大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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2巻

2-2

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 ◇◇◇◇◇◇


 ハイピクシー。
 初めて聞いた種族だが、エルミナたちは知っていた。けっこう昔、ハイエルフの里にも住んでいたらしい。  
 だが、ハイエルフの里にあるユグドラシルのマナが薄くなり、よりよいマナを求めて旅立ってしまったのだとか。
 ハイピクシーの個体は全て女性で、出産ではなく分裂に近い方法で増えるそうだ。
 主食はマナ。俺たち風に言うと魔力そのもの。 
 しかし飲食は可能で、セントウやブドウ、新しく実ったオレンジやバナナを美味おいしそうに食べていた。マナは十日に一度、ユグドラシルの樹に集まって吸収すればいいらしく、食事は単なる趣味の一つだそうだ。
 住まいは鳥の巣箱のような家を作って、村の中にある樹木の上に、いくつか設置した。
 箱の中には小型のベッドや椅子やテーブルも置いてある。もちろん全てエルダードワーフ製。布団や枕などは魔犬族の少女たちに作ってもらった。
 たった数日しか経ってないのに、今や、村の中にある木の上はハイピクシーの家でいっぱいだ。
 ハイピクシーたちは、村人たちとすぐに馴染んだ。
 特に、子供たちとは気が合うのか、一緒に遊ぶことが多い。

『わーいっ‼ こっちこっち~っ‼』
「にゃうーっ‼ まてまてーっ」
「わふーっ‼」
『捕まらないよーっ‼』
「まんどれーいくっ‼」
「あるらうねーっ‼」

 ミュアちゃん、ライラちゃん、マンドレイク、アルラウネたちは、ハイピクシーとよく追いかけっこして遊んでいる。
 フワフワ飛ぶハイピクシーたちを捕まえようと、村中を走り回っているのだ。
 そんなハイピクシーのリーダー、フィルハモニカ。通称フィルは、俺の肩を椅子代わりにして、のんびりすることが多かった。というか、そこが定位置であるかのようにいつも座っている。

『みんなはユグドラシルからマナを吸収するけど、わたしはアシュトから吸収してるの』
「え、そうなのか? ……なんで?」
『だって、アシュトを経由したマナは深みがあって美味しいのよ。この味はお子様にはわからないわね』
「そ、そうなんだ……」

 いつの間にか、フィルに魔力を吸われていたらしい。
 俺の魔力って深みがあるのか……よくわからん。


 ◇◇◇◇◇◇


 数日後。
 ユグドラシルで魔力を補給したハイピクシーたちと、俺から魔力を吸収したフィルが集まり、こんなことを言った。

『アシュト、小瓶をちょうだい』
「小瓶? 何に使うんだ?」
『言ったでしょ、お礼をするのよ‼』
「?」

 とりあえず、言われた通りに小瓶をいくつか渡す。
 ハイピクシーは三十人。三人で一個として合計十個の瓶を渡した。元々はジャムを入れるための容器で、サイズはフィルたちより少し小さい。
 ハイピクシーのリーダーであるフィルは、仲間たちに号令をかける。

『じゃあみんな、手分けして行くわよーっ‼』
『『『『『おーっ‼』』』』』

 そう言って、森の中へ消えていった。
 よくわからないまま見送り、俺は村の外れに向かう。するとそこにはエルダードワーフのアウグストさんと、新しく建設中の建物があった。

「ん……おう村長、どうした?」
「お疲れ様ですアウグストさん。ちょっと気になって……」
「はっはっはっ‼ まだ時間が必要だ。もう少し待ってくれや」
「はい。かしてるようで申し訳ない」
「まぁ、村長の希望をふんだんに取り入れた建物だ。絶対に手抜きはできねぇ」

 そう、今建てているのは俺が依頼した『図書館』である。
 ビッグバロッグ王国にある巨大図書館を参考に、アウグストさんに図面を引いてもらった。
 形は円柱形で、木の支柱を建てて周囲に煉瓦レンガを積み上げていく。内壁ないへき一面が本棚となり、フロアは読書スペースにする予定。階段をもうけ、階層を作るつもりだ。
 図書館が完成したら、ハイエルフ長のヂーグベッグさんが書いた本を収める手はずになっている。
 今も、交易の度に大量の書物が送られてくる。それらは今、酒蔵の一つを倉庫代わりにしていたまないように仕舞しまってあるけど……余談だが、俺が本を喜んでいたことを伝えたら、ヂーグベッグさんは歓喜したのだとか。
 まぁ、本はありがたいので素直に受け取っておく。
 作業中のドワーフと銀猫族を眺めていると、アウグストさんが言った。

「あのよ、村長……文句というわけじゃねぇんだが、ちと相談がある」
「はい?」
「銀猫族の手伝いはありがてぇ。身体能力はたけえし重い丸太も難なく持ちやがる。でもよ、やっぱわけえ女を手伝わせるのはちとなぁ……あの子たちは大工仕事だけじゃなく、オレらの家事や炊事もしてくれるし、さすがに申し訳ないぜ」
「あー……」

 現在、銀猫族はドワーフの手伝いと村の手伝いの両方をこなしている。
 村の手伝いは、各家庭の家事や農園の整備など、かなりの激務だ。大工仕事だってもちろん大変で、手や指を切った銀猫たちが手当てをしてもらいに診察室を訪れることも少なくない。
 力のある男手が欲しいな……でも、そんなに都合よく人は増えない。

「……なんとか他の人手を増やしたいですけど」
「悪い、そんなつもりじゃねぇんだ。忘れてくれ」

 アウグストさんは神妙な顔で作業に戻っていった。
 難しい問題だ。こればかりは魔法じゃどうしようもない。


 ◇◇◇◇◇◇


 家に帰ろうと歩いている途中、フィルが戻ってきた。

『アシュトアシュト、こっち来て‼』
「おかえりフィル。な、なんだ?」
『いいから‼』

 フィルに付いていって到着したのは、俺の家。
 玄関前にはハイピクシーが集まっており、家の前に置いてある丸太のテーブルの上に、フィルたちが持っていった小瓶が並べて置いてあった。中には乳白色のトロッとした液体が入っている。

『これ、マナのお礼よ‼』
「フィル、この液体は……?」
『ふふーん。これは『花妖精の蜜フェアリーシロップ』。わたしたちハイピクシーにしか作れない、とーっても美味しいシロップなんだから‼』
「へぇ~、初めて見たなぁ。ちょっと味見していいか?」
『どうぞ‼』

 液体に小指を軽く付けてすくうと、まるで糸のようにトローッとシロップが伸びた。
 そのままペロッとめる……不思議な甘さだ。濃厚でトロトロだが喉越のどごしがよく、飽きが来ずにいつまでも舐められる。これは美味い‼

『花の蜜や森の木の実をくだいて混ぜ合わせて、わたしたちのマナで美味しく味付けしてあるの‼ お酒に混ぜればどんな種類でも『花妖精の蜜酒フェアリーミード』になるし、パンやクッキーに塗ればたちまち最高級のお菓子に早変わり‼』
「ははは、そうなのか?」
『まーね‼ 大昔、人間に作ってあげたことがあってね。その時にそう言われたのよ‼』
「へぇ~……」

 フィルは誇らしげに胸を張り、他のハイピクシーたちも嬉しそうに俺の周りをクルクル飛んだ。
 それからも、ハイピクシーたちは定期的に『花妖精の蜜フェアリーシロップ』を作ってくれた。
 驚いたことに、ワインだろうがエールだろうがウイスキーだろうが、このシロップを混ぜるとたちまち蜜酒みつしゅに変わってしまった。しかも甘くて飲みやすく、ジュースみたいなお酒だ。
 また、フィルの言った通り、パンやクッキーに塗ってもとても美味しい。最近、ミュディがシロップを使った新しいお菓子レシピを考え始めている。
 この村でのハイピクシーの仕事は、シロップ作りといったところかな。
 ちなみに、あとになって次のようなことも明らかになる。
 ビッグバロッグ王国で、この『花妖精の蜜フェアリーシロップ』が、エリクシールと同列の国宝に指定されているということ。そしてエリクシールが保管されてる『神物庫しんぶつこ』に、かつてフィルが人間に贈ったという『花妖精の蜜フェアリーシロップ』が保管されているということ。
 そんなことも知らず、俺たちはシロップを舐めまくった。
 ハイピクシーたちが移住し、村はさらに活気に包まれた。
 そういった中、俺の想像をはるかに超えた来訪者が現れたのである。



 第三章 焱龍えんりゅうヴォルカヌスとサラマンダー族


「ほぉぉ~……いいマナで溢れてやがる。さすがはムルシエラゴの眷属けんぞくと言ったところか。なぁオメーら‼」
「「「「「へいっ‼ オヤジっ‼」」」」」

 なんだろう、この野性味溢れる人(?)たちは。
 デーモンオーガの両家が狩りで不在の中、いきなり村にやってきたのは、三メートル近い大男と、それに付き従う赤いトカゲのような人たちだった。
 それに対応したのは当然、村長である俺。
 護衛にシェリーを付けて、村の入口で応対する。
 村民に不安を与えないために、いつも通りの仕事を続けるようにと事前にミュディに伝令を頼んでおいた。
 そして、俺は緊張で汗をダラダラきながら大男の前に立つ。

「カッカッカ、そうビビんじゃねぇよ。取っていやしねぇ。ちと昔のダチに話を聞いて、オレも見に来たんだよ」

 大男は、俺の肩をバンバン叩く。

「は、はぃ? っどわぁっ⁉」
「お、お兄ちゃんっ⁉」

 その力があまりにも強く、体勢がくずれて尻もちをついてしまった。

「そうなって‼ 肩のチカラ抜けや‼」

 どうやら敵意はないようだけど……

「こら、私のアシュトくんをイジメないでよ」

 ふわりと、聞き慣れた声が聞こえた。
 俺とシェリーの後ろから現れたのは、いつも通りフワッとした笑みを浮かべるシエラ様だ。
 大男はゲラゲラ笑う。

「よぉムルシエラゴ。遊びに来てやったぜ‼」
「まったく。相変わらず暑苦しいわね、ヴォルカヌス」
「「……え、ヴォルカヌス?」」

 俺とシェリーは揃って驚いた。
 シェリーの手を借りて立ち上がり、目の前の大男を凝視ぎょうしする。

「オレは焱龍ヴォルカヌス。よろしくな、アシュト‼」

 目の前の大男は緑龍りょくりゅうムルシエラゴ様と同じ……『神話七龍』の名を持っていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 人数が多いので、大宴会場だいえんかいじょうに移動した。
 というか、ヴォルカヌス様が連れてきたのは人じゃない。真っ赤な鱗に長い尻尾しっぽ、顔は龍のごと異形いぎょう、二足歩行の赤いトカゲのような獣人じゅうじん……いや、『亜人あじん』だった。
 人間の特徴を持ち、一部にけものの形質を持つ者たちを獣人と呼び、魔獣の特徴を持ち、一部に人間の形質を持つ者を亜人と呼ぶ。似ているようだがまったく違う。
 獣人は、人間と交わることが可能だが、亜人の多くは卵生のため、人間と交わることができない。
 見た目も生態も人間とは大きくかけ離れている、独特な種族。
 せっかく大宴会場に移動したのに、赤いトカゲのような亜人たちは壁に沿って一列に並んで微動びどうだにしなかった。接客をお願いした銀猫族たちも困惑してる。

「あいつらは気にすんな。オレの舎弟しゃていとして上下関係は叩き込んである」
「は、はぁ……」

 ヴォルカヌス様の言葉に、戸惑とまどい気味に返事をする。
 大宴会場のど真ん中には一卓の大きな座卓が置かれ、ロックグラスにはシェリーが出した丸い氷、その脇に村で作ったウイスキーが置かれている。
 座卓に着いているメンバーは、俺とシェリーとシエラ様、ヴォルカヌス様と赤いトカゲ衆の代表らしきゴツゴツのトカゲ男。
 俺はウイスキーボトルをつかみ、飲み口をヴォルカヌス様と赤いトカゲ男に差し出す。

「ど、どうぞ」
「おう」
「かたじけない」

 ヴォルカヌス様と赤いトカゲ男用のグラスにウイスキーをぎ、続いて俺とシェリーとシエラ様のグラスにも注ぐ。
 全員に行き渡ったところで、さかずきかかげた。

「じゃ、乾杯」

 ヴォルカヌス様はグラスを合わせず、一気にあおる。

「っか‼ なかなかウメェじゃねぇか‼ なぁグラッドよ‼」
「へい、オヤジ」

 改めて、ヴォルカヌス様を見る。
 年齢は四十代ほどだろうか。燃え上がるような赤髪、側頭部には無数に枝分かれした二本の角が生えている。
 真っ赤な『キモノ』という伝統衣装に身を包み、腹にはなぜか手拭てぬぐいを巻いていた。
 グラッドと呼ばれたもう一人のトカゲ男性は、バルギルドさんやディアムドさんに匹敵ひってきする体格だが、決定的に違うのは全身に無数の傷が刻まれていることだ。顔にも傷があり、片目が完全に潰れている。まるで歴戦の戦士のような感じ。
 すると、シエラ様が言う。

「ところでヴォルカヌス。ここに来た用件はなにかしら?」
「ああ、ちと頼みてぇことがあるんだよ。そこのアシュトによ」
「え」

 指名されたのはまさかの俺だった。
 ヴォルカヌス様はグラスを置き、ウイスキーのボトルを掴んでそのまま飲み干して一息。

「ちと風呂入ってくるから、こいつらを頼むわ」
「……は?」
「お、お風呂?」

 シェリーが思わずといった風に聞き返すと、ヴォルカヌス様は頷いた。

「おう。最近身体がかゆくてなぁ……数万年ぶりにひとっ風呂ぷろ浴びたくてよ。それで、オレが風呂に入ってる間、こいつらをオメーに預ける」
「……か、構いません、けど」
「そうか‼ じゃあ頼むわ」

 わけわからん。風呂ってなんだよ?
 その時、シエラ様がクスクス笑いだした。

「もしかして、地中にもぐるのかしら?」
「それ以外、オレを満足させる風呂なんざねぇよ‼ ま、二千年くらいで戻るから、あとは頼んだぜ」
「…………はい?」

 に、にせんねん?
 ちょっと待て、どこに行くつもりだ? 地中?
 シェリーを見ると、首を捻っていた。まあそりゃそうか。
 事情を知ってそうなシエラ様を見たら、笑顔で説明してくれる。

「あのねアシュトくん。この世界の地面の下をず~~~っと掘り進めていくと、す~~~っごくドロドロした炎の水が流れているの。ヴォルカヌスはそこをお風呂代わりにしてるのよ」
「へ、へぇ~……」
「ま、そういうこった。なんならムルシエラゴ、オメーも来るか?」
「イ・ヤ♪」
「カッカッカ‼ オメーじゃ燃え尽きちまうからな‼」

 スケールがでかすぎる。
 すると、ヴォルカヌス様は立ち上がり、壁に控えてる舎弟たちにいきなり怒鳴どなった。

「いいかオメーらぁぁっ‼ 今日からオメーらはアシュトの下につけ‼ アシュトの手足となって働けやぁぁっ‼」
「「「「「へいっ、オヤジ‼」」」」」
「グラッド、あとはオメーに任せる」
「へいオヤジ‼ アシュトの旦那だんなに付いていきやす‼」
「おう。じゃあオレはひとっ風呂浴びてくらぁ」

 ヴォルカヌス様がそう言った瞬間、今まで微動だにしなかったトカゲ亜人たちが左右縦二列に並び、中腰になって両手をひざに載せて顔を伏せた。

「じゃあなアシュト。二千年後に来るからよ」
「あ、は、はい」

 そう言って、ヴォルカヌス様はトカゲ亜人の作った道を通って去っていった。
 まるで炎の嵐。そんなことを思いながら、俺はヴォルカヌス様の背中を見送った。


 ◇◇◇◇◇◇


 蜥蜴リザード族。
 亜人の一種でトカゲのような風貌ふうぼうであり、強靭きょうじんな腕力と脚力を持つ。体色は緑か茶色で、個体によって色が異なる。
 個体はオスとメスに分かれ、交尾によりメスは卵を地中に産む。 
 リザード族は寒さに弱く、冬になると暖かい場所に移動するか、移動が困難な場合は冬眠することもある。
 ちなみに、オーベルシュタインの冬は三年に一度。俺はまだ冬を経験していない。  
 以上がオーベルシュタインに存在するリザード族の特徴だ。
 ただ、今回俺の村に来た人々はリザード族とは少し違う。『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』には、こう書いてあった。
 炎蜥蜴サラマンダー族。
 神話七龍にして、この世界に『熱』をもたらした偉大なる『焱龍ヴォルカヌス』の加護を受けた希少種族。
 最大の特徴は、その真紅しんくの鱗と、トカゲから進化した龍を思わせる顔を持つこと。
 寒さを克服し、自らの体温を上昇させて炎を吐くことも可能。
 戦闘力もリザード族を上回り、亜人の中でもトップクラスの強さを持つ。
 また、彼らは上下関係に重きを置いている。
 彼らの理論によると、この村でいうなら、新参者である彼らの立場は一番下。ハイピクシーたちよりも下である。
 新しく村に来たサラマンダー族は総勢七十人。
 オスが四十人、メスが三十人と、村にいる種族の中では最大の数だ。
 渡りに船とはこのことだろうか。サラマンダー族にはエルダードワーフの補助を任せた。これにより、銀猫族は力仕事から外れ、村の施設や家事などの仕事を専門とするように。
 サラマンダー族とエルダードワーフの相性はとてもよかった。
 ある日、図書館建設中の光景。

「おう、そっちを支えてろ‼」
「へい、親方‼」
「おーいこっちも手ぇ貸せや‼」
「ウッス‼」
「おい新入り、森まで資材確保に行くぞ‼」
「へい‼」

 と、サラマンダー族の威勢がいいので、ドワーフたちがのびのびと指示を出している。
 銀猫族は若い女性だったから、どうしても遠慮があったようだ。しかも、先ほど述べた通りサラマンダー族は上下関係に厳しいため、エルダードワーフたちに逆らうこともない。
 エルダードワーフたちは、いい部下ができたことを喜び、仕事終わりにエールをご馳走ちそうしたり、それぞれの家に招いて宴会をしたりしてる。
 これにより、村の建築仕事は大いにはかどった。
 顔は怖いけど、サラマンダー族っていい人ばかりだ。
 ただし、ちょっと困ったこともある。

「アシュトの叔父貴オジキ、お疲れ様です‼」
「お疲れ様です、叔父貴オジキ‼」
「ど、どうも」

 サラマンダー族、俺のことを『叔父貴オジキ』と呼んで全力で挨拶してくる。
 なんでも、ヴォルカヌス様が認めた兄弟分だから、らしいけど……いちいち足を止めてお辞儀じぎしなくていいのに。しかも、中腰になって両手を膝に置くスタイル。
 ちなみに、サラマンダー族の各種族への呼び方はこんな感じ。
 銀猫・魔犬族の少女たちは『お嬢』、ドワーフたちは『親方』、ハイエルフたちは『姉御あねご』、子供たちとハイピクシーたちは『さん』付け、バルギルドさんとディアムドさんのことは『兄貴』と呼んでいる。シェリーとミュディは『あねさん』だし……よくわからん。
 まぁ、みんないい人だし問題はない。
 サラマンダー族のリーダー・グラッドさんは、バルギルドさんとディアムドさんに気に入られ、晩酌をともにするようになっていた。ガチムチ三人が集まって酒を飲む姿はちょっと怖いな。
 こうして、サラマンダー族は村に馴染んでいった。


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