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第三章
ヴェリウス先生の魔力講座
しおりを挟む監禁した張本人なのに、バイリン国王ではない? どういう事だろうか?
青い顔で震えるイケメンは、あまりの恐怖に声が出てこないのか、口をパクパクさせている。まるで餌を待つ鯉のようだ。
『ならば貴様は何者だ』
ヴェリウスは脅すように牙を剥き出しにして唸る。
それに余計萎縮したのか、イケメンは今にも意識を失いそうだ。
「わ、私は…、この国の、王太子…ひっ」
上擦った声でやっと答えたのだが、ヴェリウスのあまりの迫力に白目を剥いてしまった。
イケメンでも白目を剥くと、無様だなぁ。いや、イケメンだからこそより無様さがアップするのだろうか。
「王太子かぁ…て事は、エルフを拐ったのはその父親って事?」
「その通りでございます。私はこの男の父親であり、バイリン国の現国王“フェン”に狩られ、ここへ閉じ込められました。さらに私の僅な魔力を利用する為に呪いのかかった足枷をはめ、この部屋の内側から結界を張らせたのです。ここにある“秘宝”を守る為に」
トモコがヴェリウスに確認していると、エルフが堰をきったように話始めた。その内容が何やら“秘宝”だなんだとおかしくなってきている。
ロードを見上げれば、無表情で話を聞いており、トモコは秘宝と聞いて目を輝かせていた。
『呪いの魔道具はたしかに付けられた者の魔力により発動するとは聞いたが、成る程…ここにある“秘宝”とやらを守る為に魔力のあるエルフを拐ったか…』
「ヴェリウス、それだとおかしい。魔素の枯渇で魔力がある者は生きていけないのでしょう? 生き残ったとしても魔法は使えない。それなのに、呪いの魔道具に魔力を吸われたらその時点で死んでしまうんじゃ…しかも100年でしょう」
『単純に、この者はそれだけの魔力があったのでしょう。呪いの魔道具は発動時だけスイッチがわりに魔力を必要とするだけで、後は必要とはしませんから。魔素が無い状態で魔法を使用出来たという話からも、通常のエルフより多い事が分かります』
じゃあ、そこにいるエルフは魔力量が多いという事? でもさっきは多くはないって言ってたよね??
『魔素が満ちていた時代からすればそれほど多くはありません』
100年生き残れる位には魔力量があったって事だね。
「はいはーい。しつもーん」
「何だね、トモコ君」
挙手してアピールしてくるトモコに視線を移せば、
「どうして魔力が少しでもある人は魔素の枯渇で死んじゃって、魔力の無い人は生き残れるの? 私のイメージでは、魔素がないから、人の魔力が世界に吸いとられて無くなって死んでしまうイメージなんだけど」
わりとまともな質問をしてきた。
ヴェリウスを見れば、ゆっくりと頷き口を開く。
「トモコのイメージはあながち間違ってはおらぬ。
魔素が枯渇した世界では、人の魔力は世界を維持する力としてまさに吸いとられていたのだろう。少しずつな。
しかし魔力がある者が魔力を無くしてもすぐに死に至るわけではない。
前にお主が話してくれたであろう、病気は“抵抗力”とやらが低下するとかかりやすくなると…。
魔力がある者はその抵抗力とやらを魔力で補っていたふしがある。無くす事で抵抗力が弱まり病気にかかりやすくなったのだろう。
反対に元々無い者…微量な者は、抵抗力自体を魔力に頼ってはおらぬので病気にもかかりにくかったという事だ」
ヴェリウス…抵抗力まで知識として取り入れているとは…トモコは普段ヴェリウスに何を話しているんだか。
「成る程~。納得しました!」
というトモコのそばで、エルフは何が何やらと首を傾げている。それはそうだ。さっきまで緊迫していた空気だったのに、突然何もない所に向かって話している犬と、質問をする神。どうなっているんだと思わないはずはない。
しかし、空気を読んでか、それとも神に声を掛けづらいのか、様子を見ているだけである。
「そういえば、あのイケメンは随分タイミング良くこの部屋に駆けつけたね。まるで呪いが解けたって分かったから駆けつけた、みたいな勢いだったけど」
『ミヤビ様、奴のしている指輪は魔道具です。恐らく先程の呪いの魔道具と対になっている物。あれで解呪されたと知ったのでしょう』
ヴェリウス先生流石です。何て博識。
確かに対になるものが無ければ結界内にも入れないもんね。
「ねぇねぇ、対って事は解呪された事を知る道具はあれ一つだけなのかなぁ?」
トモコの言葉にヴェリウスが答える。
『そうとも限らぬ。力を失うと同時に結界を張るとなると、幾つかの“鍵”があってもおかしくは……っ トモコ、避けろ!!!!』
「え?」
ヴェリウスの悲鳴にも似た叫び声が部屋に響いた刹那、トモコは叫んだヴェリウスにタックルされ、弾き飛ばされ壁へ激突したのだ。
「トモコ!?」
大丈夫かと駆け寄ると、「びっくりした~」とケロッとしており、怪我一つしていない様子に胸を撫で下ろす。
「ヴェリウス!!!!」
しかしロードの声でヴェリウスに何かあったのだと気付き振り返ると……
中型犬程に縮んだヴェリウスが、力無く転がっていたのだ。
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