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ズボラライフ2 ~新章~

9.嵐を呼ぶ勘違いの連鎖

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「どういう事だい? ミヤビ殿が“神王様”の御息女とは……」

レンメイさんにさも知っていただろう発言をされたカルロさんは、困惑しきりで当のレンメイさんとロード、私を見ている。

私も困惑しきりで土下座をしているレンメイさんを見、口を開く。

「あの……微妙にちが、」

微妙に違いますと言おうとしたら、ロードが首を横に振って止めてくるので、言葉を止めて眉を下げる。
きっと私の顔は八の字眉の情けない困り顔になっているだろう。

「レンメイの奴、この間から暴走気味なんだよ」

頬をポリポリかきながら、困ったようにカルロさんへと話すロード。
なんだか言い訳くさい上、自分の友人を変人扱いしている酷い言い様だ。

「あ、ああ。レンメイの勘違いって事…かな?」

ますます困惑しながら苦笑いするカルロさんに、レンメイさんが「違います!!」と大声で叫んだ。

ロードはぅげっと顔を歪め、カルロさんは目を見開く。

「勘違いなどではありません!!」

あの冷静沈着キャラのレンメイさんが語気を粗めた事で仰天したが、その顔をレンメイさんが見てしまったからだろうか、少し狼狽えた後、「申し訳ありません」と恥じらいだ乙女のように大人しくなった。
そんなレンメイさんにますます困惑するカルロさんは、しきりに首を傾げている。

「まさかカルロにも伝えていなかったとは……」

眼鏡に手をかけながらロードを見るレンメイさん。
その視線にうんざりしているロードは、私を抱き込むと無視を決め込んだ。

「ミヤビ様、カルロは国の重鎮ではありますが、私と同じように私利私欲で動く人間ではありません。決して御身が不利益を被るような真似はさせませんので、どうか高貴なる貴女様の正体を彼にも打ち明ける事、お許し下さい」
「は、はぁ……??」

言っている事はよくわからないがとりあえず流れで頷くと、ロードが「アホッ」と罵ってきてさらに苦々しい顔までされた。旦那に罵倒され苦々しい表情をしたいのはこっちだ。



「カルロ。ミヤビ様は正真正銘、“神王様”の御息女様であらせられる」

いや、違います。

「!!!? 本当にミヤビ殿が神王様の御息女なのかい!?」

だから違います。

困惑していたカルロさんは、レンメイさんとロードを交互に見ながら仰天している。

「考えてもみてください。今までの起こった数々の事件、その中心に居た御方を。
まずダンジョー元公爵の反乱。報告書に目を通しましたが、元公爵は“精霊様の薬と力”を欲して反乱を起こしたとあります。
そもそも、魔素の枯渇で今にも死にそうな人間を治す薬など、精霊どころか神にも作れぬ代物でしょう。
そんな物があれば、神とて人間を…いえ、この世界を放置するわけがないのですから」

目を見開くカルロさんに、今までの事件を挙げ連ねていくレンメイさん。

「そして世界に魔素が満ちた際、神獣様の御側にはミヤビ様が居られたのです」

魔素とはそもそも神王様にしか満たせぬものと伝わっていますが、神王様の御息女であらせられるミヤビ様ならば可能ではないでしょうか。
などと微妙に間違っている話をカルロさんにしていくではないか。

カルロさんは成る程と、レンメイさんのプレゼンが上手すぎて信憑性も出てきているのか、何故か納得している。
チラチラとロードの反応を見ているので、全てを信じきっているわけではなさそうだが、それでも説得力はあるようだ。

「バイリン国の神罰に関しては、かの国の狙いが神域、そしてミヤビ様の深淵の森であった事からロードが起こした騒ぎではないか推測します」

おおッ ほぼ正解です!! あれはロードがやりました!!

「ロードが!?」

カルロさんが勢い良くロードを見ると、ロードは顔を反らし窓の外へと視線を移す。

「神王様の御息女をつがいにしたロードは、神格化していてもおかしくはありません。それに、以前彼は雷と闇の魔法のようなものを使用していました」

ああ、王都の教会を雷で破壊した時の事だよね。
瘴気でダークロードになった時は本当に殺されるかと思ったよ。

「バイリン国の神罰でも稲妻を見たという情報は多くあがっていますからね。人族のつがいへ危害を加える者の排除行動は有名ですし、まず間違いないでしょう」

そして、神王様に触れた事。これが決定的だったとレンメイさんは言う。
人間が神王様にお目にかかるだけでも、神々に目を潰されても文句は言えないというのに、あの数千、数万という神々の中でロードがとった行動はとんでもない事だったというのだ。

微妙に間違っているけど、バレたのはほぼロードのせいじゃないか!!

「神王様に近しい者があのような行動をとったなら、神々が静観していた事も頷けます。
あの時ミヤビ様はいらっしゃらなかった。つまり、あの場で神王様に最も近いのは、神王様の御息女のつがいであるロードという事になります」
「確かに……あの時の、ロードの神王様への態度は酷かった…いや、近しい者へのそれだったね」

おじいちゃんバージョンであっても、ロードにとっては私なのであんな態度デス。
というか、カルロさんにまで酷いと言わしめる、ロードのつがいへの態度ってどうなの?

「これで理解できましたか。ミヤビ様が神王様の御息女だと」

どうしても御息女なんですね。神王本人だとは欠片も思ってないんですね。

「ミヤビ殿が……いや、申し訳ありません。このように馴れ馴れしくお呼びするなど、今までの事、大変失礼致しました」

レンメイさんに続きカルロさんまで!!

「いや、あの、カルロさんもレンメイさんも今まで通りで大丈夫ですから。むしろ改められると困ります」

ロードの腕の中で、ルーベンスさんやトリミーさん達に言った事と同じ事を伝える。

「とんでもありません!! 神王様の御息女様にそのような無礼を働けば、他の神々も黙ってはいられないでしょう」

えー…レンメイさん、ルーベンスさんより頑固だな。

ロードをチラリと見れば、観念したのか嘆息し

「あ~…まぁコイツはこういう奴だし、今まで通りで頼むわ」

などと適当に話を合わせているではないか。
否定するのも面倒になったんだな。と侮蔑の眼差しを送っていれば、「んな顔すんなよ」と頬擦りされたのだ。


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「━━…そう。精霊様の正体が、実は神王様付きの乳母・・だったなんて…」
「はい。第3師団のリンという騎士と話しているのをこの耳でしかと聞きましてございます!!」
「では、精霊様が抱いておられた御子様のどちらかが、神王様の御子様だと?」
「はい! 声が小さくよくは聞こえませんでしたが、間違いないかと」
「フフフ…私にも運が向いてきたわね━━…」
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