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ズボラライフ2 ~新章~

105.叙任式

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「━━━……御前試合での優秀な成績と、“魔虫”撃退の功績をもって、第3師団5部隊所属、リンを本日付けで8部隊、部隊長に任ずる!」
「はっ!! 栄誉にあずかり、第3師団8部隊部隊長の要職を拝命致します!!」

第3師団が管理している敷地の建物の中、粛々と行われているのはリンの叙任式だ。(リンのだけではないが)

師団長の正装をしたロードが、跪き頭を下げたリンに任命の文言を口にし、剣の刃の側面を右肩に当てた後、頭上まで持ち上げ反時計回りに反転させて左肩に当てる。
 リンが立ち上がり、正装したアナさんが宝石を置くようなトレーに記章を乗せてロードのそばへやって来る。それをロードが手に取り、リンへ授与した。

なんとファンタジーな光景だろうか。

リンの叙任式の噂を聞きつけ、姿を透明化させてやって来たが、自分の夫が珍しく騎士らしい事をしているし、何だか格好良いので録画しておけば良かったと惜しく思う。

「ほぅほう。みーちゃん、ロードさんが珍しく格好良く見えるよ」

勿論こんな面白イベントを見逃すわけのないトモコは、当然のように一緒にやって来て隣でほぅほぅ頷いている。

「あんな制服持ってるの初めて知ったんだけど。どこに保管してたんだろ?」
「インベントリじゃないかな~。師団長の正装ってゴージャスだね。高位貴族っぽ~い。あ、そういえば、師団ごとにイメージカラーがあるらしいよ~」
「イメージカラー? 初耳なんだけど」
「なんかね、第3師団はイメージカラーが赤だから、制服が赤なんだって~」

確かにこの場にいる騎士達は皆赤のアウターに白いマント、白いパンツという格好が殆どだ。アナさんは赤黒い燕尾服のようなアウターに黒い細身のパンツとブーツで、他の人よりシュッとしていて差別化がはかられており、副師団長っぽさが出ている。マントは紺色だ。
ロードはアナさん似た赤黒のアウターだが燕尾ではなく、足の付根より少し長めの丈にベルトやら装飾品がジャラジャラしていて、重そうな紺色のマントを着用している。アナさんの紺が紺青色ならロードのマントは瑠璃紺でより濃い。二人の生地に施された刺繍も繊細かつ豪奢だ。

「第1師団はイメージカラーは白で、第2師団は青、第4師団は緑ってレンメイさんが言ってた~」

なにそれ、全師団の正装めっちゃ見たい。

「特撮ヒーローみたいだよね~」
「黄色がいないと特撮ヒーローとは認められません!」

ピンクはいるのに。王様(の髪色)がピンクだから。

「そういえば第4師団って師団長不在なんでしょ? 一番上が居ないままってありなの??」
「それね~、元々第4師団ってアナさんのお父さんが師団長だったらしいんだけど、亡くなった後第4の副師団長がアナさんの就任を望んでるって噂聞いたよ~」
「へぇ。ならアナさんが次の師団長なんだ」
「順当にいくとね。でも、今アナさんが第3から抜けたら、第3の副師団長になれる人が居ないから第4は空席のままなんだって~」
「へぇ」
「だからリン君が第3の副師団長になるまでは、第4は師団長が居ないままだと思うよ~」

何でそんなに詳しいの?

「あ、みーちゃん終わったみたい」
「平騎士から一気に部隊長へ出世ってすごい事なんだよね? 妬みを買わないといいけど……」

騎士達に拍手され、恥しそうに、でも誇らしそうに顔を上げてレッドカーペットを歩むリンに、透明化しているが私も拍手を送る。

「みーちゃん何言ってるの~。リン君は獣王だよ。第3師団は人族と獣人が多いから、支持者も多いだろうし、多分半年もすればまた昇進するよ? 次は一気に全部隊の隊長とかかもね~」
「ええ!?」

それって会社に例えると、主任から一気に部長になるって事だよね!? 何その社長の息子コース。

「あれ見て」

トモコが指差す先に視線をやれば、レッサーパンダ獣人のスイ君を筆頭に、獣人騎士に囲まれ讃えられているリンの姿があった。いや、獣人だけでなく人族もいる。
何だか部活で表彰された後の男子生徒のやり取りのようで微笑ましい。

「御前試合の活躍がめざましかったからね~。ロードさんに憧れてる第3師団の騎士達にとっては、ロードさんみたいな出世の仕方をしてるリン君は好ましく映るよね~」
「そっか。あの様子なら大丈夫そうだね」
「アハハ。みーちゃんの加護があるリン君を害せる人なんていないから~」

加護っていっても軽いものだからね? 怪我をしにくかったり、死ににくかったりするだけで、絶対怪我を負わないわけじゃないし、悪口言われたりそういう精神的な事に対しての攻撃は回避できないから。まぁ他より運は良くなるけど。

「ところでトモコ、祝賀会の準備は出来てる?」
「勿論! アナさんの復帰パーティーと同じあの食堂で良かったんだよね?」
「うん。今回も絶対あの食堂でパーティーすると思う!」
「ん? みーちゃん、ロードさんからあの食堂で祝賀会するって聞いてたんだよね?」
「ううん。でも多分あそこでやるよね?」
「んん??」


◇◇◇


「おい! 食堂にスゲェ美味いもんがあるんだってよ!!」
「見たこともない料理が並んでるんだろ!?」
「今手ぇ空いてる奴、皆食堂に集まってるってよ!!」
「早く行かねぇと無くなるぞ!!」

第1、2、4師団の手の空いている騎士達が急いで食堂に向かっているのは、ある1人の騎士が休憩時間に自分のいた場所から一番近い食堂に入った事が発端だった。
その食堂には見た事もない料理が所狭しと並んでいたのだ。
美味しそうな匂いにつられて、並んでいる料理の一つを食べてみると、この世のものとは思えない美味しさで、止まらなくなり次々と口に入れ、満足したところで同僚にも教えてあげようと話を広めた事でその食堂に所属関係なく騎士達が集まったのだ。

そして━━━……

「ロード!! 第3師団の訓練所に一番近い食堂に、料理を並べて何をしようとしているんですか!! 食べても減らない料理に騎士達が群がってパニックになってますよ!!」
「あ゛?」

叙任式が終わり、解散直後のロードの所へレンメイが飛び込んで来た事で発覚する。


「ミヤビィィィーーーーーーーーー!!!!!!!!」



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ふるふるポテト

①ポテトを紙袋に入れてください
②お好きな味のスパイスを①へ5回ふりかけて下さい
③10回ほど上下に振ってください

「絵付きの説明書……すげぇな」
「ポテトってこの棒状のやつだよな……好きなスパイス? このガラスの容器に入ってるやつか?? 適当に選んでみるか。で、振る……?」
「それ本当に食えんのか?」
「まぁ食ってみようぜ…………………………っっっうっめぇ!!!!! なんだこれ!?」


マッ○ナゲット

お好きなソースで召し上がって下さい

「なんだコレ? 肉??」
「こっちのソースに付けて食べるんだとよ」
「へぇ。なら俺は茶色のソースで……………………ッッッうっま!!!!!!」
「こっちの黄色いソースもめちゃくちゃ美味いぞ!!!!」


台湾カステラ

「……パン?」
「菓子じゃないか??」
「すげぇブルブルしてる……不思議なパンだな」
「食ってみようぜ……………………甘くてうめぇ~。何だこれ、ふわふわだぁ~」
「素朴なのに美味いなぁ~」


マリトッツォ

「パンだな」
「パンに白いものが挟んであるようだ……」
「白いものの中に果物も入ってて、女性が好きそうな見た目だな」
「美味かったら妻のお土産に持って帰ろうかな」
「それ良いな!」


こうして、第3師団以外の騎士達も未知の料理を堪能し、皆幸せな笑顔を浮かべていたとか。



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叙任式の後に祝賀会の予定はありませんでした~。
お祝いは個人的にやりたければやるというスタンスです。
雅さんが勝手にやると思い込んで、勝手に準備していたのを他師団の騎士に見つかり食べられ、結果大事になって怒られました。でも反省しない雅さん。


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