大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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グランドファーザー&マザー

第475話、グランド&ハリケーン

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 作戦前夜。
 ヒュンケルの報告を聞き、リュドガは悩む。
 肉食トカゲの数は千以上。そして、前線で戦う騎士の数は三百ほどだ。一人三匹……そう考えれば楽なのだが、そういうわけにもいかない。
 リュドガは、ヒュンケルとルナマリアに聞く。

「……どうする?」
「やるしかねーだろ。部隊を増員する暇はないし、岩場のエサは殆ど喰いつくされた感じだ。恐らく、早くて数日で肉食トカゲは移動を始める……叩くなら今しかない」
「私も同意見だ。危険が伴うが……ここでやらなければ、近隣の町や村の農作物、いや……住人や家畜を襲うだろう。やるしかないぞ」
「…………」

 リュドガは考え込む。
 そして、この会議に参加している部隊長たちを順番に見て、最後に第一部隊隊長のラティウスに聞いた。

「ラティウス。聞いての通りだ……最前線に立つお前にはかなりの負担が強いられる。それでも、やってくれるか……?」
「当然です。リュドガ将軍、私に引くという言葉はありません」
「……わかった」
 
 リュドガは大きく深呼吸し、部下たちに伝える。

「作戦はこのまま決行する。明日、討伐部隊による肉食トカゲ殲滅作戦を行う!!」

 餌を撒き、肉食トカゲを誘き寄せ、弓矢で数を減らし、地上部隊による殲滅戦だ。
 町や村を脅かす魔獣の脅威は、ここで取り除く。
 リュドガは部下たちを信頼し、作戦を任せることにした。

 決行は明日……魔獣の討伐が始まる。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 討伐隊は、肉食トカゲが潜んでいる森から少し離れた広い岩場に集まった。
 岩の上には弓部隊が待機し、ヒュンケルが指揮する斥候部隊が餌を撒きに出ている。
 リュドガは最後方で、部隊長たちも指定の位置に移動した。
 ルナマリアは、リュドガに言う。

「そろそろだ……私も指定位置に行く。リュドガ、全体指揮は任せたぞ」
「ああ。気を付けろよ」
「ふ、もちろんだ」

 そして、位置について十分後……ヒュンケルと斥候部隊が戻ってきた。

「来るぞ!! 大群だ!!」

 騎士たちは剣を構え、岩場の弓部隊が矢を番える。
 そして───見えた。

「射て───ッ!!」

 ルナマリアの号令で、弓部隊が一斉に矢を放つ。
 矢は弧を描き飛び───森から現れたトカゲの大群に次々と突き刺さった。
 
「チッ……やはりとんでもない数だ!! ラティウス、弓の第二射が放たれたら戦闘に入れ!!」
「はっ!! 全員、武器を持て!!」

 リュドガの指示で、第一部隊が剣を抜く。
 肉食トカゲ。単体の強さは大したことがないが、数が非常に多い。
 森の中から、わらわらと蟻のように飛び出してきた。矢の第二射が放たれ肉食トカゲに突き刺さるが、森の奥から現れるトカゲに終わりはない。
 そして、ラティウスは剣を掲げた。

「突撃ぃぃぃぃぃっ!!」

 第一部隊が戦闘に入った。
 リュドガ直伝の魔法剣がトカゲたちに炸裂する。剣に魔法を付与する魔法剣はリュドガが編みだした技術だ。その技術により、ビッグバロッグ王国騎士は飛躍的に強くなった。
 ヒュンケルは、斥候部隊を下がらせ、リュドガの元へ。

「オレもルナマリアのサポートに入る。全体指揮は任せたぜ」
「任せろ。ヒュンケル……ルナマリアを頼むぞ」
「奢り、十回な!!」

 そう言って、ヒュンケルは風を纏って消えた。
 愛用の剣……ではなく、剣より得意な槍を構えルナマリアの隣へ。
 想像以上に肉食トカゲが多く、ルナマリアの部隊も戦闘が始まっていた。

「水よ……荒れ狂え!!」
 
 ルナマリアが魔力で水を作りだし、鞭のようにしならせて肉食トカゲを討つ。
 ルナマリアの部隊は女性騎士が多く、その戦う姿はまさに戦乙女だった。

「風よ!!」
「ヒュンケル……助かる!!」
「気にすんな。それよりどうだ?」
「数が多い……だが、我が部下たちは負けや市ない!!」
「同感だ!!」

 二人は、水と風の魔法で暴れる。
 部下や部隊長たちも肉食トカゲ相手に戦い、少しずつ数を減らしていった。
 だが、数の暴力は少しずつ、少しずつ……騎士たちの魔力と体力を削って行く。

「ルナマリア副大隊長、第一部隊が押されています!!」
「第二部隊、怪我人多数!!」
「第三部隊もです!!」
「チッ……まずいな。五百以上は始末したが……まだまだいる」
「オレが出る」

 そして、雷が落ちた。
 エストレイヤ家の宝剣ビスマルクを片手に、黄金の鎧を纏ったリュドガが参戦した。
 雷は、無数に存在する肉食トカゲたちの頭上に正確に落ちていく。

「おお……」「リュドガ将軍だ……!!」「すごい……」
「勝てるぞ!!」「よし、行くぞ!!」「将軍に続け!!」

 部下の騎士たちも、リュドガの登場に気合が入った。
 魔力も体力も少なかったが、気合でそれをカバーする。

「みんな、オレがサポートするから思いっきり暴れてくれ!!」

 宝剣ビスマルクから雷が放出され、騎士たちの剣が雷を帯びた。

「ははは……相変わらずとんでもねぇ魔法制御だぜ……」
「これだけの数の騎士剣に魔法を帯びさせるなんてな……」

 ヒュンケルとルナマリアも驚くしかない。
 魔法付与は、一長一短で使える技術じゃない。己の魔法特性を完全に制御しないと使えない。
 それを、百人規模の騎士たちに同時に行使するとは。

「だけど、いくらリュドガでも魔力が持たねぇぞ……!!」
「恐らく、騎士たちの手柄にするんだろうな。ふふ、リュドガめ……」
「チッ……あいつの魔力が尽きる前に終わらせるぞ!!」
「ああ!!」

 戦いは、最終局面に入った。

 ◇◇◇◇◇◇

 一方そのころ。

「む……くんくん、おいお前、戦いの匂いじゃ」
「動物じゃないんだから、やめなさい」
「くくく、行くか!!」
「そうね……それと、不思議な感じがするの」
「あん?」
「なんだか、懐かしい気がしない?」

 ◇◇◇◇◇◇

「はぁ、はぁ、はぁ……さすがに、これだけの魔法付与は……キツイな」

 リュドガは、百人以上の騎士たちの剣に、魔法付与行っていた。
 さすがのリュドガも、魔力が少なくなり疲労の色が濃い。
 ルナマリアとヒュンケルも気付き、リュドガの補佐に回っていた。

「でも、ようやく終わりが見えてきたぜ」
「ああ。あと二百、三百……もう少しだ」
「そうだな……」

 怪我人こそ出たが、死者はいない。
 そして、森の奥から現れるトカゲが出なくなった頃───それは現れた。

「───な、なんだ?」

 ズシン、ズシン、ズシン……と、地鳴りがした。
 森の奥から、べきべきと枝が折れるような音がした。

「……噓、だろ」
「まさか……まだ、何かいるのか」

 騎士たちも、ヒュンケルも、ルナマリアも……リュドガも予想していなかった。
 藪を掻き分け現れたのは、肉食トカゲを巨大化させたようなオオトカゲ。そして、そのオオトカゲに付き従う肉食トカゲの群れだった。
 
「馬鹿な。あんなデカブツ、いなかったぞ!?」
「……地中だ。恐らく、冬眠から目覚めたばかりなんだろう」
「噓だろ……」

 ヒュンケルは、己のミスに頭を抱えそうになる。
 非常にマズイ状況だった。
 全員、体力と魔力が尽きかけている。その状況でこのオオトカゲだ。
 リュドガは、覚悟を決め指示を出す。

「全軍撤退。殿はオレが務める」
「はぁ!? おま、あのバケモノと心中するつもりじゃ」
「ヒュンケルは後の指揮を、ルナマリアは補佐を頼む」
「リュドガ、それは」
「命令だ。急げ!!」

 リュドガの一括に、ヒュンケルは歯ぎしりをして従う。
 ルナマリアは震えた。今まで感じたことのないリュドガの気配に。

「皆、急げ「がーっはっはっはっはぁぁぁぁぁぁっ!!」……え」

 次の瞬間、空から誰かが笑いながら落ちてきた。
 着地と同時に地面に亀裂が入る。

「でっかいトカゲじゃのぉ!! がははははっ!!」
「え……だ、誰」
「若いの!! いい覚悟だ。久しぶりにいいモン見れたわい……ん? その剣」
 
 老人だった。
 だが、筋肉が恐ろしいほど盛り上がっていた。
 身長は二メートルほど。髪は短く真っ白で逆立ち、口の周りも真っ白な鬚が生えている。
 手には黄金の籠手を嵌めているが、ボロボロだった。
 老人は、筋肉をボコボコっと盛り上がらせる。

「まぁいい。さぁトカゲぇ!! 暴れようじゃないかぁぁぁぁっ!!」
『ジャァァァァァァッ!!』
 
 肉食トカゲの群れが老人に襲い掛かる。
 だが、老人の周りに現れた四つの竜巻が、肉食トカゲを吹き飛ばした。

「全く。一人で突っ走んなさんな」
「悪い悪い」
「雑魚は任せなさい。あんた」
「おう!!」

 気品のある老女が、手に持った杖から竜巻を生み出した。
 ヒュンケルは気付いた。

「まさか、あなたは───」
「久しいね、坊。いい男になったじゃないか」

 老女はにっこり笑う。
 そして、老人がジャンプし、拳を構えた。

「必殺ぅ!! 『大地爆砕』!!」

 大地に拳を突き刺すと、オオトカゲの真下が爆発した。
 オオトカゲが真上に吹っ飛び、老人は再び拳を構えた。

「超必殺……『爆裂拳』!!」

 老人は飛び上がり、落ちてくるオオトカゲに向かって拳を突き刺した。
 オオトカゲは爆散し、肉片が散らばる。
 老人は勝利のポーズを取り、リュドガの元へ。

「その剣、ビスマルクか。お前さん、エストレイヤ家の……んん? アイゼン……ああ思い出した!! お前さん、アイゼンの息子リュドガじゃな!?」
「え、ええ。あ!! もしかして……お、お爺様ですか!?」
「おおよ。がっはっは!! このギルガメッシュを覚えていたか。いやぁリュドガ、大きくなった!! 最後に会ったのはお前が十歳くらいの頃かの?」
「はい……まさか、お爺様とこんなところで会えるなんて……」

 老女の方も、ヒュンケルとルナマリアに話しかけていた。

「坊、久しいね。そっちはルナマリアか……ふふ、素敵なレディになったようね」
「お師匠様。お久しぶりです……」
「お師匠なんてやめな。お前の指導をしたのは一年くらいさ。師匠なんて呼ばれるほど鍛えちゃいないよ」
「セレスティーヌ様……このような場所で会えるとは。私……」
「ふふ。ルナマリア……いい顔をしている。女……いや、母親の顔だ。リュドガと結ばれたのかい?」
「はい。息子と娘がいます」
「なんと! これは会わないとねぇ」

 リュドガたちを救ったのは、意外も意外。
 エストレイヤ家の祖父ギルガメッシュと、祖母セレスティーヌだった。
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