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第四章

ぶらり、二人散策

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「リン、王都案内宜しく!」
「お前…ルマンド王国に来たばかりの人間捕まえて言う事じゃねぇぞ」

と長い尻尾をフリフリさせながら目をつり上げるリン。

「だって私は一度王都に来たっきりだし。王宮なら何度も行ってるから案内無しでもいいけどね」

胸を張って言えば、「普通反対じゃねぇのか」と呆れた目で見られた。

「さぁさぁ、美味しい屋台やスイーツ、飲み物のお店へ行きますよ~」
「結局食べ物の店かよ…もっとアクセサリーや洋服の店とかあるだろうが」
「それはこの間行ったし、欲しくなってもお金持ってないし」
「お金持ってないのかよ!?」
「ご飯代しか持ってない」

屋台は安いって聞いたから、1000ジット(円)しか持ってきてないのだ。正確には、それだけしかくれなかった。1時間ならこれで十分とか言って。
ロードめ…トモコには3万ジット(円)もあげてたくせに、私には1000ジット(円)ってどういう事だ!? 増やしてやろうか!

「…師団長は、寄り道せずに早く帰ってきて欲しいんだろうな。というか、もう飯買ったらすぐ帰って来いって事だろ」
「寄り道もなにも、観光なんだから寄り道しまくるに決まってるよね! リン、お金が増える所とかないの?」
「あるわけないだろ!? そんな所あったら皆行ってるっての!!」
「え~…あ! ギルドは? 依頼受けたらお金が手に入るよね」

お金を増やす方法を思い付いた私は、リンにそう提案したのだ。

「あのなぁ、ギルドは冒険者登録しないと依頼は受けられないんだよ」
「冒険者登録してます~」
「精霊が何やってんだよ!?」

リンはどうやらツッコミ担当だったらしい。素直にツッコんでくれるのでなかなか新鮮だ。
ロードもヴェリウスも呆れたようにツッコむのでキレがないんだよね。

「ギルドへ参りますよ。リン」
「マジかよ…師団長に殺されるかも…」




いまいち乗り気でないリンを引き連れギルドへと乗り込めば、相変わらずギルドは筋肉達磨の厳ついおじさん達がたむろしてていた。

「お、あの時の嬢ちゃんじゃねぇか。どうした。今日は一人で依頼受けに…ん? 騎士様引き連れてんじゃねぇか!?」
「おいおい。嬢ちゃん何かやっちまったのか!?」
「騎士様よぉ、嬢ちゃんは確かに問題を起こしそうだが、わざとじゃねぇんだよ。きっと何か理由があったんだよ」
「そうだ、そうだ」

そうだ、そうだじゃねぇし、問題も起こしてねぇよ。

「お前…」

リンに胡乱な目で見られたが、決してこのおっさん達の前で問題行動をしてはいない。むしろトモコの方が問題だろう。

「今日はおこずかいを増やしに来たの! 問題なんて起こしてないし!!」

と叫べば、おっさん達に爆笑された。
一人のおっさんがそばにやって来て「嬢ちゃん」と話し掛けてくる。

「それなら森で薬草取ってくる依頼があったぜぇ。嬢ちゃんの小遣い稼ぎにゃ丁度良いだろ」

おっさんナイスだ。若干からかっているような口調は気になるが、基本良い人達だからな。
目が慈愛に満ちてるんだよね。娘の成長を見守ってる父親みたいな感じの。

「じゃあその依頼受ける」

そういえば、おっさん達は依頼ボードからその依頼書を取ってきて受付のおっさんに渡してくれた。至れり尽くせりである。

というかここ、おっさん率高くない? 前は受付に美人の(恰幅の良い)お姉さんもいたよね? おっさん臭すぎて耐えられなくなったの? 出て行ったの?

「嬢ちゃん全部口に出てんぞ。おっさん臭くて悪かったな。娘は今日は休みなんだよ。おらっさっさとここにサインしろや」

受付のおっさんが依頼書とペンを渡してくるのでそれを受け取りつつ話す。

「え!? あのお姉さんおっさんの娘なの!? 親子でギルドにお勤めで?」
「まぁな」
「仲の良い親子だね~」

照れ笑いしている受付のおっさんの禿げ散らかした頭を見つつペンを握れば、ふと気づく。
この世界って、日本語でのサイン大丈夫なんだっけ? と。

今まではこの世界の人にも分かるようにと願いながら薄い本を創ってきたが、何も思わず書いたら通じないのかな…

「おい嬢ちゃん、俺の頭そんなに睨むんじゃねぇよ。禿げたらどうすんだ」
「もう禿げ散らかってるから問題ないでしょ」
「散らかってねぇよ!! 百歩譲って禿げてるとしても散らかっちゃいねぇからな!?」
「いやいや、現実みろよ。この辺散らかって、「もう止めてやれぇぇぇ!! 男はなぁ、年を取ると禿げ散らかすんだよ!!」「そうだぜ嬢ちゃん!! 立派な大人の男は禿げ散らかしてなんぼなんだよ!!」「だから散らかってねぇよ!? え? 散らかってる? 俺散らかってる!?」……」

おっさん達の団結力に色々思う事はあったが、面倒になったので力を使ってサインをしてギルドを出る事にした。

「ーー…お前酷すぎるだろ」

リンが顔を引きつらせていたが、もうこの顔はリンの通常の表情だと思う事にする。

改めて、私達は薬草を取りに近くの森へと向かったのだ。
深淵の森とは比べ物にならない位小さな森(?)へと足を踏み入れると、前を歩きながら枝や葉っぱを私が歩きやすくする為に折ったり踏み潰したりしているリンが話し掛けてきた。

「なぁ、薬草って何の薬草採取するんだ?」
「えーと…“ニュラーンの葉”と“ペンペンギの根”って書いてあるよ」

ポケットから先程の依頼書の控えを取り出してみれば、そんな謎の植物の名前が書かれていた。

「へぇ。俺は薬草に詳しくないから分からねぇけど、それってどこに生えてんだ?」
「え?」
「え?」

リンと顔を見合わせる。
とその時、

「キャアァァァァァ!!!!」

耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。
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