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一章 家出編。

21 謝罪と許可。

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 家族の愛情を一頻り感じたあと、私はゴホンと咳払いをして気を取り直す。

「手紙でお話しした従者を紹介したいところですが、先ずは……スチュアート様をお連れしました」

 私が名前を出すと、両親と兄の行動は早かった。
 おずおずと歩んでいたスチュアート様に、無詠唱の水魔法を浴びせたのだ。
 そのまま、スチュアート様を水の球体の中に閉じ込めてしまう。
 慌てて私は腕を一振りして、その水の球体を崩してスチュアート様が溺れることを回避した。

「何をするの? リディー」

 お母様が心底わからないと風に、首を傾げる。

「そうだ! リディー! あのバカ者はお前を傷付けたのだろう!?」
「命を持って償ってもらう!!」

 殺気立つお父様とお兄様。

「謝罪を受け入れました。彼も故意に私を傷付けるつもりはなかったのです。反省をしています。だから、どうか怒りを鎮めてくださいませ。命まで奪わないでください。私は、お父様達の手が汚れてしまうことが、嫌なのです。お願いします」

 私は三人の前で頭を下げた。
 息を乱したびしょ濡れのスチュアート様も頭を下げて、大きな声を上げる。

「この度は申し訳ありませんでしたっ!!!」

 全力の謝罪。命がかかっているのだ。
 そして、当然の謝罪。
 私は昼にスチュアート様と話したことと同じことを言う。
 中傷が目的ではなかった。私への配慮のなさは無自覚。
 恋で盲目になっていた二人の突っ走った言動だった。
 命だけは助けてほしい、と私からももう一度、スチュアート様も頼んだ。
 冷ややかな、とてつもなく冷ややかな視線をスチュアート様に送った家族は、しぶしぶといった様子で命をとることをやめてくれた。

「もう顔を見せるな! 出て行け!」

 お父様にスチュアート様は追い出されて、この件は片付く。

「ありがとうございました、お父様、お母様、お兄様」
「リディー、あなたが礼を言うことではないわ。もう、優しいのだから」

 そうお母様は、仕方なさそうに私をまた抱き締めた。

「さぁ。従者さん達を紹介して。と言いたいけれど、先ずは中に入ってもらいましょうか」

 私を放すと、お母様は家に招いてくれる。
 一部始終を見守っていた従者達と共に家に入った。
 少し遅い夕食をとる前に、自己紹介をしてもらう。
 そして、食事をしながら、出逢いなどを話した。
 ここ数日の私の冒険談も交えて。
 家族は、私の従者を快く受け入れてくれた。
 従者達も敬意を持って、家族に接してくれる。
 食事が済み、食器が片付けられたあと、私は立ち上がり切り出した。

「お願いがあります、お父様、お母様。そしてお兄様」

 勇気を振り絞って私の心臓はバクバクしていたけれど、背筋を伸ばしてちゃんと告げる。

「婚約破棄で騒がせてしまって申し訳ないと思っておりますが、私は冒険者として、この従者達ともっと冒険したいのです。学園は休学させてもらえないでしょうか? そして、冒険をする許可をください。お願いします」

 頭を下げれば、ルーシ達も立ち上がった。
 そして、私にならうように頭を下げる。

「我々からも、お願い申し上げます」

 そうモーリスが言う。

「もちろん、主のことは全力で守るつもり」

 ニッと笑いかけたルーシ。

「どうか、この願いを聞き入れてもらえないでしょうか?」

 ソーイも頼み込む。

「後生です」

 珍しくガーラドも声を出す。

「お願いします! リディー様ともっと冒険をさせてください!」

 ラムが深々と頭を下げる。

「レベル9の冒険者か……勇者レベルとは、流石我が娘だ」

 顔を上げて見れば、お父様の目元は優しくシワを作り微笑んでいた。

「どうせならば、本物の勇者となってしまえ!」

 なんて冗談を言い退ける。

「冗談抜きで、リディーならばなれるかもしれませんね」

 お兄様も似た眼差しで微笑む。

「じゃあ……!」
「いいのよ、リディー」

 お母様が柔和に答えてくれた。
 許可をくれたのだ。
 こんなワガママを許してくれた。
 とっても優しい家族だ。また泣きそうになってしまう。

「ありがとうございます!」

 大喜びでラムが抱き付いてきたので、受け止める。
 冒険の続きをこの子達としよう。
 さぁ、先ずはどこに行こうか。



 ††††††††††
あとがき。

家に帰るまでのお話!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

一度完結させていただきます!
プロットも立てずに書き続けた報いでしょう……
続きに詰まってしまいました!

いつの日にか、続きを書きたいと思います。
レベルオール10になり、勇者どころか賢者になるリディーの活躍が書けたならいいなぁと願っています。
あと鬼達の故郷とか。
婚約破棄野郎と素朴令嬢は、ひっそり暮らす羽目になるとか。
考えれば思い付くと思うのですが、またいつか!


 
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