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第四章
冒険の終わり
しおりを挟むルーベンス視点
ーー…父上…っ 止めて下さい! …っどうして…ーー
「ッ」
…扉がノックされる音にハッとして顔を上げた。
布が肌に張り付く感覚を不快に思う。
ドクドクと早鐘を打つ心臓に気づかぬフリをして、いつものように「入りたまえ」と声を掛ける。
どうやら執務室で転た寝をしていたらしい。
疲れているのだろうか。
自分らしくもないと、入ってきた部下に書類を渡し、早々に退出してもらってから息を吐く。
背後の窓からは日射しが降り注ぎ、日没までには程遠い事を知る。そういえば…
“年末年始に教会へ祈りに行けば、一時的に幸運度が上がる”
いつも騒がしい少女が言っていた事を思い出した。
結局近場の教会へ妻達を伴って祈りに行ったが、成る程。最近“夢”は見なくなっていた。
久方に見た“夢”に、きっと神の祝福効果が切れたのだろうと考えを巡らせる。
しかしそれでいいのだ。
私は、何があっても忘れてはならない……自身の罪をーー…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公視点
そういえばロードが言っていた。
「神王の神域はオメェの力が満ちてんだろ。普通の神なんてゴミみてぇに思える力だ。
そんな力の影響をモロに受けたのがオメェの言う珍獣達。で、見た目からはわからないかもしれないが、他の動植物も少なからず影響を受けている。
オメェが好きなヤコウ鳥なんて見た目も変わっちまってんだ。奴ら昔は50センチからデカくて1メートルだったが、今じゃ2メートル越えがウジャウジャいるんだぜ」
と。神王の影響とはこういう事だったのか……。
ま、まぁ言わなきゃバレないよね?
アフィラートさん3アップ×2事件から数時間。
ヤコウ鳥を3匹ゲットした“焔の鳥”一行は、ホクホクと深淵の森出口へ向かっている。
とはいえ、今日中に森から出る事は出来ない距離なのでまた野営するのだろう。
ヤコウ鳥一匹が70万ジットとして、210万ジット、更にこの4人はヴェアも1匹狩ったのでプラス30万ジット前後。それと希少な薬草やヤコウ鳥の羽刃諸々で280万程いくのではないだろうか。
4人パーティーで3日かけて280万。一人70万ってすごくない? たった3日で70万!! 私ならもう馬鹿馬鹿しくてひと月は働かずに暮らす。
案内人の私ですら3日で9万円貰えるからね。
しかもどさくさに紛れてゲットした薬草を売れば100万なんてすぐだよ!! 冒険者万歳!!
「しかしアフィラートが空間魔法を使えるようになってくれて助かったぜ」
「ベンジャミン、それパーティーのメンバー以外に言うんじゃねぇぞ…」
ゲスい事を考えていたら下からそんな声がしてそちらへ注視する。
「何でだよ。ヒューズのおっさん」
「あのなぁ、空間魔法なんて使える人間聞いた事ねぇだろうが」
「あ、あ~確かに」
「て事ぁ、使える事がバレたらアフィラートが危険な目に合うかもしれねぇだろ」
ベンジャミンとヒューズさんの会話に冷や汗が流れた。
え? 魔法、教えちゃダメだった?
「良くて国で飼い殺し、悪けりゃ危険人物として消されるだろう」
会話に加わったオーズさんの言葉に驚愕する。
消されるって…
「まぁ、お前らが口滑らさなきゃ大丈夫だろ。後、嬢ちゃんに教わった事も誰にも言わねぇから安心しろや」
前半はパーティーメンバーに向けて、後半は私を見上げて言ったアフィラートさんに口が開いたまま塞がらない。
サンショー兄さんとティラー姉さんに視線を移せば、目をそらされる始末。
泣きたくなった。
3アップの事だけに注目していたが、まさか他にもとんでもない事をやらかしていたとは…。
いやいや、いずれ魔法は誰でも使えるようになるはずなのだ。そうトモコも言っていたじゃないか。
だからアフィラートさん達に教えたって問題にはならい、はず。
「魔法はいずれ一般的になってくるとは思いますので、それまではどうかご内密に」
念の為おっさん達にそう言えば、4人共が眉間に皺を寄せて目を見開きこちらを見ていた。
微妙な表情だったが、アフィラートさんも誰にも言わないと言ってたしきっと大丈夫だろう。
そんな事を思いながら私達は深淵の森の中を進んだのだ。
こうして、私と“焔の鳥”の冒険は幕を閉じたのである。
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