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日常編⑬

第341話、たまにはシルメリアさんとのんびり釣りを

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 デーモンオーガの皆さんが休日に入り、竜騎士たちの野外演習も本格化した。
 オーベルシュタイン領土の強力な魔獣相手に集団の連携訓練、そして狩った魔獣は竜騎士たちが解体、村の巨大冷蔵庫で保管している。
 もちろん、シェリーも参加している。
 この村に来た頃とは別格の強さだ。得意の氷魔法も強力になり、かつて自分に毒を食らわせた大蛇と同種の奴を見つけた時なんて、あの頃の復讐と言わんばかりに暴れたらしいからな。
 というわけで、現在村は竜騎士たちがいない。村の護衛にさらサラマンダー族が入っていた。
 竜騎士たちが怪我をする可能性もあるので、俺とフレキくんとエンジュは薬院に詰めている。
 とはいっても、この数日怪我人はゼロ……竜騎士たちがどれほど強いかよくわかる。
 
「あー……ヒマやね」
「ヒマなのはいいことじゃないか」
「フレキぃ~……ウチ、眠い」
「だめ。ちゃんと仕事しなきゃ。ほら、一緒に病歴記録を整理しようよ」

 フレキくんとエンジュには住人の病歴記録を整理してもらっている。
 フレキくんは真面目にやってるけど、エンジュは飽きたのかフレキくんに抱き着いたり胸を押し付けて困らせている。フレキくんも慣れてるのか、苦笑して引き剥がしている……なんか熟練夫婦みたいだな。
 エンジュがだれているので休憩することにした。

「師匠」
「ん?」
「そういえば師匠、最近休んでないですよね? ここはボクとエンジュに任せて、何日かお休みしたらどうですか?」
「え、そうなん? だったらウチも」
「エンジュはダメ。昨日も一昨日も休んでただろ。その間、師匠が一人で薬院に詰めていたんだから」

 まぁ確かに。フレキくんは人狼族の村に帰ってたからな。
 その間、俺とエンジュ……正確には俺一人で怪我人とか治療してた。エンジュは休み。

「師匠、明日と明後日はボクが薬院にいますので、ゆっくり休んでください」
「フレキくん……うん、じゃあそうさせてもらうよ」
「え、じゃあウチとフレキは二人っきり!!」
「邪魔者で悪かったな……」

 ちなみに、マカミちゃんも来たので三人っきりだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 というわけで、俺は休みになった。
 たまにはのんびり釣りでもと思い、エルミナの釣り道具を借りに部屋に向かう途中。

「お疲れ様です。ご主人様」
「あ、シルメリアさん。あの、エルミナいます?」
「はい。お部屋に」
「ありがとう」

 シルメリアさんだ。
 銀猫たちは交代で休みを取ってるらしいけど……シルメリアさんが休んでいるところは見たことない。
 そういえば、シルメリアさんと何かをやるってことがないな……よし。

「あの、シルメリアさん」
「はい?」
「明日、ちょっと出かけませんか?」
「……え?」
「いえ。釣りに行こうと思いまして。釣った魚を調理する人が欲しいんです」
「私、ですか?」
「はい」

 他の銀猫を連れて行くことは何度かあったけど、シルメリアさんはほとんどない。
 ちょっと卑怯だが、こう言えば断らないのが銀猫族だ。

「わかりました。ご主人様のお供を務めさせていただきます」
「うん。じゃあ明日」

 というわけで、エルミナから釣り道具を借りて釣りへ。

 ◇◇◇◇◇◇

「よーし、釣るわよ!!」
「にゃあ!!」

 翌日。エルミナとミュアちゃん、シルメリアさんと俺の四人でアスレチックガーデンへ。
 アスレチックではハイエルフたちが遊んでいる。俺たちは桟橋で釣りをしていた。
 ミュアちゃんはエルミナと一緒に釣りをして、俺はシルメリアさんと一緒にバーベキューコンロの準備だ。釣りはもう少し後で。

「ご主人様、準備ができました」
「こっちもできたよ。じゃあ釣りをしようか」
「はい、ご主人様」

 シルメリアさん、表情が柔らかい気がする。
 少しは気を抜いて休んでくれるといいけどな。エルミナとミュアちゃんなんて釣りに夢中だし。

「にゃあ!! エルミナ、竿ひいてるー」
「お、よーしそのままゆっくり……」
「にゃおーっ!!」
「うっぐぇぇっ!?」

 ミュアちゃん、力任せに竿を引いた……するとデカい魚がざばーっと釣り上がる。いやいやいや、ミュアちゃんよりもデカい魚を一本釣りかよ? しかも釣り上げた魚がエルミナを直撃、そのまま押しつぶされた。

「ちょ、ミュア……たすけて」
「にゃう。ほい」
「し、死ぬかと思った……ってかデカいわね」
「にゃあ。いっぱい食べれる!」

 なんか楽しそうだ。俺たちも参加しよう。

 ◇◇◇◇◇◇

 俺とシルメリアさんは、エルミナたちから少し離れた場所で、隣同士に座った。
 騒がしいエルミナたちとは違い、会話なくのんびりと釣り糸を垂らす。

「…………」
「…………」
「…………」
「……ご主人様、お茶でも」
「あ、どうも」

 シルメリアさんは釣竿を支え棒に引っ掛け、ポットから緑茶を注いでくれた。
 チラリとシルメリアさんを見る。
 肩にかかるくらいの銀髪、大きくクリっとした銀目、小顔でスタイルもよく、ネコミミが良く似合う大人の女性って感じだ。出会ってそこそこ経つけど、シルメリアさんは変わらない。

「ご主人様」
「え、ああいや、その……なんでもないです」
「いえ、竿が引いてます」
「え」

 確かに竿が引いていた。
 しかも引きが強い。両手で摑み踏ん張る……が、やばい。

「っぐ……重い!!」
「ご主人様、失礼します」
「え」

 なんと、シルメリアさんが俺の背中に抱きついて脇から手を伸ばし、竿を摑んだ。
 やばいやばい。柔らかい膨らみが背中に当たって気持ちいい!!

「……っふ!!」

 シルメリアさんが力を入れると、竿が一気に軽くなった。
 そして、ミュアちゃんが釣ったのと同じ巨大魚が釣れた。いやいや、この湖ってこんなのしか釣れないのかよ。

「ふぅ……失礼しましたご主人様」
「い、いえ……柔らかかったです」
「はい?」
「い、いや。それより、そろそろお昼にしよう。あっちも釣れてるみたいだし」

 ミュアちゃんたちもかなり釣れてるようだ。
 そろそろお昼の準備をしなくちゃね。

「では、食事の支度をします」
「は、はい」

 結局、大量に釣った魚は俺たちでは食べきれず、アスレチックにいたハイエルフたちも巻き込んでバーベキューとなった。
 シルメリアさんの手伝いをしたけど、けっこう忙しかったから休めたとは言えないかも。
 今度は二人きりで行こう……。
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