異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

文字の大きさ
186 / 587
第三章

ヴェリウス先生の魔力講座

しおりを挟む


監禁した張本人なのに、バイリン国王ではない? どういう事だろうか?

青い顔で震えるイケメンは、あまりの恐怖に声が出てこないのか、口をパクパクさせている。まるで餌を待つ鯉のようだ。

『ならば貴様は何者だ』

ヴェリウスは脅すように牙を剥き出しにして唸る。
それに余計萎縮したのか、イケメンは今にも意識を失いそうだ。

「わ、私は…、この国の、王太子…ひっ」

上擦った声でやっと答えたのだが、ヴェリウスのあまりの迫力に白目を剥いてしまった。

イケメンでも白目を剥くと、無様だなぁ。いや、イケメンだからこそより無様さがアップするのだろうか。

「王太子かぁ…て事は、エルフを拐ったのはその父親って事?」
「その通りでございます。私はこの男の父親であり、バイリン国の現国王“フェン”に狩られ、ここへ閉じ込められました。さらに私の僅な魔力を利用する為に呪いのかかった足枷をはめ、この部屋の内側から結界を張らせたのです。ここにある“秘宝”を守る為に」

トモコがヴェリウスに確認していると、エルフが堰をきったように話始めた。その内容が何やら“秘宝”だなんだとおかしくなってきている。

ロードを見上げれば、無表情で話を聞いており、トモコは秘宝と聞いて目を輝かせていた。

『呪いの魔道具はたしかに付けられた者の魔力により発動するとは聞いたが、成る程…ここにある“秘宝”とやらを守る為に魔力のあるエルフを拐ったか…』
「ヴェリウス、それだとおかしい。魔素の枯渇で魔力がある者は生きていけないのでしょう? 生き残ったとしても魔法は使えない。それなのに、呪いの魔道具に魔力を吸われたらその時点で死んでしまうんじゃ…しかも100年でしょう」
『単純に、この者はそれだけの魔力があったのでしょう。呪いの魔道具は発動時だけスイッチがわりに魔力を必要とするだけで、後は必要とはしませんから。魔素が無い状態で魔法を使用出来たという話からも、通常のエルフより多い事が分かります』

じゃあ、そこにいるエルフは魔力量が多いという事? でもさっきは多くはないって言ってたよね??

『魔素が満ちていた時代からすればそれほど多くはありません』

100年生き残れる位には魔力量があったって事だね。

「はいはーい。しつもーん」
「何だね、トモコ君」

挙手してアピールしてくるトモコに視線を移せば、

「どうして魔力が少しでもある人は魔素の枯渇で死んじゃって、魔力の無い人は生き残れるの? 私のイメージでは、魔素がないから、人の魔力が世界に吸いとられて無くなって死んでしまうイメージなんだけど」

わりとまともな質問をしてきた。
ヴェリウスを見れば、ゆっくりと頷き口を開く。

「トモコのイメージはあながち間違ってはおらぬ。
魔素が枯渇した世界では、人の魔力は世界を維持する力としてまさに吸いとられていたのだろう。少しずつな。
しかし魔力がある者が魔力を無くしてもすぐに死に至るわけではない。
前にお主が話してくれたであろう、病気は“抵抗力”とやらが低下するとかかりやすくなると…。
魔力がある者はその抵抗力とやらを魔力で補っていたふしがある。無くす事で抵抗力が弱まり病気にかかりやすくなったのだろう。
反対に元々無い者…微量な者は、抵抗力自体を魔力に頼ってはおらぬので病気にもかかりにくかったという事だ」

ヴェリウス…抵抗力まで知識として取り入れているとは…トモコは普段ヴェリウスに何を話しているんだか。

「成る程~。納得しました!」

というトモコのそばで、エルフは何が何やらと首を傾げている。それはそうだ。さっきまで緊迫していた空気だったのに、突然何もない所に向かって話している犬と、質問をする神。どうなっているんだと思わないはずはない。
しかし、空気を読んでか、それとも神に声を掛けづらいのか、様子を見ているだけである。

「そういえば、あのイケメンは随分タイミング良くこの部屋に駆けつけたね。まるで呪いが解けたって分かったから駆けつけた、みたいな勢いだったけど」
『ミヤビ様、奴のしている指輪は魔道具です。恐らく先程の呪いの魔道具と対になっている物。あれで解呪されたと知ったのでしょう』

ヴェリウス先生流石です。何て博識。
確かに対になるものが無ければ結界内にも入れないもんね。

「ねぇねぇ、対って事は解呪された事を知る道具はあれ一つだけなのかなぁ?」

トモコの言葉にヴェリウスが答える。

『そうとも限らぬ。力を失うと同時に結界を張るとなると、幾つかの“鍵”があってもおかしくは……っ トモコ、避けろ!!!!』
「え?」

ヴェリウスの悲鳴にも似た叫び声が部屋に響いた刹那、トモコは叫んだヴェリウスにタックルされ、弾き飛ばされ壁へ激突したのだ。

「トモコ!?」

大丈夫かと駆け寄ると、「びっくりした~」とケロッとしており、怪我一つしていない様子に胸を撫で下ろす。

「ヴェリウス!!!!」

しかしロードの声でヴェリウスに何かあったのだと気付き振り返ると……

中型犬程に縮んだヴェリウスが、力無く転がっていたのだ。
しおりを挟む
感想 1,622

あなたにおすすめの小説

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...