「それはすぐにでも移動しないとダメだね。ただ、その前にドラゴン達の生態に合わせた浮島を創った方が良いと思うんだけど…」
今の浮島は遊び場を中心としているので、ドラゴンが暮らすのは難しいかもしれないと1人と1匹を見る。
『そうですね。天空神殿はミヤビ様のもうひとつの神域ですから、魔素は十分でしょう。他は普通の森、普通の火山、普通の海や湖、河川などの水場があればよろしいかと。そこに兎や猪、魚等の普通にその環境にいる生物が存在すればドラゴン達にとっては楽園となります』
ヴェリウスさん、やけに普通を強調してないですか?
「ならかなり大きな浮島になるから、地上が浮島の影で覆われないように結界を張って、火山や森等のエリアを分けた方がいいかな? 」
「ドラゴンちゃん達にも種類がありますので、住み分けが出来るようにしていただければ嬉しいですわ」
今回はドラゴンの子供の為にも急ぐので、“世界創造”の能力を使い、頭の中で言われた通りに浮島を創っていく。
後はエリアごとに四季を創り、さらに細かくその四季ごとにエリアを分けた方が良いかもしれない。火竜は火山があるから良いが、氷竜とかいたら寒い所でないと暮らせないかもしれないし、水竜はどの季節が住みやすいのかもわからない。
この“世界創造”は世界と生命を創り出す能力だ。勿論動物も創れてしまう。そして人間や神までも…。まぁそこまで創る気はないのだが。
「浮島は出来たから、後はドラゴンしか出入り出来ないように設定して…はい。出来ました」
頭の中で創った浮島が天空神殿のそばに浮かんだ光景を確認すれば、ランタンさんはキョトンとこちらを見ているので首を傾げる。
「ランタンさん?」
「いえ、あの…“出来た”とは?」
「? ドラゴン達の為の浮島が出来たんだけど、何か変な事言ったかな?」
何故か口をパクパクさせているランタンにヴェリウスが話しかけた。
『ランタンよ、ミヤビ様は神王様だ。この世界のどこからでも創造は出来る』
「そ、そうだわよね…」
動揺して言葉が乱れているランタンさんにヴェリウスが嘆息する。
「し、仕方ないでしょう!? アタクシ貴女のように常に神王様のおそばに居たわけではないのだし、“前”よりもパワーアップしているじゃないの!!」
『確かにお力は“前”よりも増しているな。さすがミヤビ様だ』
確かに2年前に比べると、力の使い方が分かってきた気がする。と1人と1匹の会話に思う。しかし今はそれどころではないはずだ。
「ランタンさん、もうドラゴン達の移動が出来ますけど、急に移動させると驚いてしまうから伝えてもらってもいいですか?」
「え!? あ、はいっ神王様!!」
慌てて手鏡を手に取ると、手鏡に向かって「ドラゴンちゃん達…」と語りかけ始めた。
この手鏡はランタンさんにとってはスマホみたいなものらしい。録画機能に通信機能も付いているのだから。
「神王様、ドラゴンちゃん達には伝えましたのでいつでも大丈夫ですわ!」
なら、とドラゴン達を浮島に移動させた。
『ミヤビ様、今回はランタンの神域に住まうドラゴンのみの移動でお願いします』
え?
『…まさかとは思いますが、世界中に散らばっているドラゴン全部を浮島に移動させたり…してませんよね?』
げっ …してる。指定なんてしてない。“ドラゴンを浮島に移動”って願ったちゃった…。
ヴェリウスの言葉に目をそらせば、『全個体を移動させたのですね』と溜め息を吐かれた。
ランタンさんもそれにはぎょっとしてこちらを見ている。
「ごめんなさい…」
ヴェリウスの冷たい目に耐えられなくなって頭を下げれば、「し、神王様ぁ!?」とランタンさんが慌てだした。そして何故か下げた頭よりも低い体勢になり、「頭をお上げ下さいぃ!!」と土下座されたので怖くなって頭を上げた。
何とも気まずい雰囲気がこの場を支配する。
『…やってしまったものは仕方ありません。ミヤビ様のお創りになった楽園を嫌がるドラゴンなどおりませんから放っておきましょう』
フォローが面倒になったんだね。
投げやりに話すウチのワンちゃんに半笑いをしながら頷き、土下座をやっと止めてくれたランタンさんを見る。
やや取り乱していた彼女(?)はようやく落ち着いたのか、紅茶を飲み干すとふぅっと息を吐き、真っ直ぐに私の目を見て微笑んだのだ。
「神王様、ドラゴン達を救って頂き感謝致します」
迫力美女はまな板になっても迫力美女のままだった。
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