マカイ学校の妖達と私。

三月べに

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04 昨夜。

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 小紅芽がお化けと呼ぶものと出くわしやすい時間帯、逢魔時。
 それは昼から夜に変わる時間のことだ。
 そんな時間帯にまだ学校の体育館に残っていたのは、小栗雅と大神狼と白銀和真の三人だった。彼らはバスケットボールで遊んでいる。

「尻尾が当たった? 小紅芽ちゃんに?」

 ダムダムとドリブルしながら聞き返すのは、雅。

「そうそう。確かにバシッと当たったんだよねー」

 言い出した和真は、そのボールを奪う隙を狙っていた。

「そんなまさか。霊気や妖気がない相手にはすり抜けちゃうはずだよね?」

 雅が傍観している狼に向いた瞬間、和真はボールを奪い、二メートル先のバスケットゴールにボールを入れる。

「そのはずですよ」

 転がってきたボールを拾い、狼は答えた。

「小紅芽ちゃんから霊気は感じないよ? 気のせいだよ、きっと」

 狼からボールを受け取ろうとした歩み寄った雅だったが、狼は五メートル離れたそこから片腕で華麗にシュートを決める。
 転がっていくボールを、今度は和真が拾った。

「それがですね。俺も触られた気がするのですよ」
「狼くんも?」
「ええ、先日彼女を怒らせてしまった件の時」

 思い出して、狼はフッと笑みを漏らす。

「何思い出し笑いしてんの?」

 ボールの上に乗ってバランスを取る和真に問われた。

「いや……可愛らしい人だと思いましてね」

 小紅芽の素直じゃなかった言動が、可愛くて思い出し笑いをしてしまうのだ。

「あー! 狼くんがそんなことを思う女子生徒なんて初めてじゃない?」
「そうですかね……」

 雅に指摘されて、狼は少し考えるために顎に手を添える。

「そんなことより、触れられたってどういうこと?」

 そんな考えを遮るのは和真。話題を戻した。

「彼女に背を向けた時、尻尾に触れられた気がするのです。気がする、というほど、わずかでしたが……」
「えー! でも霊気感じないよ!?」

 一緒に過ごしている雅が、一番それをわかっているのだ。
 何せ腕を組むことが、日常茶飯事。触れていても、霊気を感じないと言い張る。

「……それでは、一つ可能性がありますね」
「なになに?」

 刹那考えた狼が告げる。

「小紅芽さんが霊気を隠している、という可能性です」
「ええ!? 霊気って隠せるものなの!?」

 雅は驚愕して、ボールを頭の上に置いた和真はそのボールを落とした。

「それって、修業しなきゃできない技じゃない? 霊能力者や陰陽師でもなさそうだし、そもそももしも霊気を隠していたのならさ。ーーーー俺達の耳や角、はっきり視えてるはずだよね」

 和真がそう言う。
 自分達の正体が、視えているかもしれない。
 そのことに緊張を覚えて、息を呑む雅。

「そうとも限りません。目の錯覚程度に視えてしまうわずかな霊力を無意識に隠している場合も、捨てられません。それなら触れられるのも頷けます」
「きっとそれだ!」

 狼の可能性の話に、ぱあっと目を輝かせる雅は手放しに喜んだ。

「ちょっと霊感がある程度なんだよ! きっと!」

 霊感、霊気、霊力。全て同じものだ。
 霊感は少し勘の鋭いものが持つ力を意味することもある。

「ま、とにかく調べてみようぜ」

 またボールを頭に乗せてバランスを取る和真が笑いかけた。

「明日にでも本当に触れられるかを、さ」
「そうですね。念のため確認しましょう」
「どうやって?」

 キョトンとする雅に、狼も和真も考えが一致しているようで笑って見せる。
 そうして、翌日。奇遇にも三人は登校中に、小紅芽を見付けるのだった。



 
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