大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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11巻

11-2

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 ◇◇◇◇◇◇

 アシュトたちがエルダードワーフの穴倉に到着した頃。
 ミュディ、ミュア、ライラ、アーモ、ネマの五人は、大きな荷物を屋敷前に置いた。
 荷物はディミトリがベルゼブブの宿に運んでおくというので、ミュディたちはほぼ手ぶらだ。
 ミュアとライラは、緑龍の村で一番のいやし系魔獣である、真っ白なニコニコアザラシを背中に背負っていた。正確にはニコニコアザラシをしたリュックだ。

「にゃぅぅ~ん♪ たのしみー!!」
「わぅぅん♪ たのしみだねー」

 二人はリュックからあめびんを取り出し、蜂蜜はちみつ飴を一つ頬張ほおばる。
 このニコニコアザラシリュックもミュディの新作の一つだ。子供向けに作った商品で、ベルゼブブで紹介する新作の一つである。
 ネマとアーモは上機嫌だった。

「ディミトリが紹介する宿に高級バーってのがあるみたいよ。ねぇアーモ」
「お酒、タダで飲めるみたいね。ふふ、男どもには悪いけど楽しみましょ。ああ、もちろんミュディも一緒にね」
「え!? わ、わたし、お酒はあんまり」
「たまにはいいじゃない。ねぇネマ、女同士お喋りしましょ」

 どうやら、拒否は難しい……でも、たまにはいいかもしれない。
 屋敷の前で話していると、迎えのディミトリがやってきた。そして見知った顔も。

「おはようございます。皆様、お待たせしました……これより皆様を魔界都市ベルゼブブにご招待」

 芝居しばいがかった口調のディミトリを押しのけ、リザベルが前に。

「皆様の案内役を務めさせていただきますリザベルです。よろしくお願いいたします」
「あ、ちょ、リザベル!? ここはワタクシの」
「では、魔界都市ベルゼブブにご案内」
「ちょ!?」

 リザベルが指をパチッと鳴らすと、ミュディたちの足下に魔法陣が展開……一瞬の浮遊感を感じたと思ったら、景色がパッと切り替わった。

「到着です。ようこそ、魔界都市ベルゼブブへ」

 ミュディたちの視界いっぱいに、大きなとうみたいな建物が飛び込んで来た。
 魔界都市ベルゼブブ。
 ミュディたちが転移した場所は、ディミトリ商会総本店である巨大施設の屋上だった。
 ビッグバロッグ王城よりも大きな『塔』の上から町を眺めるような形になり、いきなりの光景にミュディはちょっとだけフラッとした。

「っひ、あわわ……」
「にゃあ!! 高いー!!」
「わふぅ……すごーい!!」
「驚いたわね……村の図書館みたいな『塔』がいっぱいあるわ」
「ネマ、あそこ。四角い箱が動いてる……中に人がいるわね」

 各々が塔の上から町を見下ろし感想を述べる。ミュディだけへたり込んでしまったが。
 町を見下ろすだけでなく正面を見る。なんと、似たような塔がたくさん立っている。
 ビッグバロッグ王国よりも発展した大都市の様子に、ミュディは文字通り腰を抜かした。

「皆様。まずは本日のお宿にご案内いたします。本日はお休みいただき、明後日から完成式典の打ち合わせをしますので、それまでごゆっくりおくつろぎください」

 リザベルが言うと、ディミトリが「あっ、ワタクシの役目……」とぼやく。
 ミュディはアーモに起こされ、屋上から下の階に移動する。

「にゃう。せまいー」
「昇降機です。これに乗ればすぐに一階まで降りられます」

 狭い箱の中に入って数十秒、箱の扉が開くと『ディミトリ商会総本店』の一階部分に到着した。

「わぁ~……すごい」
「わう!! みてみて、あそこにミュディの服がある!!」

 ライラが指差した場所には『ミュディ・ブランド』と書かれた看板が吊るされ、フロアの一角に服や小物が陳列されている。どれも見覚えのあるものばかりだし、それよりも驚いたのは人の多さだった。
 大勢の人が、ミュディの作った小物やバッグを手に会計に向かっている。

「な、なんか嬉しいけど……ちょっとくすぐったいかも」
「わふ? ミュディ、かゆいの?」
「そ、そうじゃないんだけど……あはは」

 すると、ミュアがアーモに抱きかかえられた。

「にゃあ!!」
「こら、勝手に行かないの。迷子になっちゃうでしょ?」
「でも、お菓子いっぱい……」
「あとでいくらでも食べさせ……うーん、村長やシルメリアに怒られちゃうかな」
「にゃうー」
「まったく……しょうがない、少しだけね」

 ミュアを抱えたアーモ。だがネマが「あそこ、お酒いっぱいあるよ」と言うと目を光らせ、ミュアにジト目で見られて赤面していた。
 ミュディも知らないブランド商品があるスペースもあり興味をそそられたが、まずはリザベルの案内で宿へ向かうことに。
 店から出ると、大きな車輪の付いた箱……魔道車が止まっていた。
 運転手らしき悪魔デヴィル族がドアを開ける。

「ではご乗車ください。宿へご案内します」
「にゃうー!! おもしろそう!!」
「わん!! ミュア、乗ろう!!」

 ミュアとライラが飛び込み、アーモとネマが乗り込んで子供たちを抱っこする。
 ミュディも乗り込み、最後にリザベルが乗り込む。

「では、出発します」

 魔道車はゆっくりと走り出し、五分ほどで目的地に到着した。
 車から降りるとそこは、どこか宮殿を思わせる造りの豪華ごうかな建物だ。

「こちらが皆様の滞在する宿、『ホテル・グランディミトリエ』でございます。その名の通りディミトリ商会の建物ですので、気兼ねなくお過ごしください」

 運転手が言うが、ミュディには聞こえていなかった。

「す、すごい……お城よりすごい」
「にゃおお……なんかキラキラしてるー」
「くぅん。ぴかぴか」

 宿内は広いホール、ソファやテーブルは豪華なもので、受付カウンターですら気品を感じる。
 ミュアとライラはロビーのソファにダイブし、アーモとネマは周囲を観察している。ミュディはリザベルから部屋の説明や食事する場所などを聞いていた。

「食事は一階にあるレストランでいつでもお召し上がりいただけます。レストラン内では生オーケストラで音楽を楽しみながら食事ができます。そして最上階はバーとなっておりまして、夜景を楽しみながらお酒も楽しめます」
「こ、言葉もないですね……すごい」
「飲食代は全て無料。滞在費と遊興費ゆうきょうひも支給します。よろしければ明日、ベルゼブブの町を観光されてはいかがでしょう? 差し支えなければ私がご案内しますが」
「お、お金まではちょっと……その、申し訳ないというか」
「その心配はまったく不要です。ディミトリ商会はミュディ・ブランドの総売り上げ金だけで昨年度の総売り上げをすでに超えている状況ですので。会長からも『お金に関する心配はまったく不要。全ての経費はこちらで持つ』と命令を受けておりますので」
「は、はぁ……」

 趣味で始め、自分が好きなデザインをして作ったものがここまで評価されていることに、未だにピンとこないミュディだった。
 少しだけ悩んだが、ミュアとライラが尻尾をフリフリしてミュディを見つめていたので、好意に甘えることにした。やはり可愛い子には弱い。

「じゃあ、お願いします」
「かしこまりました。では明日、お迎えに上がりますので」

 リザベルは一礼して帰っていく。
 ホテルの従業員がミュディたちをスイートルームに案内した。
 やはり、スイートとなると豪勢で言葉もない。ミュディ、ネマとアーモ、ライラとミュアの三部屋で部屋を準備していたようで、荷物もすでに届いていた。
 荷物を確認していると、ミュアたち四人がミュディの部屋へ。

「にゃう。たんけんしたいー」
「ここ、キラキラして面白そう!!」

 ミュアとライラは尻尾がこれでもかと揺れている。
 案内してくれた従業員の説明では、ホテル内にも飲食店やお土産屋が充実しているらしい。そろそろお昼が近いので、昼食をホテルで食べることにした。

「じゃあ、みんなでご飯を食べに行こうね」

 ミュディの提案で、女五人はホテルの地下飲食店街へ。
 ホテルの地下には多数の飲食店が店を構え、お土産屋も充実していた。
 レストランは上層、地下は大衆客が入るような飲食店で、酒場やちょっと洒落しゃれたバーもある。お昼ということでどのお店も賑わいを見せている。

「わぅぅん……すごいいっぱい!!」
「ほんとだ……悪魔デヴィル族だけじゃなくて、獣人や蟲人むしびともいる。ベルゼブブが他種族の受け入れに寛容ってリザベルが言ってたけど……すごいなぁ」

 ミュディは感動した。するとミュアが袖を引っ張る。

「にゃあ。ごはんー」
「あ、ごめんね。アーモさん、ネマさん、何か食べたいのあります?」

 ネマは周囲の店を見回し、一軒の店を指さす。

「とりあえず、初日だし無難な食堂でいいんじゃない? アーモは?」
「あたしもどこだっていいさ。子供たちはどうしたい?」
「にゃあ。甘いのたべたい」
「くぅん。わたしもー」
「じゃあ、デザートに甘いの食べよっか」

 ネマが指差した店は、一般的な食堂だった。
 パスタや肉の種類が多くあり、ミュディたちは各々好きなものを注文。ミュディはサンドイッチ、アーモとネマは肉、ミュアとライラはパスタを注文。デザートにパフェを頼んだ。


 子供たちはパフェを美味しそうに食べ、ミュディは食後の紅茶を飲んだ。

「夕飯はレストランで食べようね」
「わぅぅ。レストラン……」

 ライラは楽しみなのか尻尾が揺れている。すると、ネマが言う。

「そういえば、部屋にドレスが掛けられてたね」
「ええ。あたしにピッタリなんだけど、何に使うのかね」
「あ、わたしもー」
「にゃあ。わたしもあったー」
「それ、レストランで着るドレスですね。ドレスコードっていうのがあるんだと思います」

 格式の高いレストランではドレスを着なくてはならないとミュディは知っている。ディミトリが手配したものだろうかと思い、部屋に戻って確認することにした。
 食事を終え、飲食店やお土産屋を見て回り、一行は部屋に戻った。
 確かに、ミュディの部屋にもドレスが掛けられている。しかもサイズはピッタリだ。

「レストランかぁ……そういえば、お姉様と一緒に何度か行ったっけ」

 ちょっとだけ、ビッグバロッグ王国が懐かしくなったミュディだった。


 ドレスに着替え、『ホテル・グランディミトリエ』が誇る最高級レストランで食事を終えたミュディたち。
 ビッグバロッグ王国で、高級料理の出る晩餐ばんさん会に参加したことがあるミュディですら圧倒された。
 食事内容はもちろん、食器からテーブルクロスに至るまで全てが高級品。ビッグバロッグ王国の王城にあるダイニングルームですらかすむ光景だった。
 ちなみに、ここで使われている食器や皿が、全て緑龍の村で作られたものだとミュディは気付いていない。
 アーモとネマはドレスが鬱陶うっとうしいのか顔をしかめているが、出てくる料理は全て平らげる。ミュアとライラは最初こそ興奮していたが、料理の説明と味で参ってしまい、最後のデザート以外は静かだった。
 明日はお菓子屋さんに連れていこうとミュディは誓い、そのことを二人に話すととても喜んでいた。
 子供たちを部屋に送り、お風呂に入れてあげるとすぐに寝てしまった。
 かなりはしゃいでいたし疲れていたのか、二人並んでベッドで寝息を立てる姿はあまりにも可愛らしく、ミュディもそこに交ざって寝たいくらいだった。
 二人を寝かせたミュディは自室に戻ろうとして……ネマに引き留められる。

「ミュディ、ちょっと付きあいなさいよ」
「はい?」
「お酒。ふふ、たまには女同士でお話ししましょ。まだ夜はこれからよ?」
「は、はい……お、お手柔らかにお願いします」

 ネマに連れていかれたのは昇降機前。そこにはアーモがいた。

「上にあるわ。聞いたら、あたしたちの貸し切りでいいみたい」
「わお、それは嬉しいね」
「か、貸し切り……こんな立派なところで」
「さ、行くわよ二人とも」

 アーモが昇降機に乗り込み、ミュディとネマも乗る。すると昇降機内にいた悪魔デヴィル族女性が案内してくれた。

「それでは、上に参ります」

 今夜は長くなる……なんとなく、ミュディはそう感じた。


 最上階のバーは、とても豪華で……もうミュディは表現することを諦めた。
 ビッグバロッグ王国とは違う。アシュトと帰省した時にお酒を飲みに行ったバーとは雰囲気が違った。
 室内にはミニ噴水があり、壁には大きな水槽すいそうが埋め込まれ魚が泳いでいる。水槽内ではキラキラした石や水草が揺れ、まるで絵画のようだった。
 椅子いすやテーブルも豪華な装飾が施され、ミュディたちは窓際の一番いい席に案内された。

「わぁ~……すごい!!」

 窓の外は、まるで宝石箱……ベルゼブブの町の明かりがキラキラと輝いていた。
 ミュディが外の景色に見とれていると。

「この子には弱めの……そうね、甘いのをお任せで」
「あたしとアーモはキツイのをよろしくね」
「かしこまりました」

 いつの間にかウェイターが来ていた。ネマは飲んでいないのにごきげんだ。

「ふふ、飲み放題だって。ディミトリも粋なことするわね」
「ミュディ、勝手に頼んじゃってごめんね。なんか声掛けづらくって」
「い、いえ。ありがとうございます」

 アーモにお礼を言うと、お酒が運ばれてきた。おつまみに綺麗きれいなチコレートがいっぱい並ぶ。

「こちら、ブラックブラッドのカクテルでございます。酒精しゅせいが強いので一口ずつ、お楽しみください」
「お、いいわね」
「強いのは大歓迎よ!!」
「そしてこちら、『花妖精の蜜酒フェアリーミード』になります。花妖精の採取した最高級のシロップを使ったお酒です」
「花妖精……フィルちゃん以外にもいるのかな」

 蜂蜜のような液体で満たされたグラスを受け取るミュディ。
 三人はグラスを掲げる。

「じゃ、かんぱい」
「かんぱーい!!」
「かんぱいです」

 カチン、とグラスを合わせ、さっそく酒を口の中へ。
「わ、美味しい……甘いけど飲みやすい」と、ミュディ。
「っくぅぅ~っ!! 確かにこれキツイわね」と、アーモ。
「でも美味しい!! もう一杯!!」と、ネマ。
 ネマがお代わりを要求。一口で飲み干し、つまみのチコレートを食べる。
 ミュディもチコレートを一つ。とても甘い。

「ん……美味しいけど、こんな夜に甘いもの食べて大丈夫かなぁ」

 ミュディが心配そうな顔をすると、アーモが背中をパシッと叩く。

「なーに言ってんの。あなたは真面目ねぇ、たまには悪いことしてもいいのよ? そうよね、ネマ」
「そうそう。外に出た時くらい、はしゃがなきゃ!!」
「は、はい!!」

 そう言えば、アーモとネマと一緒に飲んだことはない。というか、この二人と一緒に行動するということ自体、ミュディには経験がなかった。
 改めて思う。この二人は『大人の女性』だ。

「あら、おつまみなくなりそうね……あのー、お魚系をくださーい」

 アーモは、深いスリットから覗く生足を豪快ごうかいに見せていた。足を組んでいるせいで下着が見えそうだが、そんなことまるでお構いなしと楽な姿勢でいる。それに、ドレスから覗く胸元やき出しの肩や腕がとてもなまめかしい。褐色かっしょくの肌は薄暗い室内ランプに照らされ、これでもかと色気を放っている。

「次は……そうね、あたしも甘いの飲もうかしら」

 ネマも同様だ。アーモと同じく色気がある。
 少しだけ赤く染まった褐色の肌がなまめかしい。お酒やおつまみを運んでくる男性悪魔が目を合わせないように必死になっていた……それに比べ自分は子供っぽい、ミュディはそう思った。
 スタイルには自信がある……とまではいかなくても、胸もそこそこあるし体重だって重いわけではない。
 アシュトが見たら硬直しそうになるドレスだって似合っている自信はある。でも……二人と並ぶと、やはりどこか子供っぽい。
 歳を重ねた大人の魅力。ミュディはまだまだ二人に及ばないと思っていた。

「いいなぁ……」
「「ん?」」
「え、あ、いや……その、お二人は綺麗だなぁって」
「「…………」」

 アーモとネマは顔を見合わせ噴き出した。そして、ミュディの肩を抱いたり頭を撫でたりする。

「あはは、あたしらが綺麗ならあんたは可愛いね!! うらやましいわ!!」
「そうねぇ。あんた、抱きしめるとすっごくふわふわだしいい匂いすんのよ!! ああ可愛い!!」
「ひゃわわっ!? あの、あの」
「ほらほら飲んだ飲んだ!!」
「そうそう、まだまだ夜はこれからよ!!」

 この日、ミュディは酔い潰れてしまうのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

「にゃうー」
「わぅぅ」
「はいはーい、ちょっと動かないでねー」

 ミュディは、ミュアとライラに新しく作ったドレスを着せ、軽くお化粧をしていた。
 アシュトが作ったクリームを塗り、髪をかして整えていく。くすぐったいのか、身動みじろぎするミュアとライラの耳と尻尾がふるふる揺れた。
 そんな動きが可愛く、ミュディの手が止まってしまう。

「あぁ可愛い~♪ ふふ、二人ともすっごくいいよぉ」
「ミュディ、まだー?」
「くぅん。早くいきたいー」
「あ、ごめんね。もうちょっと……」

 アーモとネマは支度を終え、ミュディの化粧を待っている。ちなみにミュディにならい二人も薄化粧をしていた。野性的で健康的な美しさが、ミュディの考案した少し露出の多いドレスとマッチして大人の色気を出している。
 今日は、ディミトリ商会が新しくオープンする『ミュディ・ブランド総本店』の完成式典。ミュディはそこで挨拶し、新しくデザインしたドレスや小物を紹介することになっている。
 式典には、ベルゼブブのファッション雑誌社から取材が来ることになり、ベルゼブブの有名デザイナーも多く集まるという。式典後は食事会も開催される予定だ。
 控えめなミュディは緊張していたが、それと同じくらいワクワクしていた。
 ベルゼブブの有名デザイナーが集まる。もしかしたら、挨拶したりお話ししたり、自分の作ったものに対する率直な意見を聞けたりするかもしれない。
 緑龍の村では、ミュディのデザインや小物に意見する者はいなかった。
 それが物足りなく、ちょっとしたスランプの原因でもあった。だが……今日、この機会はミュディにとって望むもの。自分を持ち上げようとする者はいない。厳しい意見や評価をしてくれるだろう。

「にゃぶぶ……ミュディ、くすぐったいー」
「あ、ごめんね」

 ミュディは、ミュアのほっぺたをがっしりと掴んでいたようで、慌てて手を放した。

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