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ズボラライフ2 ~新章~

77. 神王様、決意する6

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「ロードサン、ワタシダンスデキナイ」
「大丈夫だ。オメェはそうやって宙に浮いてりゃあ誤魔化せる。後ドレスが絡まらねぇようにだけしとけ」

乙女ゲームのオープニングをクラシックのような壮大かつ優雅にした曲が、音楽の神によって奏でられる中での出来事。ダンスホールの中心で注目を集めているのが私とロードだ。


何故こんな事になったのか。少し時間を遡る。


神王主催初の舞踏会が始まりを告げたのはつい今しがた。

前回よりも広いパーティー会場は、大人数の招待客を入れても余裕がある。相変わらず絶景な外の景色に見惚れる者、ジュリアス君熱望のビュッフェコーナーに集う者、今回特別に設けたスイーツコーナーは女性達が群れをなしている。ホワイトチョコレートにビターチョコレート、ストロベリーに抹茶と色とりどりのタワーがそびえ立ち、その下には様々なフルーツやマシュマロ、焼き菓子等が並ぶ。それを見つめる淑女達の目は肉食獣である。正直私もスイーツコーナーへ一目散に駆け出したい。

人並みを優雅にすり抜け飲み物を運ぶ珍獣達。スパークリングワインなるものを今回は用意してみました。これが大変好評のようで、すでにほろ酔いになっている紳士まで居るようだ。他にもシャンパンやワイン、ブランデーやカクテル等のお酒類は専用のカウンターを設置しており、こちらもこちらでお酒に目の無い者達が集っている。
勿論子供たちの為のコーナーも準備万端。
何しろ天空神殿の外にはドラゴン達のお出迎えから始まり、神殿内に聖獣ふれあいコーナー(ヴェリウスより提供)や、トランポリン等のアクティビティコーナー、ゲームセンターに誰でもお姫様、王子様に変身コーナーなどを設けてある。これでパーティー会場に飽きたら外のキッズコーナーで遊べるというわけだ。
この天空神殿(浮島含め)は赤ちゃんですら1人になっても安全に問題ないよう設定済みだから親御さん達は安心だしね。
もうそれ舞踏会じゃない。フェスティバルとか言わないで。

というわけで、子供達はさっきからパーティー会場の出口に目をやりソワソワしている者達が目立つ。

そんな中、控えの間から仰々しく登場したわけだが、何故か玉座を通りすぎ、階段を下り、ホールの真ん中にエスコートされた私。からの冒頭である。

さすがにこれが何を意味するかは分かる。
ファーストダンスをしろという事なのだろう。音楽だって私とロードがホールの真ん中に着いた瞬間ピタリと止んだのだ。

「ロードサンハオドレルノデスカ?」
「この世界、ダンスしか娯楽が無かったんだぜぇ。当然だろうが」
「ヘェ……」

私だって盆踊りなら踊れるもんね! 夏祭りのリハーサルに参加しちゃあ踊り狂ったもんよ!!

「何度も言うが、オメェはただ宙に浮いてドレスが絡まねぇよう願ってりゃあいいからな」

ロードがそう言うやいなや、乙女ゲームで一番盛り上がる挿入歌がザ・舞踏会!! という超豪華版で流れ始めたのだ。




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ルーベンス視点


想像していたよりもさらに非常識なパーティーに、暫く気をやっていたようだ。
何故、天空神殿の入り口にドラゴンが整列している。何故、神殿内がフェスティバル会場のようになっている。そして何故、舞踏会場が城下町の屋台通りのような有り様になっている!!

「こりゃあいい!! 珍しい酒にご馳走、菓子も揃って最高だなぁ!!」

同じように非常識な貴様にとっては最高だろうとも。とロヴィンゴッドウェル元辺境伯を横目に目頭を押さえる。
会場も備品も食事や酒ですら、全てが王族すら手に入れる事が難しい最高級品。招待客は神族。しかしどこか庶民的な発想のパーティーは全てがチグハグでおかしいのだ。

「ルーテル卿、やはり貴殿も招待されていましたか」
「ブランチャード侯爵。レンメイ・シュー第1師団長もお揃いで」

カルロ様とそのご友人である第1師団長も今回の舞踏会に招待されていたらしい。ミヤビ殿が正体を明かしたと言っていたからそうだろうとは思っていたが。

「知り合いに会えるとホッとしますね」
「さすがの貴方でも神々の集う宴は緊張するようだ」
「ルーテル卿もでしょう」

当たり前だ。しかも今回は神々にすら特別な様子。浮かれてなどいられん。

「そろそろ神王様が姿を御見せになる頃だろう。いくら親しい仲とはいえ、普段のように接するのは控えたまえ」
「勿論そんな事はしませんよ。一応ご忠告感謝します。ルーテル卿」

そんな会話をしていた刹那、オーケストラの曲調が変わった。いよいよのようだ。

階段上の玉座後方のカーテンが開き、姿を見せるのは1匹のドラゴン。ミヤビ殿のペットだろう。その後ろ。いつもの少女の護衛と世話係り、そして御子様方の護衛だろうか。周りを囲まれ現れた姿に、会場中が息を飲み平伏した。

なんという存在感だ。

普段が嘘のように圧倒的な力を放ち、神の王たるに相応しい至宝のドレスを身に纏ったお姿は正に唯一無二。身体が自然と跪いてしまうのは当然の反応といえよう。

『面を上げよ』

神獣様のお声で皆が顔を上げると、ダンスホールの真ん中に移動された神王様とつがい神様の姿が目に入る。

まさか、ミヤビ殿がダンスを披露するというのか? にしてはあのドレスはダンスに不向きだろうに。

皆が固唾を飲んで見守る中、始まったファーストダンス。その幻想的なまでに美しい光景を、私は生涯忘れる事がないだろう。


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