468 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
37.負のエネルギー
しおりを挟む「“我が名において、黒を司りし底無しの深闇よ━━…立ちはだかる愚者を捕らえ覆い隠せ……ディダストゥームワンプ!!”」
何ですか!? その恥ずか死呪文んんンン!!!?
こちらが身悶えるような台詞が耳に届いた刹那である。リンの足元が黒く染まり、身体がズブズブと沈み始めたのだ。
「こんな衆人環視の中、大声であんな恥ずかしい詠唱をした上に堂々と呪術を発動するとはッ なんという勇者!!」
「逆に堂々と仕掛けた事で観客も審判も事前に仕込まれていた罠とは思ってねぇ。これじゃあ反則で失格にする事もできねぇな」
トモコとロードの会話に、前日仕掛けられていた呪術を思い出す。鑑定したあの時は、呪術とは名ばかりの子供の遊びのような術(落とし穴”って表示されてた)だと思っていたけど、実際禍黒い沼のようなものに沈んで行くリンを目にすると心配になる。
この試合が始まったのが10分程前。
騎士達の白熱する試合の後、舞台に上がったのが昨日呪術を仕掛けていた貴族らしき男だった。
男と対戦するのは勿論、本大会イチオシの騎士リンである。
前の試合において圧倒的な強さを見せたリンが登場するだけで観客が沸くのだ。今や貴族の男は完全にアウェイであった。
そのはずだったのだ……。
「凄い……」
「あれ、闇魔法ってやつ??」
「頑張れーーー!!!!」
「格好いい!!」
観客は未だ珍しい魔法(性格には呪術だが)に興味津々で、それを使用する貴族の男を応援し始めた。
最初は数人だったその声は徐々に大きくなり、今や会場の半分は貴族の男を応援しているではないか。
「ククク…スピード重視の猫獣人が足を取られればさして脅威ではない。貴様はもう負けたも同然だ」
レイピアよりは太めだが、訓練用のものよりは細い剣をリンに向けた男は勝ち誇ったように口の端を上げた。
「……闇魔法といえば、ロード、君も使えたよね? 闇魔法ってあんな感じだったかな??」
「あ? ありゃ闇魔法じゃねぇ。呪術だよ。似ちゃいるが、全く異なるもんだな」
「呪術? 魔法とは別のものなのかい?」
「魔法は自分の魔力を形にして放つもんだが、呪術は負のエネルギーを増幅させて、何だったか…まぁよくわかんねぇもんを媒介にして魔道具に定着させたもんとかなんとか…?」
カルロさんの質問にロードがふわっとした答えで返している為、質問したカルロさんは頭の上に“?”を浮かべている状態だ。
レンメイさんはロードの説明に呆れた目を向けている。
「ロード、そのふわっとした説明誰から教わったの?」
「あ? 新神研修とかいう名目でヴェリウスが教鞭をとってたもんに強制参加させられた時習ったんだよ」
聞けばそんな答えが返ってくる。
ヴェリウスよ……可哀想に。せっかく教えた内容はロードの頭にはあまり残ってなかったよ……。
「ちょっと待ってください。それは……魔力意外の“力”が存在し、それを形にする技術がすでにあるという事ですか?」
レンメイさんがロードの説明に呆れながらも鋭いつっこみをしてきた。
そう。レンメイさんの言うとおり、この世界には魔力以外にも存在する“力”がある。
先程ロードが言っていた“負のエネルギー”とは、魔力とは別のもので、この世界の生物達が必ず発するものである。
例えば嫉妬や羨望、怒りといった感情は負のエネルギーとして知らず知らずの内に発せられ、蓄積されていくのだ。
そして溜まりに溜まった負のエネルギーが、魔素と結合して魔物(獣)と呼ばれる生物を生み出す。
勿論魔力を持っているから魔物(獣)とよばれるものもいるが(主にウチの珍獣達)、人間がイメージする、人を襲うあの魔物は負のエネルギーの結集体である。
魔素が枯渇した世界では負のエネルギーが増したとしても結合することなく消滅していたのだが、現在魔素が満たされた事で新たな魔物(獣)が生まれだしている。
随分昔はそれこそ冒険者がそれらを屠ってきたが、今の世はヴェリウスを信仰している為に魔物(獣)と共存共栄を目指しているらしい。それによって今後魔物(獣)が活発化してきた時に問題が起きないか、それは以前から考えていた事だった。
まぁ、ロードが人間の事に口出しするなと言うので話してはいなかったけど。
「おい。そりゃ初耳なんだが」
初めて話したしね。
「どう考えても、近々魔物が人間を襲って大問題になるのが目に見えてんぞ」
「何度も注意しようとしてたのに、口出しするなって言ってたのはロードでしょ」
「ヴェリウスだって何も言ってなかっただろ!?」
「ヴェリウスはあまり人間に興味ないし、“勘違い”もどうでも良いと思ってたんじゃないかな」
「“勘違い”だぁ?」
そう。魔物(獣)がヴェリウスの眷属だっていうあれ。
確かに魔物(獣)や普通の動物達はヴェリウスの管轄だけどね、あくまで眷属は聖獣と呼ばれる“正のエネルギー”の結集体でできた魔物(獣)だし、“負のエネルギー”の魔物(獣)は管理はしてるけど眷属ではないから。
人間は魔物(獣)をヴェリウスの眷属だから殺すと罰せられると思ってるけど、負のエネルギーで生まれた魔物(獣)は狩ってもらったほうが良いんだよね。
と、話が逸れてる内にリンが呪術に対抗しようと行動を起こし始めてるよ。
「試合どころじゃねぇ発言しといて何言ってんだ」
「この話はまたで良いでしょ。それより今は試合だよ」
「良かねぇよ。良かねぇが…しゃーねぇな。ミヤビ、話してくれてありがとうよ」
がしがしと頭を撫でられ首を痛める。
まったく。相変わらず女の子の撫で方が分かってない旦那だな。
35
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜
タイトルちょっと変更しました。
政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。
それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。
なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。
そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。
そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。
このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう!
そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。
絶望した私は、初めて夫に反抗した。
私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……?
そして新たに私の前に現れた5人の男性。
宮廷に出入りする化粧師。
新進気鋭の若手魔法絵師。
王弟の子息の魔塔の賢者。
工房長の孫の絵の具職人。
引退した元第一騎士団長。
何故か彼らに口説かれだした私。
このまま自立?再構築?
どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい!
コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界にお助けキャラとして転生したリリアン。
無事ヒロインを王太子とくっつけ、自身も幼馴染と結婚。子供や孫にも恵まれて幸せな生涯を閉じた……はずなのに。
目覚めると、何故か孫娘マリアンヌの中にいた。
マリアンヌは続編ゲームの悪役令嬢で第二王子の婚約者。
婚約者と仲の悪かったマリアンヌは、学園の階段から落ちたという。
その婚約者は中身がリリアンに変わった事に大喜びで……?!
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる