大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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天の国へ新婚旅行!

第387話、新婚旅行~みんなと一緒~

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 みんなと個別デートを終え、今日は一日みんなと過ごすことに。
 午前中は浜辺で遊び、昼はバーベキュー、夜は町のレストランを予約しての食事だ。
 バーベキューの準備はカシエルさんとその部下の女性天使たちがやってくれるというので、俺たちは水着に着替えて海で遊ぶ。
 そういえば、エルミナ以外の水着を見ていなかった……いやはや、これはすごい。

「ど、どうかな?……ちょっと恥ずかしいかも」
「いや、似合ってる……うん、いい」

 ミュディは、白を基調としたワンピースという水着だ。
 スタイルのいいミュディ。大胆に胸元が開いているのを隠そうとする仕草がなんともいい。

「あたしはどうかな?」
「シェリーも似合ってる。いい」
「ふふ、ありがと」

 シェリーは青色。ミュディと似たようなワンピースタイプ。これまた似合っている……胸はミュディのが大きいけど、腰や足の細さはシェリーのが細い。

「お兄ちゃん、わたしはどう?」
「うん、かわいいぞ。よしよし」
「えへへー……でも、ちょっと子供扱いしてるー!」
「あ、あはは。ついつい」

 クララベルは銀色っぽい水着だ。フリフリが付いているんのが子供っぽい。
 なんとなく頭を撫でると、ちょっぴりむくれてしまった。そんなクララベルを撫でるのは、大胆なビキニを身に着けたローレライ……いやはや、とんでもないボディだ。

「クララベル。可愛いわよ、すっごく似合ってる」
「姉さま! でもわたし、姉さまみたいにおっぱい大きいのがいいなー……もみもみ」
「こ、こら! 触らないの!」
「やわらかーい! もみもみ!」
「く、クララベル! もう、この子は……んっ」

 とりあえず目をそらす俺。
 すると、すでに銛を持ったエルミナが、水着姿で浜辺にいた。

「おーい!! シェリーにクララベル、海に潜る約束でしょ? さっさといくわよー!!」
「あ、うん! よし、行くわよクララベル!!」
「おー!!」
「あ、変身はなしでね!」
「えー……まぁいっか」

 シェリーとクララベルはエルミナに合流し、そのまま海にダイブした。
 残された俺とミュディとローレライ。

「ねぇアシュト、ローレライ。あそこのコテージに行ってみない?」
「お、そういえばあったな。中に入ったか?」
「私とミュディは入ってないわね。せっかくだし見てみましょうか」

 浜辺に桟橋が掛けられ、その先に小さなコテージがある。
 海に浮かぶコテージとは中々しゃれている。街で買い物したり観光したりで誰も中に入ってないらしい。一応、俺たちの別荘の一部ということだ。
 水着姿で移動し、桟橋を渡り、コテージ内へ。

「わぁ~……すっごく綺麗!」
「確かに。休憩するには最適だな」

 室内は一部屋しかない。半円形の空間でテーブルやソファ、簡易キッチンや冷蔵庫、壁には本棚があり様々な蔵書が収められている。窓がドアになっており、テラスには昼寝ができるような椅子とパラソルが差してあった。

「見て、この階段……地下があるわよ」

 部屋の隅に、地下へ続く階段がある。
 さっそく降りてみると……これまた驚いた。

「う、ぉぉ……こ、怖いなここ」
「まさか、海の底とはね」

 ローレライが淡々と言うが、俺はかなり怖かった。
 海に浮かぶコテージの地下なんて考えればすぐわかる。スライム製のガラス部屋で、海底に作られたベッドルームになっていた。
 後で聞いた話だが、このスライム製ガラスは特殊な魔法で加工されており、鋼鉄並みの耐久性があるスライムガラスらしい。魔獣に噛みつかれてもヒビすら入らないとか。
 
「海の中のベッドルーム……素敵」
「ええ……ねぇミュディ、今日はここで寝ない?」
「あ、いいね。ベッドも大きいし、エルミナたちも呼ぶ?」
「ふふ、そうね。アシュトはどうする?」
「お、俺は遠慮しときます……な、なんか怖くて寝れなさそうだ」
「あら残念。ね、ミュディ」
「うん。…………あれ? ねぇローレライ、あれ」
「…………全く、あの子ってば」

 ミュディが指さした先には……純白のドラゴンに変身したクララベルが、背にエルミナとシェリーを載せて優雅に泳いでいる光景だった。
 どうやら、海底を満喫しているらしい。エルミナとシェリーも肺活量があるし、とても楽しんでるようだ。

「なんだか私も泳ぎたくなってきたわね……アシュト、ミュディ、行くわよ」
「うん!」
「お、おお」

 ローレライが変身してクララベルを追い、俺とミュディも海を満喫したのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 今日はお土産を買うため、全員で町にやってきた。
 ミュディと一緒にお土産屋さんを多く回ったが、みんなで来る場所には別に決めていたらしい。町の中心にある大きなお土産屋で、村のみんなのお土産を買うことにした。
 まず、俺が買うのは子供たちのお土産だ。ぬいぐるみコーナーに向かうと、いろんな動物のぬいぐるみが並んでいた。

「ミュアちゃん、ライラちゃん、ルミナ。マンドレイクとアルラウネかな」

 ミュアちゃんには灰色の斑模様ネコ、ライラちゃんには茶色い毛並みのイヌ、ルミナには黒猫、マンドレイクとアルラウネには色違いのリスのぬいぐるみを購入した。
 
「ウッド、フンババ、ベヨーテは……お、植物用栄養剤なんてあるのか」

 観葉植物用の栄養剤が売っていた。せっかくだしこれにするか。
 
「シロにはおもちゃかな」

 おもちゃコーナーに行くと、軽い素材でできた円盤が売っていた。どうやらこれを投げると飛ぶらしい。
 犬用おもちゃということで購入……まぁ、シロは犬じゃなくてフェンリルだけど、細かいことは気にしない。

「銀猫たちには天空産の紅茶葉、ドワーフとサラマンダーたちには酒、フィルたちには……お、乾燥させた果物の瓶詰めなんてあるのか。これにしよう。魔犬族とデーモンオーガ両家には……酒かな。あ、エイラちゃんにもぬいぐるみ買っていくか。フレキくんたちには何にしようかな……」

 悩みまくり、住人たちのお土産を購入。別荘に届けてもらうことに。
 自分の買い物が終わったのでエルミナたちの様子を見る。

「エルミナ、何買うんだ?」
「ハイエルフのみんなにはお菓子ね。みてこれ、天空都市にしかないラックベリーだって。おいしそうかも」

 エルミナの手には、チェリーみたいな実の入った瓶があった。どうやらハイエルフたちへの土産らしい。
 ほかのみんなを見ると、それぞれが悩みつつも選んでいる。
 ローレライは悪魔司書たちにケープを買い、クララベルは調理器具、シェリーは大量のお菓子を買った。シェリーは竜騎士たち一人一人に配るらしい……ちょっと妬けるな。
 お土産を買い、町をのんびりぶらつきながら、ミュディが観光マップ片手に見つけたカフェで昼食。そしてアーカーシュ様の神殿を見学し、夜はレストランでディナーを食べた。
 
 新婚旅行はあと七日もある。
 その次の日はみんなで船に乗って海を回り、その次の日はみんなで買い物し、その次の日はカシエルさんが騎士団に頼みグリフォンを使った空の旅を楽しんだ。
 そして、あっという間に最終日……今日は外出せず、別荘で海をのんびり眺めていた。

「はぁ~……あっという間だったな」
「だね~……」

 ソファで海を眺める俺とシェリー。
 ミュディはクララベルとお菓子を作り、ローレライはテラスで読書、エルミナは水着で浜辺に寝そべっているのが見えた。
 
「お兄ちゃん、また来れるかな?」
「もちろん。だってここ、俺たちの別荘だぞ? 転移魔法があればいつでも来れる」
「転移魔法かぁ……お兄ちゃん、覚える?」
「いや、転移魔法は伝説の魔法……でもないな」
「悪魔とか天使はポンポン使ってるもんね……しかも杖ナシで」
「だな……魔法に関しての技術じゃ勝ち目無いぞ」
「でも、お兄ちゃんなら使えるんじゃない? ほら、本」
「あ」

 俺は『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』を開く。
 すると、そこにちゃんと書かれていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《転移魔法》

〇行きたい場所にマーキングしておけば、いつでも好きな時に好きな場所へ行けますよ。
 マーキングの触媒は自らの遺伝子……ああ、血がいいですね。
 魔法式を地面や壁に描き、血でマーキング。あとは詠唱一つで好きな場所へ飛べます。
 便利ですが魔力をけっこう消費するので、使用には十分な注意を。
 それでは、よき転移を……賢龍ジーニアスより。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 と、シエラ様ではなく『賢龍ジーニアス』様だった。
 そういえば、この本に神話七龍の皆さんが力を注いでくれたっけ。
 せっかくだし、試してみるか。

「お兄ちゃん?」
「ちょっとやってみるか。えーっと、魔法式を刻む……大きさは適当か。じゃあこの別荘の壁でいいかな」

 杖を取り出し、魔力を込める。
 部屋の壁に杖で魔法式を刻んでいく。実際に傷付けるのではなく、魔力で文字を書いているので問題ない。
 最後に指を軽く噛み血を一滴だけ魔法式に押し付けると、魔法式が淡く発光して消えた。

「うし。あとは緑龍の村で同じ魔法式を描けば転移できる」
「……あたしには白紙の本にしか見えないし、ページもめくれないけど、ほんとすごい本ね」
「そうだな。さすがシエラ様ってところだ」
「アシュト、シェリーちゃん、お茶にしよー」
「はいよ。よし、エルミナとローレライを呼んでくる」

 こうして、のんびりゆったり穏やかに最終日を過ごす。
 全員で風呂に入り、大きなベッドで星を眺めながら眠った。
 新婚旅行……本当に楽しくいい思い出になったよ。
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