大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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オーベルシュタイン、二度目の冬

第403話、冬前の帰省

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 エルミナがハイエルフの里、ローレライとクララベルはドラゴンロード王国へ帰省した。
 俺とミュディとシェリーもビッグバロッグ王国に帰る準備を終え、翌日出発の夜……ダイニングは三人だけなので、けっこうな寂しさだった。
 シェリーはワインを飲みながらため息を吐く。

「騒がしいエルミナやクララベルがいないと、寂しいね」
「確かにな。冬前の帰省だからしょうがない……」
「ふふ。アシュトもさみしいんだ」
「そりゃな。ずーっと一緒だったし」

 ミュディは紅茶を啜る。

「明日帰省だよね? 二人とも準備はできた?」
「もちろん。なぁシェリー」
「うん。リュウ兄に渡すお土産も準備したし!」
「シルメリアさん、ミュアちゃんたちの支度は?」
「はい。準備は終わり今日はもう寝ています」

 ミュアちゃん、ルミナ、ウッドも一緒に帰省する。
 たぶん、シルメリアさんに言われて準備したんだろうな。
 俺はリョク茶を飲みほし、立ち上がる。

「よし。風呂入って寝るか」
「うん。じゃあ浴場行こ」
「そうだね。ねぇミュディ、背中流してあげる!」
「ありがとう。じゃあわたしはシェリーちゃんの背中流すね」

 相変わらず仲がいいね。
 明日出発だし、風呂入ってさっさと寝よう。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。

「にゃあ」
「みゃうー」
『オハヨーオハヨー!』
「よし。みんなおはよう」

 家の前に、子供たちとウッドが並んでいた。
 ミュアちゃんとルミナはニコニコアザラシのリュックを背負い、ウッドはいつも通り手ぶらのスタイルだ。
 着替え等の荷物は竜騎士たちに運んでもらったので、ミュディとシェリーも小さなカバンだけだ。
 ちなみに俺も手ぶら……本と杖は服の内ポケット、財布は尻ポケットの中だ。

「……お兄ちゃんとウッド、手ぶらだね」
「ウッドはともかく俺は荷物あるし。財布だろ? 杖だろ? 『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』……うん、カバンは必要なし」
「はいはい。じゃ、村の入口に行くわよ。竜騎士たちが待ってるわ」
「にゃあ! ご主人さま、いこっ!」
「みゃあ。いくぞ」
『イクゾー!』

 ミュアちゃんが俺と手を繋ぎ、反対側はルミナ、俺の前をウッドが歩く。

「ふふ。アシュトってば人気だね」

 ミュディがくすっと笑う。
 村の入口には、竜騎士部隊が待っていた。ちなみに、ランスローとゴーヴァンではない……ローレライとクララベルが帰省するのに、専属騎士が付いて行かないなんてあり得ないからな。
 ここにいるのは、ランスローとゴーヴァンが人選した俺たちを送迎する部隊だ。
 俺たちを前に、全員が騎士の敬礼をする。
 ミュディはお辞儀し、シェリーは同じような敬礼で返し……俺は驚いて慌てて頭を下げた。

「おはようございます! 自分は『雪龍騎士団』所属、サフィールと申します。アシュト様ご一行をビッグバロッグ王国までお送りさせていただきます」
「よろしくお願いします」
「お兄ちゃん、あたしはアヴァロンに乗っていくから」
「ああ。気を付けろよ」

 シェリーは自分のドラゴンに乗っていくようだ。
 さて、いざ出発……となったのだが、ちょっと揉めた。

「にゃあ! わたしがご主人さまと乗るの!」
「あたいが乗る。お前はあっちだ」
「にゃうーっ! ルミナがあっち!」
「なんだと!? ふしゃーっ!!」
「しゃあーっ!!」
「ああもう、喧嘩はダメだって」

 二人の頭を撫でた。
 ドラゴンは三人乗り。シェリーのアヴァロンにはミュディが乗ることになっている。
 
「…………よし、きめた」
「にゃうぅ」
「みゃう」

 俺は二人の頭を撫でながら、解決策を提示……というか、決定事項を伝えた。

 ◇◇◇◇◇◇

 通算三度目の空の旅だ。
 俺はサフィールさんの騎乗するドラゴンに乗り、空の人となっている。
 人を乗せるための箱のような物に乗っているが、やはり怖い。

『アシュト、コワイー?』
「ちょ、ちょっとね……クララベルの背中で鍛えられたはずだけど」
『ボク、アシュトヲマモル! フンババトベヨーテニタノマレタ!』
「そっか。ありがとな」
『エヘヘ』

 俺の同乗者はウッドだ。
 すぐ近くを飛ぶ別なドラゴンには、ミュアちゃんとルミナが乗っている。

「にゃうーっ! すごーいっ!」
「みゃあ……きもちいい」
「ルミナルミナ、たかいたかい!」
「しってる。というか耳元で騒ぐな」

 ミュアちゃんの声が大きいのか、黒いネコミミをパタンと畳むルミナ。
 なんだかんだで一緒に乗って仲良くしていた。
 一番悲惨なのはミュディだった……。

「ミュディ、大丈夫?」
「だだだ、大丈夫っ……じゃないかも」
「ごめんね。アヴァロン、箱を付けるの嫌がっちゃって」

 そう。シェリーのドラゴンであるアヴァロンは、俺やミュアちゃんたちが乗り込むような『箱』を、身体に括り付けることを嫌がったのだ。なので、直に跨って乗っている。
 シェリーは普通に乗っているが、ミュディはシェリーにがっちり抱きついて離れない。

「…………あのさ、ミュディ」
「ななな、なにっ!?」
「あんた、また胸大きくなったわね……あたしはさっぱりなのに」
「そそ、そんなことより……まだ着かないの!?」
「まだまだよ。ぐぬぬ、この巨乳め……エルミナといいローレライといい、あたしの味方はクララベルだけなのかしら……!!」
「しぇ、シェリーちゃん落ち着いてよぉっ!!」
『ギャァァァース!!』

 どうやら、胸囲の格差社会に震えているようだ。
 アヴァロンもシェリーに共感してるのか、ミュディを乗せたままきりもみ回転してる。

 ビッグバロッグ王国まで数日。耐えてくれよミュディ。
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