異世界で神の化身は至極最高に楽しむ。

三月べに

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16 魔法特訓。

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 目を開くと美少女がいた。
 当然だ。美少女と添い寝をしたのだから。
 それにしても、寝起きから眩しいものだ。
 白銀の髪の色白美少女だもの。それもそうか。
 健やかな寝顔のアメーを起き上がって見下ろしたあと、欠伸を漏らして背伸びをした。先に支度をしていたら、アメーも起床。

「おはようございます、お姉様……」

 寝惚けたアメーから、お姉様呼び。

「おはよう。アメー、姉がいるの?」
「はぅ! ち、違うのっ! 今のはっ……姉妹がいたら、こんな感じなのかと思ったらつい……」

 アメーはそう赤面して、頬を押さえる。

「そうかそうか、一人っ子か」

 よしよしと頭を撫でてやれば、余計赤面するのだった。

「着替えて朝食をとったら、ダレンと鍛錬しよう」
「そ、そうね!」

 気を取り直したように立ち上がったアメーと手分けして、ドレスのコルセットのリボンを結んだり、髪をセットしてあげたり。
 私の髪型は、緩めの三つ編みを一つ。
 アメーの髪型は、サイドに細い三つ編みを一つずつ。
 朝食はアメーが物珍しそうにパン屋を覗き込むので、それぞれパンを買い、また街外れで食べた。デザートには、私の収納魔法から取り出した果物をおすそ分け。ミニレウにも、忘れずに与えておく。

「なんか、すげーアイナから食料分けてもらってる気がする」
「いいのいいの。ガネット街ってところで、厚意でたくさんもらえたから」
「「厚意?」」
「ご厚意に感謝だよねー」

 レウで飛行してしまったから、予定より早く街に着いてしまい、食料は余っていると言える。だから遠慮しなくていいとダレンに言っておいた。

「んーでも、やっぱりもらってばっかりなのは悪いよ! ボク、魔物狩ってくる! 今日はそれを昼ご飯にしよう!!」

 決意したように力強く言うと、ダレンは飛び出して行ってしまう。

「えっ? 鍛錬はどうするの?」
「実戦も鍛錬のうちー!」

 ぴゅうーっと、ダレンは街の方を駆ける。
 えー、一緒に鍛錬しようって言ったじゃん。
 それに魔物か。私も見てみたいし、ダレンについて行こうかな。

「我々は鍛錬しましょう」

 アメーも誘うか迷っていたら、アントンさんが言い出した。

「確認ですが、アイナ様の戦闘スタイルは?」
「あ、私……戦闘経験がないです。でも魔法で戦うので、遠距離か中距離スタイルですかね」
「アメー様は遠距離戦スタイルです。そんなアメー様には、先ず防壁魔法を張ってもらい、それを維持しながら、攻撃魔法を放つという簡単な特訓をしてもらっています。万が一、接近戦の私が抜かれた場合、防御に徹することを教えております」
「そうですか。防壁魔法……」

 そうか。常に防壁魔法を張っていれば、眠り粉をかけられても、寝落ちを防げるのではないのか。

『そうだね。常に防壁を張るのは、アイナには苦じゃないだろうし、必要な魔法だ』

 お父様も賛同した。

『あ、でも、アメーとベタベタしたいし、それだと邪魔ですかね。むしろアメーに被害が……危害を加えられる時だけ発動する防壁の魔法ないですか?』
『そうイメージすればいいじゃない。アイナは好きに魔法を使えるのだから』
『そうでした』

 お母様に言われて、思い出す。
 そう言えば、私の魔法は万能だった。
 アメー達の前では、人並みの魔法使いを心掛けていたから、つい。

「“ーー我を護りし、防壁よーー”!」

 アメーが先に唱えてくれたので、私も同じく唱えて人並みの防壁魔法を発動させた。それから背後を守る防壁も、念じて付け加えておく。これで守りは完璧だろう。

「それでは、攻撃魔法を撃ってきてください」

 距離を取り、剣を抜くアントンさん。
 私とアメーを、同時に相手するつもりか。
 私はアメーからどうぞって視線を送る。

「”ーー燃えろ、火球ーー“!」

 ファイアボールが放たれた。大きさはその辺の岩に比敵する。
 容赦ない。でもそんな心配は無用なもので、アントンさんはサッと躱した。アメーは加減しなくても、アントンさんに怪我を負わせることはないようだ。
 万が一の時は、アメーが治癒してくれるだろう。

「”ーー天空の神よ、吹雪かせろーー“!」

 お父様から教えてもらい、また精霊魔法を使ってみた。
 アントンさんに向かって、真っ直ぐに吹雪が飛ぶ。
 アントンさんは、マントを盾にして耐えた。
 そんな感じで、私とアメーは交互に魔法を行使してアントンさんを追い込んだ。時折魔法で弾くアントンさんも、二人掛かりでは押され気味かと思ったけれど、そうでもなかった。
 小石を投げたかと思えば、それがアメーの腹部に当たる。

「アメー様、防壁の魔法が切れています。アイナ様を見習って集中してください」
「っ! はい!」

 防壁魔法って集中力が必要なのか。
 私、全然気にしてなかった。
 でも私の防壁魔法はとけていないようだ。
 チート効果かな?

「そろそろ、ダレンを捜しに行きましょう。魔物が見付かったのなら調理をしている頃でしょう」

 特訓はここまでにして、向かい側の街外れに行ったであろうダレンを捜しに行くことになった。
 街を突っ切って行くついでにドレスを受け取り、収納する。
 昨日昼食をとった場所に、ダレンはいた。

「おーい」

 私達に気付いたダレンが大きく腕を振る。
 そんな彼に、アメーも腕を振り返す。
 初々しい。

「ケンタウロスがいたよ!」
「ケンタウロス!?」

 すでに捌かれている肉の塊を、焚き火で焼いているダレン。
 その肉の塊の主が、魔物ケンタウロスなのか。

「どうしてそんなに驚くの? アイナ」

 ダレンとアメーにキョトンとされてしまう。
 この辺じゃあ普通なのか。私が知るケンタウロスってもっと強いイメージがあるので、びっくりした。

「いや別に……。丸焼きが美味しいの?」
「あー……ボクは焼いて塩をつけるくらいしか出来ないんだ。アイナみたいには味付け出来ないや。ごめん」
「そうなの? じゃあ……ショーユとニンニクなんてどうかな?」

 ケンタウロスってあれだろう。馬刺しみたいな感じでいけるんじゃない。
 醤油だけれどかなりの甘口の調味料に、すりおろしニンニクが合うだろう。

「「うん!!」」
「いただきます」

 ダレンとアメーは元気に頷き、アントンさんも私が作る味付けを期待しているようだ。ということで、また収納魔法からテーブルを取り出して、ニンニクをすりおろし。すりおろし器があってよかった。
 人数分より多めに作っておいて、切り取った馬肉……ではなくケンタウロス肉をつけて食べる。美味い。
 ダレン達も、口にすると絶賛した。口に合って何よりだ。
 ミニレウにも、食べさせてあげる。
 食べながら、私達が特訓をしていたと聞くと、ダレンも参加したいと言い出した。
 食べ終えたら、アントンさんに鍛えられる形で特訓。

『ねーねー。アイナ。普通に特訓するのもいいけれどさ』
『そうね、私達、アイナが無双するところが見てみたいわ』
『それは無双する相手がいないと出来ませんね』

 本音を言うと私も無双がしたい。
 こう、哄笑を上げて、はしゃいで魔力を使い果たしたい。

「そう言えばさ、勇者が魔王を倒したじゃん?」
「そうだね」
「それで、冒険者って儲かるの?」

 ダレンが狩ってきたように魔物はいるみたいだけれど、魔王が健在の時よりは討伐するような魔物が少ないのではないか。

「え? 何言ってるの、アイナ。魔物を滅ぼしたわけじゃないから、討伐する魔物は減らないよ」
「人間を襲う習性のある魔物は、各地にいるのだから」

 またもやキョトンとしたダレンとアメー。

「え。じゃあなんで魔王を倒したの?」

 魔物被害が減らないなら、魔王を倒した意味がないのでは。

「……」
「……」

 困ったようにダレンとアメーが顔を合わせる。
 しまった。せっかく回避していたのに、無知さがバレたか。

「アイナ様。エンダーテイル国と魔王が君臨する魔国は、昔から戦争をしていて、隙あらば攻め込んでいました。新しい魔王になってから攻め込むことは少なくなりましたが、隣接地は常に気が休めなかったはずです。魔王を倒さなければ、エンダーテイル国の人々に安らぎは来なかったでしょう」

 アントンさんが答えてくれた。
 魔王を討ち取って、安心か。
 敵国の頭を倒したのだ。安心もするだろう。

「今でも魔王軍の残党が隣接地から攻め込んではいるとは聞きますが、冒険者達の働きが発揮されているそうです」
「そうなんですか……隣接地ってこっちですか?」

 私は街とは、反対側の西。

「そうだよ、ボクはそっちから来た。森や崖があってね、魔物がそこで繁殖しているんだよ」
「そっか。なんか無知でごめんね?」
「いや、謝らなくてもいいよ」

 そっちに、魔国があるのか。
 王都を満喫したら、行ってみようか。

「あ、そうだ。換金したいんだ、ギルドに行ってもいいかな?」
「ギルドで換金?」
「うん、ギルドならまとめてやってくれるんだよ。行く?」
「行くー」

 ケンタウロスの残りの肉は、保存の魔法をかけて収納。
 ギルド南支部は、街の西寄りにあった。
 すっかり私を無知な旅人だと認識したようで、色々と教えてくれる。
 新規の冒険者が並ぶカウンターは、右端。そこには大きく「水晶玉入荷待ち」と立て札が掲げてあった。
 その少し距離を開けた隣には、三つの窓口があり、女性二人と男性一人が立っている。そこで依頼の発注や受注をするのだそうだ。
 そして、今日用があるのは、換金の窓口。さらに三つの窓口があった。
 空いていたので皆で並んで、換金の様子を見せてもらう。

「ケンタウロスの蹄と皮と尻尾ですね」

 窓口のお姉さんは、一目見ただけでそう判断した。
 それから秤にかけたり、サイズを測る。

「銀貨四枚になります」
「どうも」

 銀貨四枚を受け取り、ダレンはそれを鞄の中にしまった。

「あ、待ってください。冒険者志望の方ですよね?」
「え? あ、はい……そうですけれど?」

 ダレンを呼び止めたお姉さん。私も一応冒険者志望なので、窓口に手をついた。

「今はまだ水晶玉が届いていないので、冒険者の資格があるか判定は出来ませんが、明日届く予定です。整理券の配布をしているので、受け取ってください。受け取ってもらえれば、早めに水晶玉に触れられますよ」

 お姉さんが親切に教えてくれたので、私達は整理券を受け取りに行く。
 右端のカウンターの上にちゃんとあった。
 ダレンとアメーと私の順番で整理券を取る。裏にはギルド南支部と印刷された文字が書いてあり、表には大きく数字が書いてあった。私の番号は、33だ。
 結構、待っている人がいるものなんだな。という印象を抱いた。


 
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