大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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オーベルシュタイン、二度目の冬

第418話、緑龍の村・雪合戦大会と鍋会!(前編)

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 ドラゴンチェス大会から数日後。
 毎日しんしんと雪が降り、たまに吹雪き、除雪作業が仕事となりつつあるドワーフや竜騎士たちに労いの酒を振舞ったりと、冬の時間は過ぎていく。
 俺とエルミナは家の前に作ったかまくらの中で、のんびりお茶と団子を食べていた。

「ねーねー、そろそろ次のイベントでしょ?」
「ああ。今、ディアーナたちが雪合戦大会の参加者たちをまとめてる」
「ふふん。楽しみね!」

 雪合戦大会。
 五人チームで登録し、村の近くにある森の中を舞台にして戦う。
 村の中だと少し狭い。そのため、雪合戦のためだけに、除雪部隊を増員して会場設営と村の除雪に分けて作業をさせている最中だ。
 俺はリョク茶を啜り息を吐く……外は吹雪いているが、かまくらの中は暖かい。
 
「ん……んん?」
「どうした?」
「なんか変な感触が……あれ?」

 エルミナがこたつでモゾモゾしていた。
 何をしているのかと見ていると、なんとエルミナの方に可愛らしいネコミミが出てきた。というかミュアちゃんがこたつの中から出てきた。

「うにゃ……」
「ミュア、あんた……って、前もこんなことあったわね」
「にゃう。この中あったかいの。お昼寝はこの中でするの」
「ほら、おいで」
「にゃうー」

 エルミナはミュアちゃんを抱っこした。
 すると、俺の方もモゾモゾと何かが動いた……まさか。

「みゃう……」
「ルミナ、お前もか……やれやれ」

 こたつの中からルミナが現れ、俺に抱き着いて甘えてきた。
 頭とネコミミを撫で、エルミナと笑いあう。

「子供は自由ねぇ」
「そうだな。ま、いいんじゃないか?」
「そうね。それより、雪合戦の日取りはいつ頃になる?」
「たぶん、数日中には。その時は伝えるよ」
「頼むわよ! さーて、雪が止んだらメージュたち誘って特訓しないと!」
「張り切ってるなぁ……この寒いのに」
「あんたはもうちょっと身体動かしなさいよ。食っちゃ寝してると太るわよ」
「はいはい。ありがとよ」

 ちなみに、雪合戦大会での俺の役目は審判である……参加はできないけど、エルミナの言う通り少しは運動しないとな。太るのは嫌だ!

 ◇◇◇◇◇◇

 数日後。
 雪合戦当日。今日は晴れで雪が降っていない、絶好の雪合戦日和だった。
 村の広場には、雪合戦参加者がチーム毎に集まって並んでいる。その中にはシェリーと父上、エルミナ、ローレライとクララベルがいた。
 俺は審判で、隣にはミュディ、そしてネコミミニット帽子と防寒着を纏ったミュアちゃんだ。ルミナは雪合戦に興味がないのか家の前のコタツの中で、マンドレイクとアルラウネ、ウッドらと寝ている。
 そして、開会式が始まった。
 
「にゃあ。いっぱいー!」
「すごいね……みんな参加者なんだ」
「ああ。全50チーム参加だよ。ひとチーム五人だから250人か……すごいな」
 
 ちなみに、審判はディアーナとその部下。
 俺は審判長という立場で、大会本部であるかまくらの中でのんびり過ごす。ミュディとミュアちゃんは俺が誘ったのだ……話し相手が欲しかったからね。
 まず、村の広場で開会式。俺は軽く挨拶し、ディアーナにルール説明をお願いする。
 まずは、クラスごとに予選を行う。
 雪合戦にあまり興味のないミュディは首を傾げた。
 
「クラス?」
「うん。知っての通り、参加者は多種多様な種族で構成されてる。ハイエルフやエルダードワーフ、デーモンオーガにサラマンダー、悪魔族に天使族、半龍人。デーモンオーガの雪玉なんて喰らったら骨折じゃ済まない。だから、サラマンダーやデーモンオーガ、エルダードワーフはAクラス。それ以外の種族はBクラスで予選を行うんだ」
「なるほど……」
「にゃあ。ご主人さま、わたしも遊びたいー」
「あはは。じゃあミュアちゃん、ライラちゃんやフンババたちと遊んでおいで。村の入口にいるフンババが退屈してるだろうからさ」
「にゃう! みんな誘って遊んでくる!」

 ミュアちゃんは走り出し、防寒服を着たハイピクシーやライラちゃんを誘ってフンババの元へ行った。たぶんジッとしてられないから遊ぶだろうと思ってたけどその通りだった。
 というわけで、俺とミュディは二人きり。
 ディアーナによるルール説明が終わると同時に、雄たけびが上がった。

「わわわっ! みんな張り切ってるねぇ……あ、エルミナたちもいる」
「優勝賞品がな……」

 ちなみに、優勝賞品は木箱いっぱいの高級酒。
 ビッグバロッグ王国、ドラゴンロード王国から取り寄せた高級酒にベルゼブブとヘイブンから取り寄せた超高級酒。そして清酒にセントウ酒などが大量にある。これは酒好きの住人たちやエルミナが燃える。
 俺とミュディはこたつに入り、籠に入っていたミカンを剥いた。

「ねぇアシュト。雪合戦って怪我しないのかな?」
「んー、打ち所が悪ければ怪我するかもだけど、そんなに心配しなくても大丈夫かな。いざという時のために救急道具は持ってきてあるし、俺が参加しないのも怪我人が出た時のために待機するためでもある」

 ま、運動音痴の俺が出ても負けるだけだし、正直なところ飛んでくる雪玉は怖い。
 
「それに、ルールもあるから大丈夫だよ」

 雪合戦のルールは簡単だ。
 フィールドは村近くの森の中で、それぞれの陣地の最奥に旗を立てておく。
 敗北条件はチームの全滅か、自陣の旗を取られたら負け。
 雪玉を一発でも喰らったらアウト。速やかに両手を上げてバトルフィールドから出る。
 森の地形を利用してこっそり進んで旗を狙うか、相手を雪玉で全滅させるか……そこはチームで戦略を考えて挑まなければならない。
 ここまで説明すると、ミュディは頷いた。

「なるほど。単純そうで奥が深いね」

 俺はミカンを食べ、リョク茶を啜る……渋くてうまい。

「ちなみに魔法は禁止。純粋な体力と腕力勝負だ」
「そうなんだ……雪もけっこう深いし、汗いっぱい掻きそうだね」
「うん。だからこそ、試合終了後の鍋会が盛り上がるんだよなぁ」

 そう。雪合戦大会終了後は宴会場で鍋会だ。今頃、銀猫たちが準備している。
 酒は大量に準備し、鍋はもちろんおつまみもだ。今夜はたぶん寝れないだろうな。
 
「住人の大半は夜の鍋会……いや、宴会を楽しみにしてるかも」
「あ、あはは……あ、見てアシュト、アリューシア様だよ」
「お、ほんとだ。母上!」

 母上が分厚いコートを着て歩いていたので呼ぶと、俺たちのところへ来た。
 
「母上。寒いのでどうぞ中へ」
「ありがとう。じゃあ失礼して」
「アリューシア様、いまお茶を淹れますね」
「ありがとう、ミュディ」

 母上のコートを預かり、コタツへ案内した。
 リョク茶を啜ると、母上はほっこりする。

「ふぅ……このお茶、渋くて美味しいわ」
「リョク茶です。俺も好きなんですよ……と、母上。もしかして父上の応援ですか?」
「それもあるけど、天気もいいしお散歩してたのよ。ふふ、ちょうどよくお茶が飲めたわ」
「あはは。アリューシア様、ゆっくりなさってください」

 この時、雪合戦がとんでもなく荒れているということに、俺は全く気付かなかった。
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