大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑩

第296話、いつもの日常へ

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 ビッグバロッグ王国から帰った俺は、エルミナに付きあわされ川釣りに出かけていた。
 ミュディやシェリーとはずっと一緒だったけど、エルミナ、ローレライとクララベルとは一月ほど離れていた。エルミナの次はクララベルと一緒に遊ぶことになっている。
 俺は川べりで釣竿を掴んでのんびりしていた。

「…………きたっ!!」

 川魚は引きがそんなに強くないので竿を引くだけで釣れる。
 竿を引くと、釣り針にはイキのいい川魚がぴちぴちと暴れていた。
 すると、すぐ近くにいたエルミナも。

「よっしゃきたーっ!!」
「おお!!」

 エルミナも釣れた。
 これで十二匹目……ちょっと釣りすぎたかな。
 そう思っていると、背後から二人の銀猫たちが声をかけてきた。

「ご主人さま、火の準備が整いました!」
「調理の準備も完了でーす!」
「わかった。エルミナ、そろそろいいか?」
「そーね。大漁大漁♪」

 俺は、タライに入れていた魚を二人の銀猫……ナナミとミリカのベリー農園コンビに渡す。
 この二人は、護衛兼調理係だ。最初はミュアちゃんを連れてくる予定だったけど、シルメリアさんからの罰で仕事に没頭している。ライラちゃんやルミナもだ。
 なので、ちょうどベリー摘みを終えてジャムの仕込みを終えた二人を連れてきたんだ。

「ねぇねぇ、塩焼きにしましょ!! あんたたちも一緒に食べなさいよ」
「で、でも。わたしたちは」
「いーからいーから。ね、アシュト」
「ああ。二人じゃ食べきれないしな」
「ナナミ、ご主人様と一緒にお昼にしよう!!」
「み、ミリカぁ……」

 ナナミはミュアちゃんの次、ミリカはその次に若い銀猫だ。
 気弱なナナミをミリカが引っ張っていくという構図……うん、仲良しでなにより。
 折れたナナミは、ミリカと一緒に魚の調理を始める。
 川魚のワタを取り、細い串に刺して遠火で炙る。四人なので十二匹だと一人三匹……けっこう多いな。
 
「にゃう……魚、魚」
「ごくり……いい匂いですぅ」

 うん、大丈夫だなこりゃ。
 ナナミもミリカも魚を見る目の色が違う。
 
「川魚なんて久しぶり! 昔はメージュたちと一緒に川釣りしてその場でさばいて食べたけど……今度はメージュたちも誘おっと」
「そうしろよ」
「うん。あ、もちろんアシュトも一緒ね」
「ああ、わかった」

 エルミナと銀猫二人で食べた川魚は、とても絶品でした!

 ◇◇◇◇◇◇

 ミュアは、新居のモップ掛けをしていた。
 
「よいしょ、よいしょ」

 ビッグバロッグ王国に無断で付いていったことでた~っぷり叱られた。
 銀猫全員に心配をさせたことをしっかり謝ったあとは、お土産の時間だった。
 一人一人に選んだお土産を渡すと、みんなが頭を撫でてくれた。
 一番不安だったシルメリアにもお土産を渡したら、優しく微笑んで受け取ってくれたことは忘れられない。

「にゃう……」

 ミュアも銀猫の端くれ。掃除は不得手ではない。
 だが、一人で大部屋を掃除するのはやはり気を遣い、疲れてしまう。
 そんなときだった。

「…………みゃう」
「あ、ルミナ。どうしたの?」
「…………手伝う」
「え?」
「手伝う」

 ルミナが、ネコミミをピクピクさせながらそんなことを言った。
 ミュアは驚き、目をパチパチさせる。

「なにすればいいんだ。さっさと教えろ」
「にゃ、うん。えーっと……まど、ふいて」
「わかった。ぞうきん?」
「うん。最初は水ぶきして、そのあとに乾いた布でみがくの」
「わかった」

 ルミナは言われた通り、窓ふきを始めた。
 聞くタイミングを逃してしまった。
 ミュアは床拭きを続ける。

「…………」
「…………」

 きゅっきゅと窓を拭く音、ごしごしと床を磨く音だけが響く。
 なんとなく無言で作業をする。
 すると、ルミナがポツリと呟いた。

「…………悪かったな」
「にゃう?」
「…………あたいが付いて行ったから怒られた」
「にゃあ。それちがう。わたしが付いて行っただけ! ライラもそう!」

 アシュトに付いて行こうと言ったのは、ルミナだった。
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「ご主人さまのおうち、すっごく楽しかった!! 怒られたのはしょうがないけど……それでも、行ってよかった!! にゃう!!」
「…………ふん」

 ルミナはそっぽ向く。
 だが、尻尾だけは嬉しそうに揺れていた。
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